横浜美術館は、入口を入ってすぐの吹き抜けや美術図書室までなら、観覧券を買わずに歩けます。券が要るのは3階の展示室です。子どもには「こどもミッションシート」という紙も配っています。美術館でのマナーと作品の楽しみ方を、わかりやすい言葉とイラストで5つのミッションにしたものです。館の公式note「#美術館日記」(2025年3月)によると、5つできたら、目印の缶バッジを付けたスタッフに声をかけることになっています。
館長の蔵屋美香は、2026年3月付のあいさつで、リニューアル後は「どんな人にも居場所がある」という考え方を事業の基本に据え、なかでも子どもたちのための展示やトーク、創作プログラムに力を入れていると書いています。そのうえで「アートはゴールではなく、むしろきっかけです」とも。展示を見てもいいし、ただ座って行きかう人を眺めてもいい、というのが館長の案内です。
観覧券なしで入れる「じゆうエリア」
入口を入ると、吹き抜けの「グランドギャラリー」が目の前に広がります。建物は丹下健三の設計で、館の説明では、丹下はこの空間を人びとが「自由に、自発的に使いこなす」ことを期待して設計しました。2021年からの大規模改修で休館していたあいだに、館は丹下の願いに立ち返る検討を始めます。そこから生まれたのが、グランドギャラリーを中心とする無料の「じゆうエリア」です。色も形もばらばらの椅子とテーブルが置かれ、大階段のふもとの「くつぬぎスポット」では親子で絵本を読めます。ガラス張りの天井は秋から春にかけてルーバーを開け、自然光を入れています。
じゆうエリアには、入口の階のギャラリー8・9、美術図書室、ミュージアムショップ「MYNATE」、カフェ「馬車道十番館 横浜美術館 喫茶室」、美術の広場に面したポルティコも入ります。ギャラリー9は改修で新しくできたガラス張りの展示室で、外の広場から中をのぞけます。いまここで開いている「毛利悠子 Recompose」(2026年11月23日まで)は観覧無料です。2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の個展を、作家の出身地の神奈川で組み直した展示です。

美術図書室は約24万冊の美術専門の図書室で、誰でも無料で使えます。いちばん多いのは国内外の展覧会カタログで、ほかに美術の本や雑誌、映像資料もそろっています。資料の貸し出しはしていません。
観覧券が要る3階の展示室
| 展示 | 会期 | 一般 |
|---|---|---|
| 毛利悠子 Recompose(ギャラリー9) | 2026年7月24日〜11月23日 | 無料 |
| マリー・アントワネット・スタイル | 2026年8月1日〜11月23日 | 2,500円 |
| コレクション展「海をこえてゆく彼女」(ギャラリー2・3、ホワイエ) | 2026年8月1日〜2027年2月11日(11月24日〜12月10日は閉室) | 500円 |
マリー・アントワネット・スタイル展は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が企画した世界巡回展で、横浜美術館が最初の、そして国内でただ一つの会場です。あらゆる点で新しい様式をうちたてた「王妃の革新性と人物像に迫る」展示です。大学生1,600円、中学・高校生1,000円、小学生以下は無料。この観覧券で、観覧当日に限りコレクション展も見られます。入場に日時指定予約は要りません。ただし、混雑時は入場を制限したり、屋外の待機列に並んでもらったりすることがあると、展覧会の特設サイトにあります。館はスムーズに入るため、オンラインでの事前購入をすすめています。
主題を先に本で押さえるなら、マリー・アントワネットの宮廷モード ロココから新古典へPR(ジュリエット・トレイ、グラフィック社)があります。
コレクション展は、アントワネットにちなんで、国境をこえて活動した女性の作家たちを特集しています。館は開港した19世紀後半から現代までの作品を約15,000点持っていて、ダリやマグリットの「名品」を並べるコーナーもあります。大学生300円、中学・高校生100円、小学生以下は無料で、毎週土曜は高校生以下が無料です。障がい者手帳を持つ人と介護者1名は、どの展示も無料です。
開館日と館内の決まり
開館は10時から18時で、入館は閉館の30分前まで。11月21日・22日は20時まで開きます。休館日は木曜と年末年始(2026年12月29日〜2027年1月3日)ですが、11月19日の木曜は開館します。
撮影は館内の表示に従う決まりで、展示室ごとに違います。展示室での飲食はできず、飲み物は休憩スペースでとれます。カフェは観覧券がなくても使え、10時から18時(ラストオーダー17時30分)です。大きな荷物は返却式のコインロッカー(100円)か総合案内へ。作品を守るため展示室は21℃前後にしてあるので、館は羽織るものを勧めています。
子ども連れや車椅子で行くとき
ベビーカーと車椅子は展示室にそのまま入れ、総合案内で無料で借りることもできます。貸し出し用のベビーカーは生後3か月から体重15kgまで。グランドギャラリーの大階段には車椅子用の階段昇降車があり、上りだけ使えます。授乳室は館内3か所、多機能トイレは全フロアにあります。音や光が苦手な人のためのカームダウン・クールダウンスペースがロビーフロアにあり、耳栓やイヤーマフも借りられます。
未就学児から12歳までを対象にした「子どものアトリエ」では、2026年10月から「みんなのフリーゾーン」や障がいのある子どもたちのための「のびのび造形じかん」が続きます。活動は館の外にも出ていて、2025年3月には彫刻家で造形教育家の三ツ山一志さんを講師に、栄区の桂台小学校で3日間、絵の具で描いたり発泡スチロールで車を作ったりしました。満12歳以上の人には「市民のアトリエ」があり、平面室・立体室・版画室でプログラムを開いています。
駅からの行き方
みなとみらい線のみなとみらい駅からは、3番出口を出てマークイズみなとみらいのグランドガレリアを通り、徒歩3分です。JR京浜東北・根岸線と横浜市営地下鉄の桜木町駅からは、動く歩道を使って徒歩10分です。
エレベーターとスロープだけで進む道は、館が写真付きで案内しています。みなとみらい駅からはマークイズみなとみらいの南エレベーターで上がる道で、このエレベーターは10時から動きます。桜木町駅からはランドマークプラザを通り、アーチ状の歩道橋(約100m)を渡った先の「公園口」から入ります。
駐車場は157台(屋内107台・屋外50台)で、10時から21時まで。最初の90分が500円、その後は30分ごとに250円で、障がい者手帳を見せると最初の90分が無料になります。21時に完全に閉まり、翌朝10時まで車を出せません。


横浜博覧会のパビリオンから
館は1989年3月25日、横浜博覧会のパビリオンとして開館記念展を開き、同じ年の11月3日に正式に開館しました(博覧会のその後は横浜博覧会の記事に)。2021年3月から初めての大規模改修で全館を閉じました。この改修でエレベーターを増やしてトイレを整え、美術図書室を広場に面した地上階へ移し、ギャラリーを2か所増やしました。2024年3月15日に第8回横浜トリエンナーレにあわせていったん開いたあと、2025年2月8日に全館がそろいました。

次の第9回横浜トリエンナーレは、2027年4月23日から9月12日まで、横浜美術館を中心に開かれます。詳しくは別の記事に書きました。
編集部の考え
丹下健三が設計のときに込めた願いを、休館中に掘り起こして無料の場所として開き直しました。展示を見るかどうかを決める前に、椅子に座っていていい美術館は、子ども連れにもシニアにも入りやすいと思います。