神奈川県立歴史博物館は設備の改修で約1年9か月の休館に入っていて、公式サイトの利用案内には2026年10月16日まで休館中と出ています。再開館は2026年10月17日(土)です。
再開館の準備は館長の馬車道日記に出ています。2026年10月1日の回によると、学芸員が全員で展示室ごとに新しいLED照明を調整し、照度を50〜100ルクスに設定しました。日記には、その展示室を「休館前よりも明るく感じ、資料が鑑賞しやすくなったのではないかと思います」とあります。
再開館の2日間と文化の日は無料
10月17日(土)と18日(日)は再開館記念の無料観覧日で、常設展と再開館最初の特別展を無料で見られます。両日とも先着300人にオリジナルのポストカードが配られ、屋上ドームの公開はありません。混雑すると入場制限がかかることがあります。
11月3日(火・文化の日)も無料観覧日です。この日は、ふだん非公開の屋上ドーム、館の愛称で「エースのドーム」の中が特別に公開されます。公開はおおむね10時から16時、1回25分程度の予約・完全入替制で、予約券は当日の開館時間から1階会議室で先着順に配られます。ドームへは階段19段の昇降があり、エレベーターはありません。雨天・強風のときは中止です。館はこの公開を、馬車道商店街が10月31日(土)から11月3日(火)まで主催する馬車道まつりへの参加として行います。
横浜正金銀行の本店だった建物
建物は1904年(明治37年)7月に横浜正金銀行の本店として竣工しました。横浜正金銀行は、館の重要文化財・史跡の紹介ページによると、1859年(安政6年)の開港後に外国商人との取引の不便さや紙幣と正貨の差価に悩まされた横浜で、正金(現金)による堅実な金融と貿易の増進のために、福沢諭吉や大蔵卿大隈重信らの支援を受けて1880年(明治13年)2月に開業した銀行です。
設計は妻木頼黄で、1899年(明治32年)3月に地盤工事に着手し、補強煉瓦造・石造の地上3階地下1階、ドームの高さは35.7メートルです。この外観は、コリント式の柱頭飾りをもつ大オーダーと正面の巨大なドームが特徴のネオ・バロック様式です。
戦後の1946年(昭和21年)に横浜正金銀行は営業を停止し、建物は東京銀行横浜支店になりました。神奈川県が土地と建物を買収したのは1964年(昭和39年)8月で、1967年(昭和42年)3月に神奈川県立博物館として開館、1969年(昭和44年)3月12日に旧横浜正金銀行本店本館として国の重要文化財に指定されました。1995年(平成7年)3月に人文系の神奈川県立歴史博物館として開館し直し、同じ年の6月には国の史跡になりました。自然科学系の部門は小田原の神奈川県立生命の星・地球博物館に移っています。
関東大震災で焼け落ちたドーム
1923年(大正12年)9月1日の関東大震災で、建物は倒壊しなかったものの、火災で1階から3階までの内装と屋上のドームを焼失しました。復旧後は戦後まで銀行として使われ、いまのドームは1967年の博物館開館にあたって復元したものです。県は東京銀行横浜支店に保存されていた竣工当時の写真を資料に、できるだけ正確に形を戻しました。震災当日の横浜の被害は関東大震災の記事に書いています。
エースのドームという愛称は、横浜三塔のキング・クイーン・ジャックにあやかって館が付けたものです。
銀行だったころの部屋
館は建物の紹介ページで、竣工当時の各室の用途を載せています。第1営業室は周囲の羽目と取引台の下に秩父産の蛇紋石、取引台の石に信州の花崗石を使った部屋です。保護預品庫には米国製の保護函が数百個あり、鍵は2か所を同時に使わないと開かない仕組みでした。正面2階の中央客室は外国から来た顧客のための部屋で、汽車汽船の発着時間表や日本国内の風景が分かる図書を備えていました。
これらの部屋がいまの館内のどこにあたるかは、公式サイトの建物の紹介には書かれていません(未確認)。再開館後の特別展の関連行事には、この建物を「1番大きな館蔵品」と呼ぶ建物見学会が入っています。日程は催し物案内で確かめてください。
常設展は3階から時代順に
常設展は古代・中世・近世・近代・現代/民俗の5つのテーマで構成され、3階の展示室から時代順に見ます。館のテーマ名は、古代「さがみの古代に生きた人びと」、中世「都市鎌倉と中世びと」、近世「近世の街道と庶民文化」、近代「横浜開港と近代化」、現代・民俗「現代の神奈川と伝統文化」です。展示物は随時入れ替わるので、見たい資料があるときは館に確かめてください。
