せんとくんは、2010年に奈良で開かれた平城遷都1300年祭をPRするために、2008年に生まれました。祭が終わった翌2011年からは奈良県のマスコットキャラクターで、県の資料には「奈良県職員に就任」とあります。イラストの使用料は2018年8月1日から無償ですが、使う前の使用承認申請は今も必要です。
1. 平城遷都1300年記念事業と、せんとくんの誕生
国土交通省は2008年10月27日に「平城遷都1300年記念事業の実施について」を発表し、翌28日に閣議了解を行うと案内しました。平城京に都が置かれてから1300年目にあたる2010年に、奈良県が中心となって進める事業で、会期は2010年1月1日から12月31日まで、主会場は特別史跡平城宮跡です。実施主体は平城遷都1300年記念事業協会(会長は関西経済連合会相談役の秋山喜久)。事業の規模は全体で1200〜1300万人、うち平城宮跡会場は約250万人と見込まれていました。この数字は計画の時点の見込みで、実績ではありません。
事業は3つで組まれていました。平城宮跡で「平城遷都1300年記念祝典」を核に「大極殿完成記念イベント」や季節ごとのフェアを開く「平城遷都1300年祭」、東アジアの自治体首長らが集まる「東アジア未来会議 奈良2010」、現代社会の課題を論じて公表する「弥勒プロジェクト」です。国は「国営飛鳥・平城宮跡歴史公園平城宮跡区域」の整備で支援するとしていました(国土交通省の資料)。いま平城宮跡が国営公園として整備されているのは、この事業の支援策として国が挙げていたものです。

