「何度も聞いているうちに、四季島のミュージックホーンが好きになりました」。2022年に鉄道博物館がオンラインの特別イベントで受けた質問に、当時の館長の大場さんはこう答えています。問われたのは、いま走っている列車の汽笛で何が好きか、でした。クルーズトレインのTRAIN SUITE 四季島がときどき館のそばの線路を走り、そのたびに来館者とスタッフが旗や手を振って出迎え、見送る。乗客や乗務員も手を振って応えてくれる、と館長は書いています。
同じ回答集で、おすすめの車両を聞かれた館長は「あえて挙げれば、一番古い「1号機関車」と一番新しい「E5系」が好きです」と答えました。古い車両と新しい車両を並べて挙げるのは、この館の成り立ちに合っています。さいたま市大宮区の鉄道博物館は、約100年のあいだ、使われなくなった車両を順に引き取ってきた館だからです。
東京駅の高架下から大宮へ移った博物館
館長の回答によると、初代の鉄道博物館は1921年に東京駅北側の高架下で開館し、1936年に神田万世橋へ移りました。そこで「順次使われなくなった貴重な車両を収蔵して展示してきています」。大宮の館は、JR東日本創立20周年記念事業のメインプロジェクトとして、2007年10月14日に開館しています。2022年の回答では、展示車両41両の半分以上が神田万世橋の交通博物館時代から展示されていた車両で、トレーラーに積んで大宮へ運ばれました。
館は自分の役目を3つに分けて説明しています。遺産や資料を保存して調べる「鉄道博物館」、鉄道システムの移り変わりを「産業史として物語る」歴史博物館、それに、子どもたちが模型やシミュレーションで「体験的に学習する」教育博物館です。ロゴの3つの輪は、この「鉄道」「歴史」「教育」を表しています。2018年7月には南館ができ、館内は「車両」「歴史」「仕事」「科学」「未来」の5つのステーションに分かれました。

いまは屋外を含めて42両を展示し、いちばん大きな車両ステーション1Fに36両が並びます。お召列車専用機として1953年に製造されたEF58形電気機関車61号機は、90回以上お召列車の先頭に立ってきた機関車です。プロムナードには、D51形426号機の前頭部も展示されています。毎日12:00と15:00には、車両ステーション中央の転車台を汽笛の合図とともに回し、解説員が載っている車両の来歴を話します(無料・予約不要)。


南館ができたあとの展示を本でたどるなら、『鉄道博物館のすべて100PR』(講談社)が写真中心で子ども向けにまとめています。『てっぱくにいこう! 新装版 鉄道博物館完全ガイド』PR(小学館クリエイティブ)は、ミニ運転列車やシミュレータの操作、館内で食べられる場所まで案内する実用のガイドです。ただ、体験の申し込み方は本より変わりやすいので、下の節と公式サイトで確かめてください。
解説員と一緒に見るジオラマ
2Fの鉄道ジオラマは、幅23m、奥行き10mの上に山間部、地方都市、都市圏の鉄道を作り込んだものです。線路の総延長は約1,200mで、およそ1,700両の模型車両から選んだHOゲージの車両が走ります。作るときにこだわった点を聞かれた館長は、運転の仕組みをわかりやすく見せることと並べて、「解説員とお客さまが一体となって楽しめるように」と考えたと答えています。その解説員が実演しながら案内する解説プログラムは、予約不要・無料で毎日9回開かれます。

有料の体験の申し込み
運転の体験は、有料と無料で申し込み方が違います。D51シミュレータ(中学生以上)、E5シミュレータ(小学生以上)、車掌シミュレータ(小学生以上)、運転士体験教室(小学生以上、小学1〜4年生は付添の方の同席が必要)は、どれも600円で、「てっぱく抽選アプリ」で抽選に参加し、当選すると体験できます。
ミニ運転列車も同じ抽選で、600円です。1周300mのコースを3人乗りの車両で自分で運転し、「万世橋」「飯田町」「汐留」「両国橋」の駅を巡ります。運転は小学生以上で、車両の種類は選べません。車いすを使う人が乗れる車両もあります。