無料アプリ「ポケット学芸員」を自分のスマートフォンに入れると、常設展の解説を音声と文字で聞いたり読んだりできます。
再開館最初の特別展
特別展「入門!神奈川県立歴史博物館―県博の守り伝えていくコレクション―」は2026年10月17日(土)から12月13日(日)までで、会場は1階の特別展示室とコレクション展示室です。月曜休館ですが11月23日(月・祝)は開き、11月20日は19時まで開館時間を延ばします。この展示は、新しい照明と低反射フィルムの環境で自館のコレクションをまとめて見せる機会で、所蔵品をまとめて見られるのは約8年ぶりです。国指定重要文化財の十王図、色々威腹巻、二十八間四方白星兜鉢、二十四間四方白星兜鉢の4件を約20年ぶりに同時に展示し、源頼朝袖判下文、一遍上人像、五姓田義松の老母図、歌川広重の東海道五十三次から川崎〜箱根の9点(前期)が並びます。
老母図は、館の「今月の逸品」で主任学芸員の角田拓朗さんが解説している作品です。1875年(明治8年)、20歳の義松が肝臓を病んで伏せる母の勢子を描いた紙の油彩で、作中の日付の翌日に勢子は亡くなりました。解説は、肖像画の上手下手ではなく肖像画の本質的な意味そのものをあらわにするかのような作品だ、とあります。
観覧料と開館時間
常設展の観覧料は20歳以上300円、20歳未満と学生200円、高校生と65歳以上100円で、中学生以下と障害者手帳を持つ人は無料(介助者は原則2名まで無料)です。コレクション展は無料、特別展は別料金で、特別展の会期中は次の料金です。()内は20名以上の団体料金。
| 区分 | 特別展・常設展セット | 特別展 | 常設展 |
|---|---|---|---|
| 一般 | 850円(800円) | 600円(550円) | 300円(250円) |
| 20歳未満・学生 | 550円(500円) | 400円(350円) | 200円(150円) |
| 65歳以上 | 250円(250円) | 200円(150円) | 100円(100円) |
| 高校生 | 200円(200円) | 100円(100円) | 100円(100円) |
| 中学生以下 | 無料 | 無料 | 無料 |
ぐるっとパスでは常設展が無料、特別展が団体料金です。毎月第1日曜日は「ファミリー・コミュニケーションの日」で、神奈川県民が18歳未満を含む家族で来ると優待があります。
開館時間は9時30分から17時(入館は16時30分まで)。休館日は月曜日(祝日・休日は開館)、年末年始の12月28日から1月4日、資料整理休館日です。一般団体の見学の受け入れは2026年11月4日(水)9時30分からです。
撮影と館内の決まり
常設展示室の資料は非営利目的なら撮影できます。撮影禁止マークのある資料は撮れず、特別展の会場は原則撮影禁止です。フラッシュと照明、レフ板、一脚・三脚、自撮り棒は使えません。館内は飲食禁止です。展示室への再入場は原則できませんが、1階のトイレやショップ、喫茶ともしびに寄って戻るときは総合案内で半券を見せます。喫茶ともしびは障がいのある人が働く店で、無料ゾーンにあるので喫茶だけの利用もできます。
馬車道駅3番・5番出口から徒歩1分
みなとみらい線馬車道駅の3番・5番出口から徒歩1分です。3番出口は階段のみで正面玄関に近く、エスカレーターとエレベーターを使うなら5番出口から馬車道玄関へ回ります。市営地下鉄関内駅は9番出口から徒歩5分、JR桜木町駅は新南口(ICカード専用)から徒歩5分です。一般用の駐車場と駐輪場はありません。車椅子の人は正面玄関脇のスロープから車椅子対応のエレベーターで入れ、貸し出し用の車椅子2台とベビーカー1台を総合案内で借りられます。
編集部の考え
神奈川県は1964年に銀行の建物を買い、焼け落ちていたドームを復元して博物館にしました。再開館のお知らせには、長寿命化対策と並べて「適切に建物を管理・運営し、未来に継承していくことが当館の大きな使命の1つ」とあります。再開館後の特別展では建物そのものを「1番大きな館蔵品」と呼ぶ見学会を関連行事に置き、文化の日にはドームの中を開けます。常設展の300円で、国の重要文化財の中を歩けます。