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trip-jp博覧会からミュージアム、寺社仏閣まで 横浜花博 2027 開幕まで 163日

みんぱくの南アジア展示:神々の像から路上の商いまで

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国立民族学博物館の南アジア展示、インド・ラージャスターン州の牛車に積まれた家財道具一式
牛車に積まれた寝具や台所用品など、インド・ラージャスターン州の家財道具一式(2014年撮影) 写真: Yanajin33(CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)

インド北東部のナガランド州で、みんぱく(国立民族学博物館)准教授の岡田恵美さんは、口琴を弾ける人を探していました。ナガの人びとの意匠文化を調べるための滞在で、2026年2月に館のサイトに載ったコラムによると、見つかった演奏者はヴィスウェマ村に暮らす76歳の女性ノクレさん一人だけでした。ノクレさんは祖母から譲られた口琴で「森での狩猟」や「米搗き」の情景を弾き、「今はもう、口琴の作り手も、一緒に演奏する人もいなくなった」と話したそうです。

同じコラムで岡田さんは、館の収蔵庫の口琴に手袋越しに触れても、音は出せないと書いています。「博物館に収蔵された時点で、楽器は演奏のための生命を終え、言わば「死蔵」となる」。そのうえで、みんぱくが続く限り、収蔵品は集めた当時の形と作り方を伝える資料であり続ける、と続けます。南アジア展示に並ぶ山車も人形も、もとはだれかが祭りで引き、飾っていたものです。館への行き方と観覧料はみんぱくの記事にあります。遠くから来るなら、宿は楽天トラベルの万博記念公園駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。

地理から書き起こす南アジアの展示

館は南アジア展示の案内を、地理から書き起こしています。北の山岳地帯から、西はアラビア海、東はベンガル湾の沿岸まで、自然環境の違う土地で、宗教も暮らし方も違う人びとが「共存しあう知恵を育んできました」。そして「経済発展が著しい現代においても、その知恵は保たれています」と続けます。

展示は1996年11月、第7展示棟とともに公開されました。要覧2026によると、面積は600平方メートルです。区分は「躍動する南アジア」「宗教文化-伝統と多様性」「生態となりわい」「都市の大衆文化」「染織の伝統と現代」の5つで、神々の乗り物と路上の商いが同じ部屋にあります。

寺院の外へ出てくる神々

大きな山車は、タミル・ナードゥ州チェンナイのパールッタサーラティ寺院のものです。4月から5月の大祭のとき、主神を乗せて寺院の周りを巡行し、沿道の信者は山車に乗った祭司を介して神に供えものをささげます。1991年収集です。

南インド・チェンナイの寺院祭礼で使う山車インド・ビハール州の藁細工によるガネーシャ神像
南インド・チェンナイの寺院祭礼で使う山車(2013年撮影)と、藁を編んで作られたガネーシャ神像、インド・ビハール州(2014年撮影)写真: 左 Yanajin33(CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)、右 Yanajin33(CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)

山車で巡る神は、ほかの地域にもいます。オディシャー州プリーのジャガンナート寺院に祀られるジャガンナート神、スバドラー神、バララーマ神の三神像は、部族神信仰に起源をもつと推測され、いまはクリシュナ神と同一視されています。雨季には三神を巨大な山車に乗せて巡行します。展示の像は1990年製作です。

祭りの飾りもあります。9月から10月のヒンドゥー教の祭礼ナヴァラートリのころ、南インドではひな壇に神像や結婚式の参加者、楽士、動物、聖人までを並べます。展示の人形飾りはチェンナイで1990年に集められました。同じタミル・ナードゥ州からは、サリーをつけた聖母子像も来ています。ウェーラーンガンニの癒しの聖母マリアは、キリスト教徒でない人からも篤く信仰されているそうです。

インド・カルナータカ州の村の鬼神たちの木彫像
インド・カルナータカ州の村の鬼神たちを表した木彫像(2014年撮影)写真: Yanajin33(CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)

ジャイナ教やブータン、ネパールの品

ヒンドゥー教のほかの信仰の品も同じ部屋にあります。ジャイナ教の祖ジナの像や、ブータンのマンダラ、ネパールのマニ車です。

インド・デリーのジャイナ教の祖ジナの石像ブータン中央部のマンダラの立体模型
ジャイナ教の祖ジナを表した石像、インド・デリー(2013年撮影)とブータン中央部のマンダラを立体で再現した模型(2014年撮影)写真: 左 Yanajin33(CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)、右 Yanajin33(CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
ネパール・カトマンドゥ盆地のマニ車
ネパール・カトマンドゥ盆地のマニ車(マニコル)が並ぶ展示(2013年撮影)写真: Yanajin33(CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)

