国立民族学博物館(みんぱく)の本館展示は、オセアニアから出発して東回りに世界を一周し、最後に日本の文化にたどり着く順路です。この展示は、創設のときから「世界の民族文化に優劣はなく、すべて等しい価値をもつという認識にもとづいて」つくられてきました。並ぶのは衣食住の生活用品が中心で、日本も世界の一つの地域として、ほかの文化との関わりの中に置かれています。
館長の関雄二さんは、館長あいさつで分断の目立つ今の世界に触れ、「人類全体、地球全体を視野におきつつ、個別の文化と社会の存在を認めていく態度」が求められていると書いています。この秋に開かれている2つの展示は、その考えを、資料を作った人たちとの関わりとして見せるものです。
生活の道具で世界を一周する
地域ごとの展示のほかに、音楽と言語の展示があります。展示場ごとの主な展示品は、次の記事で写真と一緒に紹介しています。
- オセアニア(石貨、仮面タタヌア、企画展「トレス海峡と日本」)
- アメリカ(アステカの暦石、パチャママの祭壇、イヌイットの版画)
- ヨーロッパ(カーニバルの仮装、足踏みミシン、移民の文化)
- アフリカ(アビジャンのカフェテラスの再現、ニャウの仮面)
- 南アジア(チェンナイの山車、路上のカート、絣のサリー)
- 音楽(太鼓、ゴング、チャルメラ、ギター)
- アイヌの文化(家屋の再現、特別展「沙流川に生きる」)
- 日本の文化(神輿、太鼓台、メンドンの面、沖縄のくらし)
展示場のある2階は、管理部門を含めて16,830平方メートルあります。要覧2026によると、館が持つ標本資料は未登録のものを含めて347,706点です。見て回るための道具は無料で、映像と音声で解説する「みんぱく電子ガイド」は本館2階の観覧券売場で借りられますし、音声ガイドは自分のスマートフォンでも使えます。決まったコースを自動で走る乗り物(WHILL 自動運転サービス)も無料で、のりばは同じ観覧券売場の前です。
ビデオテークでは、世界各地の暮らしや儀礼、芸能を映像で見られます。15分ほどの番組が約640本あり、このほか研究資料として編集した長めの番組と、写真や文字を組み合わせた番組があります。全体のうち約490本は、みんぱくの研究者が現地調査をもとに撮った映像です。ブースは23で、予約はできません。動物の屠殺など刺激の強い場面を含む番組がある、と館は断っています。
本館展示は、個人で使う範囲なら写真とビデオを撮れます。三脚、一脚、自撮り棒、照明スタンドは使えず、特別展と企画展は展覧会ごとに決まります。展示場ではアメやガムも含めて飲食ができません。
資料を作った人たちと見直す展示
館長あいさつには、館が集めてきた標本や映像を、資料を提供した人や集団と共有して意味を問い直す「フォーラム型人類文化アーカイブズの構築」という計画にも触れ、「文化を語るのは、もはや研究者だけでない」とあります。
9月10日に始まった企画展「トレス海峡(ゼナドスケス)と日本」は、1970年代に日本の調査隊が撮った写真が中心です。トレス海峡はオーストラリア最北部の海峡で、明治時代に日本人が移り住み、真珠貝を求めて海を渡った人もいました。これらの写真は、今では現地の先住民にとっても自分たちの過去を知る資料になっています。
9月25日からの特別展「沙流川に生きる」は、北海道の沙流川の流域で集められたアイヌの工芸品のうち、作り手と使い手が分かるものを、写真や文書、子孫の言葉と一緒に並べます。10月17日のみんぱくゼミナールで話す一人が、助教のマーク・ウィンチェスターさんです。館のメールマガジンのコラムでは、北海道美唄市の菱沼をときどき訪れること、美唄出身の詩人・佐々木昌雄の思想について本を書いていることを記しています。
| 展示 | 会期 | 一般・大学生 |
|---|---|---|
| 企画展「トレス海峡(ゼナドスケス)と日本」 | 2026年9月10日〜12月15日 | 780円・340円 |
| 特別展・令和8年度アイヌ工芸品展「沙流川に生きる」 | 2026年9月25日〜12月15日 | 1,200円・600円(本館展示も見られる) |
| みんぱく開館50周年記念特別展「触覚を取り戻せ!-深化し続けるユニバーサル・ミュージアム」 | 2027年3月18日〜6月15日 | 1,200円・600円(本館展示も見られる) |