せんとくんは、この祭を国内外にアピールするために2008年に誕生した、と県の運用マニュアルは説明しています。県のプロフィールでは誕生日は2月12日、性別は男の子、特技はダンス、好きな食べ物は「奈良のうまいもの」です。図案を作った人の名前と図案の発表日は、県のプロフィールとイラスト使用のページには書かれておらず、未確認です。
2. 祭のあと、2011年に県のマスコットキャラクターへ
祭が終わったあとの2011年から、せんとくんは奈良県マスコットキャラクターとして続いています。せんとくんは、奈良を訪れる人を古都へ誘う役割に加え、県政全般の情報を伝える「広報マン」でもあります(県の運用マニュアル)。使用要綱の初版は平成23年(2011年)4月4日に施行され、その後5回改正されています。
要綱の第2条は、せんとくんを「奈良県が著作権を有している」デザインと、商標登録第5171244号・第5283413号、およびそれらを展開したものと定めています。著作権も商標も県が持ち、使う人は県の承認を受ける形です。
無償化の前、2018年7月31日までの手続きは、県の「申請手続の流れ」の図で分かります。使用承認申請書は有償用と無償用の2つの様式に分かれ、企業のパンフレットのほかに直近3年間の決算書等を添えます。承認のあとにデザイン承認申請と試作品の審査があり、有償の場合は商標権の使用設定契約を結び、使用料と証紙代を払って証紙の交付を受け、それから製造・販売でした。使用期間は契約締結日から年度末の3月31日までの1年以内で、年度をまたいで使うには申請のし直しが要りました。
3. 使用料の無償化(2018年8月1日)で変わったこと
奈良県観光局観光プロモーション課は2018年7月20日に報道資料を出し、イラストライセンスの無償化を8月1日から運用すると発表しました。事前相談は7月23日から受け付け、8月1日から申請の受付が始まっています。誕生から10年の年でした。県が挙げた理由は「よりみなさまに愛され、様々なシーンでご活用いただきやすくするため」の一文です。
主な改正点は、使用料の無償化、使用期間の最長1年間から2年間への延長、衣装・ポーズのバリエーションを23種類から26種類に追加、応用デザインなどイラストの使用パターンの拡大です。運用マニュアルによると、それまで有償の商品用に限られていた応用デザインが、無償化のあとは使えるようになりました。
手続きも軽くなりました。申請書の様式は1つに統一され、決算報告書の提出は廃止、デザイン承認申請の手続きも廃止されて、使用承認の申請時にデザイン案を一緒に出す形になりました。商標権の使用設定契約と、それに伴う支払いと証紙の交付もなくなっています。一方で、完成見本(サンプル品)か写真の提出と確認は続いています。同じ日から、承認基準に「誤認または混同を生じさせるおそれ」と「せんとくんのイメージを損なうおそれ」の2つ(7号・8号)が足されました。
無償化の前の使用料の額と、無償化の前後で申請の件数がどう動いたかは、今回確かめた県の公開資料には載っておらず、未確認です。
4. いま使うには:申請は必要、個人で楽しむ範囲は不要
使用料は無償ですが、商標の管理のために、県の案内には「必ず使用承認申請手続きを行って下さい」とあります。流れは、使用承認申請書(様式第1号)と企業・団体の概要が分かる書類、デザイン案を県の観光経済課に出し、資格要件と承認基準の審査、デザインの審査を受けて、使用承認書の交付を受けます。申請書には押印が要るため原本を紙で出し、承認まではおおむね2週間程度が目安です。承認された商品には、原則として著作権表示「©NARA pref.」と承認番号「奈せ第●●-●●●」をイラストの近くに付けます。使用期間は最長2年間で、期間内に作った在庫は期間が終わっても売れます。
こうして承認を受けた商品がどんなものかは、楽天市場のせんとくんグッズの一覧PRを見ると見当がつきます。奈良まで行かずに買うにも、この一覧が近道です。
個人で楽しむ範囲、たとえば自作のせんとくんのマスコットを身内に贈る、子どもの運動会の応援うちわに使うといった著作権法第30条の私的使用にあたる場合は、申請は要りません。個人のSNSのトップ画面やブログの記事にイラストを載せることは私的使用の範囲を超えますが、承認基準に触れない範囲で例外的に認めると運用マニュアルは書いています。新聞・テレビなどの報道機関が報道目的で使う場合も、要綱第3条で申請の対象外です。たばこ・飲酒・ギャンブルや乱暴な表現など、イメージを損なう使い方はできません。
要綱は2021年10月28日に改正され、2024年9月1日以降の申請は新しい様式を使います。県のページには、ガイドラインの基本編(その1〜その5)と応用編(その1・その2)が置かれ、太郎冠者装束のイラストも足されています。問い合わせは観光局観光経済課(電話 0742-27-8051)です。
5. 会えるところと、平城宮跡への行き方
せんとくんの出演予定は、県のサイトの「せんとくんの仕事部屋」に載ります。着ぐるみの貸し出しは、催しの6か月前から受け付け、2か月前までに貸出申込書をFAXで送ります。貸出規程は令和5年(2023年)3月30日施行のもので、県は令和6年(2024年)5月から貸し出しを再開したと案内しています。
平城宮跡歴史公園へは、公園の公式サイトによると、近鉄大和西大寺駅南口から玉手門を経由して徒歩約20分、近鉄新大宮駅からも約20分です。奈良交通の路線バスなら、大和西大寺駅南口から「朱雀門ひろば前」まで約6分、近鉄奈良駅から約16分、JR奈良駅西口から約10分。ぐるっとバスの大宮通りルートは運行を終えています。公園は公共交通機関での来園を呼びかけ、園内は広いのでレンタル自転車を勧めています。

朝から平城宮跡を回るなら、前の晩の宿は楽天トラベルの大和西大寺駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。駅の南口から平城宮跡までは徒歩約20分、バスなら「朱雀門ひろば前」まで約6分です。
第一次大極殿は9:00〜16:30(入場は16:00まで)で、休館は月曜日(祝日の場合は翌平日)と12月29日〜1月3日。朱雀門と東院庭園、遺構展示館も同じ時間です。

6. 編集部の考え
無償化の中身を要綱と手続きの図で突き合わせると、県が手放したのは使用料だけではありません。決算書3年分、有償・無償で分かれた様式、デザインの承認申請、商標の契約、証紙の交付。これらがまとめて消えました。使用料の額が県の資料に無いので断定はできませんが、使う側が止まっていたのは金額より、この手続きの重さだったのではないかと思います。無償にするだけなら要綱の第9条を変えれば済むのに、県は流れの図を作り直して改正前後を並べています。
一方で審査は残り、承認基準は2つ増え、承認番号の表示は原則になりました。無償化は管理をやめることではなく、県が著作権と商標を持ったまま、審査を通った使い方だけを広げる形です。誕生から10年の時点での判断でした。