ネパール・バクタプル郡ティミで作られた儀礼用の濁酒(どぶろく)の容器には、シヴァの忿怒の姿であるバイラヴ神がついています。作り手はネワール人の絵師カースト、チトラカールです。粘土で仮面の下地を作る人たちなので、バイラヴの彫刻は「お手のものだ」と展示の解説は書いています。2000年代製作です。銅製のホルン「ナラシンガ」は、ヒンドゥー教徒の結婚式や寺院儀礼で演奏する楽団「パンチャイ・バージャー」の楽器の一つで、2013年に集められました。

路上のカートとクリケットのユニフォーム

インドでは、食料品や衣料品、家庭用品など身の回りの多くの品が路上で売られています。展示のカートは1994年に集められ、2014年に腕輪や額に貼る飾り、既婚の証の化粧用具シンドゥールなどの品が加わりました。

インド・デリーのオート・リキシャ
インド・デリーで使われていたオート・リキシャ(2014年撮影)写真: Yanajin33(CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
インド・デリーの駅の売店を再現した展示
インド・デリーの駅の売店を再現した展示。茶や菓子を売る様子がわかる(2014年撮影)写真: Yanajin33(CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)

2008年に設立されたプロクリケットのリーグのチーム、コルカタ・ナイトライダーズの公式ユニフォームと防具も並びます。チームからの寄贈で、2014年に収集されました。

高地の暮らしの品では、ブータン・ハ県で1980年代に作られた黒い「スパイダー・テント」があります。ヤクの毛で織ったテントで、夏にヒマラヤ山麓でヤクを放牧するときに泊まります。ネパール・ポカラの金細工の店で使われた天秤もあります。重さの最小単位はトウアズキ1粒(約0.12グラム)のラルで、100ラルが伝統的な単位の1トラです。

婚礼衣装と絣のサリー

デリーの婚礼衣装は、藩王家、いわゆるマハラジャのファッションのデザインや素材を使って現代風にしたものです。展示の解説によると、婚礼は1990年代から年々華美になり、有名デザイナーの作品も盛んに使われるようになりました。2002年と2003年に収集されています。

グジャラート州の品が続きます。カッチのファキラニ・ジャットの衣装は男女で形が違い、女性用の胸の刺繍は、女性が信仰する聖者の象徴だといわれます。組み立て式の携帯用紡ぎ車は、形から「キターブ・チャルカ(本のかたちの紡ぎ車)」と呼ばれ、2013年製作です。紡ぎ車は、マハートマー・ガーンディーのインド独立運動の象徴にもなりました。

パタンのサリーは、パトラと呼ばれる絣のなかでも技術的にもっとも難しいタテヨコ絣の絹で、作り手はサルビという集団です。この布はインドネシア向けにも作られ、パトラ文様のロウケツ染め布がジャワ島でも生まれました。1983年収集です。

観覧料と休館日

南アジア展示は本館展示の一部です。観覧料は一般780円、大学生340円、高校生以下は無料で、満65歳以上は660円です。開館は10:00〜17:00(入館は16:30まで)、休館日は毎週水曜日(祝日なら直後の平日)と12月28日〜1月4日です。大学生と一般の人は、万博記念公園のゲートでみんぱくの観覧券を買えば、園内を無料で通れます。

岡田恵美さんの話を聞くサロン

2026年12月21日(月)14:30〜15:00、本館展示場のナビひろばで、みんぱくウィークエンド・サロン+「インドで企画展に挑む!」が開かれます。話すのは冒頭の岡田恵美准教授です。ナガランド州で1979年に日本人写真家が州内各地を撮った写真を中心に、現地の博物館と共同で企画展を準備した経緯を話します。公開してよいかどうかの認識の違いにも触れる、と案内にあります。

案内に載ったチラシの写真は森田勇造さんの撮影で、岡田さんのコラムにも、森田さんが1979年にナガランド州ケザケノで撮った、口琴を弾くチャケサン・ナガの女性の写真が載っています。定員はなく、着席40で立ち見もできます。展示観覧券が要りますが、イベントの参加費はかかりません。

編集部の考え

南アジア展示には、寺院の山車とクリケットのユニフォームが同じ部屋に置かれています。岡田さんのコラムを読むと、展示ケースの中の品には、それを作り、使い、いまは使わなくなった人がいたことが分かります。その人たちを訪ねて歩く研究者の話を展示場で直接聞ける日があることも、この展示を取り上げた理由です。

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