GREEN×EXPO 2027の会場になる旧上瀬谷通信施設(横浜市瀬谷区・旭区)は、2027年9月26日の閉幕でその役目を終えるわけではありません。横浜市は2020年3月に「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画」を策定していて、約242ヘクタールの敷地を4つの地区に分けて使う方針が決まっています。花博の会場そのものは、閉幕後に公園として整備が続きます。隣の地区には、三菱地所など民間11社によるテーマパークをつくる計画も進んでいます。
GREEN×EXPO 2027(横浜花博)は、2027年3月19日から9月26日まで開かれます。ここでは、横浜市とGREEN×EXPO協会(公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)の公式資料から確認できた、2026年9月時点の閉幕後の計画を書いています。
1. 旧上瀬谷通信施設の4つの地区
旧上瀬谷通信施設は、1945年に米軍が接収し、2015年6月30日に全域が返還された土地です。返還までの約70年間、米軍施設としての利用制限を受けながら、地権者を中心に農業が続けられてきました。土地の内訳は、国有地・民有地がそれぞれ約45%、市有地が約10%です。
横浜市の基本計画は、地区を「農業振興地区」「観光・賑わい地区」「物流地区」「防災・公園地区」の4つに分けています。策定時の名称は「公園・防災ゾーン」でしたが、2023年2月の「土地利用基本計画デザインノート」で「防災・公園地区」に改称されました。
| 地区 | 内容 | 面積(2020年時点) |
|---|---|---|
| 農業振興地区 | 収穫体験や直売所による「収益性の高い農業」、大学と連携した農業技術の研究など | おおむね50ヘクタール |
| 観光・賑わい地区 | テーマパークを核とした集客施設で、国内外から人を呼ぶ観光と賑わいの拠点 | おおむね125ヘクタール |
| 物流地区 | 東名高速道路や保土ケ谷バイパスに近い立地をいかした効率的な国内物流の拠点 | おおむね15ヘクタール |
| 防災・公園地区 | 国際園芸博覧会のレガシーを継承する公園と、災害時の広域防災拠点 | おおむね50ヘクタール |
横浜市の資料によると、花博の会場は、この防災・公園地区にあたります。
2. 会場は「新しい公園」として横浜市が整備する
横浜市によると、防災・公園地区にできる「(仮称)旧上瀬谷通信施設公園」は、瀬谷区瀬谷町・旭区上川井町にまたがる約65万平方メートル(65ヘクタール)の公園です。横浜市の公園整備のページには、この公園がGREEN×EXPO 2027の会場になり、閉幕後もその理念や取組を踏まえながら、取組テーマを「環境」と「防災」にした公園として整備を進める、と書かれています。
構想の骨子は2024年3月に策定されました。GREEN×EXPO 2027の開催までは、公園に必要なインフラや植栽の一次整備が進められています。2025年3月には横浜市地震防災戦略が改定され、旧上瀬谷通信施設地区に大規模災害時の拠点を整備することが位置づけられました。横浜市によると、この公園は、大規模災害時に全国から集まる自衛隊・警察・消防などの応援部隊のベースキャンプや、支援物資の受け入れ・流通の拠点になる計画です。
3. 観光・賑わい地区にできるテーマパーク
観光・賑わい地区では、横浜市が2023年2月に事業者を公募し、同年9月に三菱地所株式会社を事業者に選びました。三菱地所は、相鉄ホールディングス・東急不動産・東急・住友商事など計11社の代表事業者です。
三菱地所が2026年3月に横浜市へ提出した環境影響評価の計画段階配慮書によると、計画区域は旭区上川井町・瀬谷区瀬谷町にまたがる約70.65ヘクタール(70万6,500平方メートル)です。約51ヘクタールの「テーマパークゾーン」を中心に、「(仮称)上瀬谷ターミナル」の駅前ゾーン、公園隣接ゾーン、環4西ゾーンの4つに分かれます。事業の目的は、日本のコンテンツと技術を生かした次世代型テーマパークを核にしたまちづくりで、GREEN×EXPO 2027のレガシー継承も掲げています。開業時期は2030年代前半、事業期間は50年以上とされ、工事は花博閉幕後の2028年以降に始まる計画です。開業時の来場者数は年間1,200万人を見込み、段階的に1,500万人超を目指すとしています。この配慮書は2026年4月15日から30日まで、横浜市で公告・縦覧されました。
このうち「公園隣接ゾーン」(約6.55ヘクタール)は、配慮書に「GREEN×EXPO 2027会場跡地であることに鑑み」と書かれている区域です。花博の会場だった土地の一部が、防災・公園地区の公園ではなく、テーマパーク側の商業施設に使われることになります。
4. 新たな交通と、協会が発信していないこと
2020年の基本計画では、瀬谷駅を起点に中量軌道(LRT・新交通システム・モノレールなど)を導入する方針が示されていました。横浜市の「新たな交通整備事業」のページ(2026年8月14日更新)によると、現在は瀬谷と上瀬谷の間に新しい輸送システムを導入し、周辺道路を使ったバス路線も充実させる方針です。三菱地所の配慮書には、「(仮称)上瀬谷ターミナル」と相鉄本線瀬谷駅の間を、自動運転・隊列走行の技術を使ったバスで結ぶ計画だと書かれています。都市計画の手続きは、2026年1月に事業者説明会、5月に市素案説明会、7月に公聴会が開かれる段階まで進んでいます。もともと構想されていた軌道系の新交通「(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業」は、横浜市の環境影響評価の手続一覧によると、2024年3月27日付で事業廃止等届出書が出され、4月15日に公告されています。
GREEN×EXPO協会の公式サイトには、閉幕後の会場の使われ方を扱うページは見当たりませんでした。2026年9月のプレスリリースには「レガシー創出」という言葉がありますが、これは国際園芸家協会(AIPH)の規定に基づく持続可能性の報告についてで、跡地の土地利用計画とは別の内容です。跡地の使い道を決めるのは横浜市です。
5. 編集部の考え
大阪の万博記念公園やつくばエキスポセンター、愛・地球博記念公園は、会場だった土地の全体が、ひとつの記念施設や公園として引き継がれました。上瀬谷はそれとは違う形になると思います。花博の会場(防災・公園地区)は公園になりますが、これは242ヘクタールの敷地のうち65ヘクタールにすぎません。隣の観光・賑わい地区は横浜市ではなく、三菱地所など民間11社がテーマパークとして開発します。しかも会場だった土地の一部(公園隣接ゾーン)は、公園ではなくテーマパークの商業施設に組み込まれます。会場全体がひとつの公園になった愛知万博とも、メインパビリオンがそのまま植物園として残った1990年大阪の花博とも違い、公共の防災公園と民間のテーマパークが同じ跡地に並ぶ形になると思います。
