松江市観光白書(令和7年版)によると、小泉八雲記念館の年間来館者数は令和6年の86千人から令和7年の143千人に増えました。白書はNHK連続テレビ小説「ばけばけ」の舞台となった施設を中心に10月以降増加傾向になったと説明しています。市全体の観光入込客数は9,509,197人で対前年比108.9%です。記念館の伸びはそれを大きく上回りました。
小泉八雲記念館と旧居
小泉八雲記念館は1934年に開館し、2016年のリニューアルで一部2階建てに増築されました。リニューアル開館は7月16日です。開館時間は4月から9月が9:00〜18:00(受付は17:30まで)、10月から3月が9:00〜17:00(受付は16:30まで)で、年中無休ですが年数回の館内メンテナンスによる休館日があります。
入館料は個人で大人600円、小・中学生300円です。隣接する小泉八雲旧居との2館共通券は大人800円、小・中学生400円。旧居だけなら大人400円、小・中学生200円です。障がい者手帳・療育手帳の所持者と介護者1名は無料になります。松江城天守・武家屋敷との3館共通券もあり、webで販売されています。所在地は〒690-0872 島根県松江市奥谷町322、JR松江駅からぐるっと松江レイクラインバスで約16分の「小泉八雲記念館前」下車、または一畑電車松江しんじ湖温泉駅から徒歩約20分です。

展示は2階に分かれます。第1展示室は「その眼が見たもの」「その耳が聞いたもの」「その心に響いたもの」という切り口で生涯を編年でたどり、第2展示室は「再話」「ジャーナリズム」「教育」などのテーマで事績を紹介しています。「再話」コーナーでは、松江出身の佐野史郎の朗読と山本恭司の音楽で、八雲が再話した山陰地方の5つの怪談を聞けます。水木しげる記念館・湯本豪一記念日本妖怪博物館との「もののけ3館周遊パスポート」(1セット1,500円)も、2027年3月31日まで販売されています。
小泉八雲旧居は、八雲が1891(明治24)年6月に妻セツと移り住み、熊本に赴くまでの約5か月を過ごした武家屋敷です。帰宅すると和服に着替え、三方の庭を眺める時間を大切にしていたといいます。庭は当時の面影を残しています。2018(平成30)年に松江市の所有となりました。
八雲は1850年にギリシャで生まれ、アイルランドで育ちました。19歳で単身アメリカに渡って記者・作家として活動し、1890(明治23)年に来日、同年8月に島根県尋常中学校の英語教師として松江に赴任しました。1896(明治29)年には日本に帰化して小泉八雲となり、1904(明治37)年に54歳で亡くなりました。

耳なし芳一と赤間神宮(下関)
耳なし芳一の物語は、下関市の赤間神宮(もと阿弥陀寺)に伝わる説話です。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が英訳し「怪談」に掲載したことで一躍有名になりました。境内の耳なし芳一堂には、防府市出身の彫刻家・押田政夫が彫った木像が納められ、昭和32年3月に建立されました。以来7月15日を祭日として耳なし芳一琵琶供養祭が続いています。
赤間神宮の神門「水天門」は龍宮造りで、命名は徳富蘇峰によるものです。宝物殿には重要文化財の長門本平家物語や赤間神宮文書が収蔵され、境内には壇ノ浦の戦いで入水した平家一門を祀る七盛塚もあります。所在地は〒750-0003 山口県下関市阿弥陀寺町。JR下関駅からサンデンバス(長府方面行き)で約10分の「赤間神宮前」下車すぐです。

下関駅からバスで向かうので、遠くから来て朝のうちに参拝するなら、前の晩の宿は楽天トラベルの下関駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
赤間神宮は2026年9月21日付のお知らせで、耳なし芳一の物語をウェアラブルスピーカーで体感する上映会「耳なし芳一 怪談体験」を始めたと発表しています。毎年5月には先帝祭が営まれ、2026年は5月2日に安徳天皇御陵前祭が行われました。
幽霊滝と龍王滝(鳥取県日野町)
八雲が再話したもう一つの怪談が、鳥取県日野町中菅の滝山公園にある龍王滝です。ただしこの話は『怪談』ではありません。鳥取県観光ガイドの解説によると、晩年の1902年に出版された『骨董』に収められた「幽霊滝の伝説」です。地元に伝わる言い伝えを、妻セツが八雲に語って聞かせたものだといいます。気の強い女が肝試しで夜中に赤子を連れて龍王滝へ行き、賽銭箱を持ち帰った際に赤子の首がもぎ取られていたという話です。
龍王滝は瀧山神社の境内にあります。落差は、日野町の幽霊滝の紹介ページで約35mとされています(同町の滝山公園のページには「高さ50m」との表記もあります)。落石の恐れがあるため、現在「滝壺」周辺は立入禁止です。車の場合、米子自動車道江府ICから約30分です。滝山公園は春のツツジ、秋の紅葉でも知られる公園で、駐車場のトイレは冬季(12月〜4月上旬)は凍結防止のため閉鎖されます。
青空文庫では、この「幽霊滝の伝説」と「耳無芳一の話」がどちらも公開中の作品として読めます。底本はいずれも新字新仮名、翻訳者はそれぞれ田部隆次・戸川明三です。
紙で持ち歩くなら、池田雅之訳の『怪談 決定版』(角川ソフィア文庫)が今も売られています。Amazon の『怪談 決定版』のページPRで目次と版を確かめられます。耳で聴くなら、パンローリングの『小泉八雲怪談集』PR(8 時間 25 分)が Audible の聴き放題の対象になっています。
松江までの行き方
岡山方面からは特急やくもで出雲市方面へ向かい、松江で下車します。やくもの運行本数や座席の詳細は「やくも273系ガイド」にまとめています。東京方面からの寝台特急サンライズ出雲については「サンライズ出雲・瀬戸ガイド」を参照してください。
記念館と旧居は松江城の北側にまとまっているので、前の晩は楽天トラベルの松江駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで宿を探し、翌朝レイクラインバスで「小泉八雲記念館前」へ向かうと、開館の9時に合わせやすくなります。
編集部の考え
『怪談』の舞台と呼ばれる場所には、実は別の本に収められた話も混ざっています。耳なし芳一は『怪談』、龍王滝の幽霊滝は『骨董』。どちらも小泉セツが八雲に語って聞かせた再話文学だという点は共通していますが、収められた本は違うと思います。松江の記念館で八雲の生涯をたどってから下関と日野町のそれぞれの舞台に足を運ぶと、どの話がどの本のものかが分かりやすくなります。
八雲には、1854年の津波で村人を救った濱口梧陵を描いた「生ける神」という作品もあります。教科書の「稲むらの火」や史実とどこが違うかは、稲むらの火は実話かを確かめた記事にまとめました。