シルク博物館は、横浜の山下町にあるシルクセンターの2階に入っています。館は「絹の魅力と文化を伝える博物館」を名乗り、1階では生きた蚕を観察でき、2階には江戸時代からの絹の衣装が並びます。行く日を決めるなら、真綿や手紬糸の実演の日と、秋の特別展の会期を先に見ておくと迷いません。
英一番館の跡に建つ館
館のあゆみによると、建物のシルクセンター国際貿易観光会館は「開港当初に英国商社ジャーディン・マセソン商会(英一番館)のあったところ」に建てられました。1859年に横浜が開港すると生糸は重要な輸出品となり、蚕糸業は日本の近代化に大きく貢献した、と館は収蔵資料の頁で書いています。
シルクセンターの構想を打ち出したのは当時の内山神奈川県知事で、最も重点を置いたのが絹の博物館の建設でした。蚕から絹製品までの展示で海外の観光客に日本の絹を知らせ、生糸の輸出を高める。つまり戦後の復興をねらった計画だったと、館は説明しています。神奈川県博物館協会が構想の試案を作り、設立準備委員会の検討を経て、1959年3月、横浜開港100年の記念事業として会館の2階と3階に開きました。開館当初は2階に蚕の一生や自動繰糸機、機織り機、3階に復元した時代風俗衣装やシルクロードの展示があったそうです。
そのあと、開館10周年の1969年に自然科学系の展示を充実させる改装をし、海側の入口の外に彫刻家安田周三郎の「絹乙女」像を置きました。同じ場所には、津久井町青根(現在の相模原市)から寄贈された桑の木が植えられています。この桑を館は、横浜開港ごろに植えられたものといわれる、と伝聞の形で書いています。1971年に博物館法の「博物館に相当する施設」の指定を受け、1973年には博物館法に基づく博物館になりました。
1階の蚕と2階の衣装
1階は観察と体験のフロアです。生きた「かいこ」の観察、繭から糸を取る「糸くり」、布を織る「はた織り」の体験があり、館のキャラクター「まゆるん」のクイズで、絹の製品ができるまでの過程を追えます。学習コーナーには蚕糸業や染織の図書の一部が開架してあり、入館した人なら誰でも読めます。
2階は、横浜が生糸の輸出拠点として発展した歴史と、絹の美しさと技術の展示です。復元衣装と、和装を中心にした絹製品が並びます。1階の「しらべライブラリ」と2階の「シルクのあゆみ」は、特別展の期間中は展示替えになることがあります。収蔵資料は2019年7月末でおよそ6600点。大部分は絹の染織品で、開館当初から集めてきた江戸時代の小袖は今では集めにくい資料だ、と館は書いています。養蚕や製糸、機織りを描いた浮世絵の蚕織錦絵も、およそ200種あります。
実演と体験の日
繭を水の中で広げて袋真綿を作る「手作り真綿の実演」は、2026年12月5日と、2027年1月23日、3月6日の土曜日にあります。各日とも10時30分〜11時30分と13時〜15時です。結城紬の手つむぎの技法で、真綿を引き伸ばして「つくし」という道具で糸にする「手紬糸作りの実演」は、伝統工芸士の永田順子さんが見せるもので、次は2027年2月20日(土)の13時〜15時です。
子ども向けのワークショップは、まゆ人形作り(11月7日)、かいことシルクの勉強会(11月14日)、小さなシルクハンカチ染め体験(2027年1月9日・10日)などが土曜と日曜にあります。大人向けにはくみひもストラップ作り(10月31日)と、10月3日のシルクスカーフ染め体験があります。ワークショップや講座は、どれも事前申込制です。12月20日(日)は無料入館日で、「たのしいかいこの発表会」の表彰式とコンサートがあります。蚕を家で育てたい人向けの蚕種の配布は、個人向けの申込受付が6月で、2026年は6月5日〜19日でした。
秋の特別展「めざせ豊蚕」
2026年10月10日(土)から11月23日(月祝)まで、秋の特別展「めざせ豊蚕(ほうさん)-おかいこさまの道具展-」が開きます。蚕を育てるための道具「蚕具」の展示で、趣旨文には、この展示が「近代日本の発展を支えた蚕という小さな昆虫」を知る機会になればとあります。展示は、養蚕という生業、おかいこさまのための道具、養蚕の現在とこれから、の3つの区分です。
会期中の休館日は10月13日(火)、19日(月)、26日(月)、11月2日(月)、9日(月)、16日(月)で、13日だけ火曜日が休みになります。会期中の入館料は特別展の料金になり、一般700円、シニア(65歳以上)500円、大学生300円、高校生と小・中学生100円です。ギャラリートークは10月25日(日)、11月8日(日)、11月23日(月祝)の14時から。11月1日(日)13時30分〜15時30分の特別講演会は、アシザワ養蚕の芦澤洋平さんが養蚕の道具について話す会で、参加は無料(入館料は別)、定員40名、電話での先着順の申し込みです。
特別展の前後は休みが続きます。展示替えのため10月5日(月)〜9日(金)が休館、11月24日(火)〜29日(日)は展示替えと全館停電で休館です。
入館料と休館日
開館は9時30分〜17時(入館は16時30分まで)。休館日は月曜日(祝日なら翌日)と、12月28日〜1月4日の年末年始で、臨時休館もあります。2026年9月21日(月祝)は臨時休館でした。常設の入館料は一般500円、シニア(65歳以上)と大学生300円、高校生と小・中学生100円で、20人以上の団体は一般300円、シニア・大学生200円、小中高生50円です。障がい者手帳などを見せると本人と介助者1名が無料になります。着物割引などの割引もあると館は案内していますが、条件は公式サイトの割引の案内で確かめてください。
ミュージアムショップは営業が12時〜17時で、定休日は博物館と同じです。図録や一筆箋、スカーフなどを売っています。
日本大通り駅からの行き方と子ども連れの決まり
みなとみらい線の日本大通り駅4番出口から徒歩3分です。専用の駐車場はありません。小学4年生以下の子どもだけでは入館できず、18歳以上の大人の同伴が要ります。大きい荷物や傘、生花や飲食物は持ち込めず、コインロッカーや傘立てを使います。大型のスーツケースは受付でも預かります。館内は飲食禁止で、撮影禁止のマークがある所では撮れず、撮れる所でもフラッシュは使えません。メモを取るなら鉛筆だけです。エレベーターや車椅子の貸し出しは、公式サイトのご来館の頁に記載がなく、未確認です。
編集部の考え
英一番館の跡地に1959年に開いた絹の博物館が、今も1階で生きた蚕を見せているので、この館を取り上げました。館のあゆみに書かれた開館の目的は、海外の観光客に日本の絹を見せて生糸の輸出を高めることでした。1969年の改装では蚕から絹に至る自然科学系の展示を充実させ、いまは1階で「かいこ」の観察と糸くりの体験ができ、6月には家で育てたい人に蚕種を配っています。