醤油味のスープの麺の上に、もやしや白菜と肉を炒め、とろみを付けたあんがのっています。横浜の中華料理店で生まれたこの麺を、作る側の神奈川県中華料理業生活衛生同業組合が「かながわサンマー麺の会」のサイトで、字の意味から説明しています。名前の元は秋刀魚ではなく、「生馬麺」という漢字です。
サンマーメンは、文化庁の「100年フード」に令和3年度(2021年度)、未来の100年フード部門で認定されました。100年フードは、文化庁が、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する取り組みで、申請したのはこの組合です。
「生馬麺」の字の意味
魚のサンマは乗っていません。認定の文は「サンマが乗っているラーメン?」と思う人がいる、という話から始まり、漢字は「生馬麺」で、生(サン)と馬(マー)は広東語の読みだと続きます。調理法もやや甘めの広東料理に属する、ともあります。「生(サン)は”新鮮でシャキシャキした”と言う意味」で、馬(マー)は上に乗せる意味。炒めた野菜や肉を麺の上に乗せることから付いた名前だと伝わっている、という書き方で、組合も言い切ってはいません。
店によっては「生碼麺」と書きます。由来のページには、「碼」は中国で部屋番号や港の埠頭を指す字で、料理の語にはあまり使わない、とあります。横浜には埠頭が多く、港で働く人が好んで食べたのでこの字が使われるようになった、という説も載せていて、これも説のままです。認定の文は、中区の中華街を挙げて、サンマーメンは「中国人と日本人の交流から生まれたものです」と書いています。
戦後の横浜市中区の店から
由来のページには、戦前の調理人のまかない料理で、とろみを付けた肉そばが原形になったと言われている、とあります。店に出るようになったのは戦後の昭和22〜23年頃(1947〜48年)で、横浜市中区の中華料理店が発祥と伝えられています。当時の具は肉・もやし・白菜と季節の野菜で、スープは醤油味。ラーメンより量があり、あんがかかっていて寒い季節に温まるので、少しずつ品書きに載るようになったという経緯です。具の中でもやしは、材料費が安く、口当たりがよくて量もあるので、一般の店が扱うようになってからは主体に使われるようになった、とあります。いまは神奈川県全域と関東各地に店が広がり、認定の文はそれを、中区から巣立った料理人が広めた、と説明しています。
近ごろは色合いと栄養の基本として、具を白・黒・赤・黄・青(緑)の5色でそろえる店もあり、もやしと白菜が白、キクラゲが黒、豚肉と人参が赤、たけのこが黄、ニラや葉物が緑です。もやしそばと同じ料理と思われることもありますが、サンマーメンはとろみを付け、もやしそばは付けないのが一般的、と組合は区別しています。
作り方の定義は決まっていません。醤油味の店と塩味の店があり、スープは醤油で具だけ塩味という店もあります。発祥当時はスープも具も醤油味だった、と括弧書きで添えています。共通するのは、由来のページの言葉では「野菜はシャキッと手早く炒め、必ずとろみを付けてコクのある具に仕上げる事」です。
組合の一覧に載る店
かながわサンマー麺の会は、神奈川県中華料理業生活衛生同業組合に所属する店の有志の集まりです。組合は厚生労働省の許可を得て発足した団体で、組合員は約300名余り、加盟店は98店舗(令和5年3月末現在)。会のサイトの店の一覧は、横浜市南部・横浜市北部・川崎市東部・川崎市西部・横須賀・三浦・湘南・相模原・厚木・秦野の6つの地域に分かれていて、記事を書いた時点で数えると合わせて44軒でした(川崎市宮前区の1軒は休業中の注記つき)。
多いのは横浜市北部の14軒と川崎市東部の11軒で、鶴見区や青葉区、川崎市幸区の、駅からバスで行く店も入っています。北部は東急田園都市線の沿線が多く、たまプラーザ駅から徒歩3分の中華&ちゃんぽん昇龍や、あざみ野駅のビル地下1階にある中華飯店 龍鳳のように、駅から歩ける店もあります。横浜市南部の8軒のうち6軒が中区で、関内駅・黄金町駅・阪東橋駅から歩ける伊勢佐木町や長者町の店です。相模原・厚木・秦野のページに載るのは1軒だけで、それも八景島駅から徒歩7分の、横浜市金沢区の八景島の店。ページには会員募集中とあります。
横浜中華街と関内・伊勢佐木町なら、駅から歩ける店がこの一覧に3軒あります。
- 廣新樓(中区山下町188)。みなとみらい線 元町・中華街駅から徒歩7分、JR石川町駅北口(中華街口)から徒歩7分。
- 中華料理 紅花(中区尾上町3-45)。JR関内駅北口から徒歩1分。
- 玉泉亭(中区伊勢佐木町5-127)。JR関内駅から徒歩7分、伊勢佐木町通り沿い。
中華街の最寄りは、みなとみらい線の元町・中華街駅とJR根岸線の石川町駅で、廣新樓はどちらからも歩く時間が同じです。関内駅もJR根岸線で、紅花は北口を出てすぐ、玉泉亭は伊勢佐木町通りを歩いた先にあります。
一覧には営業時間も載っていますが、いまの営業日と時間は未確認です。行く前に店に確かめてください。
カップ麺で取り寄せる
ニュータッチの凄麺シリーズを出すヤマダイの「ニュータッチ 凄麺 横浜発祥サンマーメン」は、かながわサンマー麺の会の推薦を受けて出ているカップ麺です。会のサイトには、かやくとスープを4つの袋に分けている、とあります。店まで行けない人や、神奈川まで来られない人は、楽天市場で凄麺 横浜発祥サンマー麺を探すPRとAmazonの検索結果PRに、箱売りやセットが上位に並びます。
編集部の考え
サンマーメンの生(サン)は新鮮でシャキシャキ、馬(マー)は上に乗せる。炒めた野菜と肉を麺に乗せたからこの名が付いた、と神奈川県中華料理業生活衛生同業組合(かながわサンマー麺の会)は伝えていますが、断定はしていません。店によって書く「碼」の字も、横浜の埠頭で働く人が好んだからという一つの説です。作り方の決まりはなく、醤油味の店も塩味の店もあります。組合が共通点に挙げるのは「野菜はシャキッと手早く炒め、必ずとろみを付けてコクのある具に仕上げる事」の一つです。文化庁に申請したのもこの組合で、一覧の44軒はその会員です。