高校生以下はどれも無料です。「関西文化の日」の11月14日(土)と15日(日)は本館展示と企画展が無料になり、特別展は有料のままです。
1970年の万博で集めた品
みんぱくの創設は1974年6月、開館は1977年11月で、開館の地は「大阪・千里の70年万博跡地」です。要覧2026によると、万博に先立ってEEM(日本万国博覧会世界民族資料調査収集団)が世界各国で集めた資料は、太陽の塔の内部で「地底の太陽」とともに展示され、その後みんぱくに収蔵されました。
その「地底の太陽」は、太陽の塔のオフィシャルサイトによると、閉幕後の撤去作業から行方が分かっていません。一緒に並んだ資料のほうは、同じ公園の中に残りました。館の創設50周年記念特別展「民具のミカタ博覧会」に合わせて武蔵野美術大学で開かれた展示にも、EEMが集めたマコンデの人々による彫像が出ています。
太陽の塔とEXPO’70パビリオンの回り方は太陽の塔の記事に書きました。開館50周年の特別展が始まる2027年3月18日は、GREEN×EXPO 2027(横浜花博)の開幕の前日です。花博の会場が閉幕後どうなるかは、閉幕後の会場の記事にあります。
観覧券の買い方
開館は10:00〜17:00(入館は16:30まで)です。休館日は毎週水曜(祝日なら直後の平日)と12月28日〜1月4日。万博記念公園は4月1日〜5月2日と10・11月は水曜も開いていますが、みんぱくの休館日の案内にこの例外はありません。吹田市に暴風警報などが出たときや、大阪モノレール、阪急京都線・千里線、近鉄バスが運休したときは、臨時休館になることがあります。
本館展示の観覧料は一般780円、大学生340円、高校生以下無料です。満65歳以上の人は660円、3か月以内の観覧券を出すリピーターは一般660円・大学生270円になり、太陽の塔の入館券を本館の観覧券売場で見せても同じ割引が受けられます。
みんぱくへの道は、有料区域の自然文化園の中を通ります。一般と大学生は、公園の各ゲートでみんぱくの観覧券を買えば入園料なしで通れます。高校生以下は、ゲートの有人窓口でみんぱくへ行くと申し出て、通行証を受け取ります。園内で散策や休憩をするなら公園の入園料(高校生以上450円)が要ります。観覧券は帰るまで手元に置いてください。

本館展示の電子チケットは、JTBレジャーチケットとアソビューで売っています。価格は窓口と同じで、有効期限は購入日から30日間。キャンセルと変更はできず、当日はゲートの有人窓口で画面を見せます。
子ども連れには、無料で借りられるベビーカーと、1階インフォメーション横のベビールーム(授乳室)があります。車椅子も無料で借りられます。レストラン「森の洋食 グリルみんぱく」は11:00〜16:30(ラストオーダー16:00)です。
万博記念公園駅からの行き方
東海道新幹線なら新大阪駅から大阪メトロ御堂筋線で千里中央駅へ行き、大阪モノレールに乗り換えて万博記念公園駅で降ります。大阪空港からは大阪モノレールで万博記念公園駅へ。梅田からは、阪急宝塚線の蛍池駅でモノレールに乗り換えます。
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万博記念公園駅からは徒歩約15分です。改札を出て左へ進んでスロープを降り、インフォメーションセンターを過ぎて左に曲がり、陸橋を渡ると自然文化園の中央口ゲートです。ここで観覧券を買い、左側の道を進んで突き当たりを右へ。約500メートル直進すると、左手にみんぱくが見えます。

公園東口駅と日本庭園前バス停からは、日本庭園前ゲートを通って徒歩約15分で、ゲートからみんぱくまでは約100メートルです。バスは阪急京都線の茨木市駅とJR京都線の茨木駅から、近鉄バスの日本庭園・阪大病院方面ゆきに乗ります。車椅子やベビーカーの人には、出入り口がスロープになっている太陽門を使うよう館は勧めています。専用の駐車場はなく、いちばん近いのは公園の日本庭園前駐車場で、そこから徒歩約5分です。
編集部の考え
この館を取り上げたのは、1970年の万博のために集めた品物が、跡地で半世紀のあいだ調べられ、見せ方を変えながら今も展示に出てくるからです。展示はどの文化も同じ重さで並べる考えでつくられ、この秋はトレス海峡の写真が現地の人の過去を知る手がかりになり、沙流川の工芸品には子孫の言葉が添えられています。