一方、南館2Fシミュレータホールにある在来線の運転シミュレータ4台は、無料で先着順です。運転時間はどれも10:30〜16:30で、205系は山手線内回りの実写映像を使います。3Dのてっぱくシアターも無料で、1日12回上映です。
開催中の収蔵資料展
2026年11月9日(月)まで、収蔵資料展「いろいろ、とりどり。鉄道広告 〜あの日、あの場所、あの広告〜」が開かれています。趣旨の文は、鉄道は移動手段であると同時に「広く情報を伝える効果的な「媒体(メディア)」としても発展してきました」と始まり、明治11年に客車の車内に初めて掲げられた広告から、中吊りやヘッドマーク、テレビCMまでを媒体ごとに並べています。本館2Fでは、同じ会期で駅弁の掛紙や器を扱う「駅弁( )デザイン展」もあります。
入館料と開館日
| 区分 | 前売(前日まで) | 当日 |
|---|---|---|
| 一般 | 1,500円 | 1,600円 |
| 小中高生 | 500円 | 600円 |
| 幼児(3歳以上未就学児) | 200円 | 300円 |
身体障害者手帳などを持つ人は、本人と介護者1名まで割引料金(一般800円・小中高生300円・幼児150円)になります。開館時間は10:00〜17:00(最終入館16:30)、休館日は毎週火曜日と年末年始です。入館だけなら予約は要りません。館は見学の目安を2〜3時間としていて、抽選の体験を組み込むなら、そのぶん余裕を見ておくと動きやすいです。
大宮駅からの行き方
最寄り駅は、埼玉新都市交通ニューシャトルの「鉄道博物館駅」です。JR大宮駅で乗り換え、下車して徒歩1分です。この駅は以前「大成駅」という名前で、カーナビの住所・電話番号検索では今も旧駅名のほうが表示されやすいと公式サイトは案内しています。

専用駐車場は一般車1日1,000円、バス1日2,040円です。駐車場は鉄道博物館の閉館と同時に閉まるので注意してください。首都高速埼玉新都心線「新都心西出口」から約4km、東北道「岩槻IC」から約9kmです。身体障害者手帳などを持つ人向けのP3駐車場もありますが、台数に限りがあり、事前予約はできません。
車椅子・ベビーカー・撮影・お弁当
車椅子とベビーカーは館内で無料の貸し出しがあり、エントランスカウンターに申し出ます。ベビーカーは、会員登録が必要な有料の貸出サービス「ベビカル」も使えます。オムツ交換台や授乳室は、キッズプラザ、車両ステーション1F北側と2F南側のトイレ、南館1F・4Fのトイレにあります。補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)は同伴できますが、ペットは同伴も預かりもできません。一度外に出ても、エントランスカウンターに申し出れば再入館できます(混雑状況によってはお断りする場合があります)。
撮影は、個人で楽しむ範囲なら自由です。ただし映像の上映中や一部の企画展、ミュージアムショップでは撮れず、三脚・一脚・自撮り棒の設置と使用は断られています。
お弁当は持ち込めますが、展示室内での飲食はできません。食べられるのは、本館屋上のパノラマデッキ、南館屋上のトレインテラス、本館3Fの新幹線ラウンジです。1Fの455ランチトレインや183ランチトレインも休憩に使えますが、183ランチトレインは2026年11月から2027年2月ごろまで改修工事で一時閉鎖される予定です。工期は調整中で、公式サイトはまだ確定していないとしています。支払いはSuicaなどの交通系ICカードが使え、コインロッカーの料金はクレジットカード払いに対応していません。
編集部の考え
東京駅の高架下で始まった館が万世橋を経て大宮に移り、展示車両の半分以上がそのとき一緒に運ばれてきました。ミニ運転列車の駅名にも「万世橋」が残っています。蒸気機関車から新幹線までを一つの建物で見比べられるのは、使われなくなった車両を約100年かけて順に引き取ってきたからです。