年に12回ほど、みなとみらいの石造りのドックで、約80人のボランティアが日本丸の帆を広げます。マストに登って帆桁に渡り、帆を縛ったロープを解いてから、甲板でロープを引いて、一番前の縦帆から順に29枚の帆を開いていきます。作業はすべて手作業です。帆を広げた日本丸は、その姿から「太平洋の白鳥」と呼ばれていました。
作業に加わるのは、年2回(4月と10月)の養成訓練を終えて登録した人たちで、登録者は約2,000人にのぼります。帆を広げない日も、甲板ボランティアが船内の掃除と整備を続け、見学の人には、元船長や機関長を中心とするガイドボランティアが無料で船内を案内しています。船を見るなら、隣の横浜みなと博物館と合わせた共通券が一般800円です。
83万人の署名で横浜に来た練習帆船
日本丸は昭和5(1930)年に建造された練習帆船です。昭和59(1984)年までの約54年間に、地球45.4周分にあたる延べ183万kmを航海し、11,500人の実習生を育てました。
引退した船を横浜に誘致するため、83万人の署名が集められました。その署名簿の一部は、いまも横浜みなと博物館に展示されています。船を保存するために横浜市が1984年に設けた財団は、設立の趣旨に、日本丸を「市民の連帯感を深める新しい国際都市のシンボルとして」保存し公開する、と書きました。昭和60(1985)年4月から、船は現役当時の姿のまま一般に公開されています。

館の紹介には、船は「今は静かに都市の発展を見つめる日本丸」とあります。船が収まっているのは、横浜船渠会社が1898(明治31)年12月に完成させた第一号船渠で、1982年までの83年間に数千隻の船を修理したドックです。ドックは2000年12月4日に、日本丸は2017年9月15日に、国の重要文化財に指定されました。ドックの周りはいつでも見学でき、干潮のときは壁面の石積みが一部見えます。

船内を案内するのは練習船に乗っていた人たち
ガイドボランティアは、日本丸などの練習船に実習生として乗った経験のある元船長や機関長が中心です。団体での予約は受け付けておらず、船の近くの博物館側の入口か、雨の日は船内の第一教室で待っているガイドに声をかけます。人手によっては案内できない日もあります。
船内では、1部屋8人で暮らした実習生室(ベッドは長さ185cm、幅65cm)、船長が客をもてなした船長公室、傾いても動かないようテーブルとイスを床に固定した士官サロン、帆を見ながら舵をとるため船の一番後ろに置いた舵輪を見られます。甲板の時鐘は、当直の最初の30分に1回、その後30分ごとに1回ずつ増やして鳴らし、8点鐘で交代した鐘です。最も高いマストは水面から46メートルあります。
帆を広げる日と旗を飾る日
2026年度の総帆展帆は、残りが10月4日、10月11日、10月18日、11月3日、11月15日です。展帆作業は10時30分頃から12時頃、畳帆作業は14時30分頃から16時頃までで、そのあいだは乗船できません。船内を見られるのは9時30分から10時30分、12時頃から14時30分、16時頃から17時の3つの時間帯で、この日だけ9時30分に開館します。悪天候のときは中止や変更があり、当日の朝に公式サイトで知らされます。
満船飾は、帆は広げずに、船首から各マストの頂きを経て船尾まで国際信号旗を飾る日です。10月12日、11月3日、11月23日、2027年1月11日、1月27日(進水記念日)、3月21日に予定され、時間は10時から15時30分頃まで、総帆展帆と重なる11月3日は12時頃から14時頃までです。
横浜みなと博物館

横浜みなと博物館は、「一人でも多くの人が、より横浜港を知り、考え、楽しむことができる博物館」をめざしています。常設展示は開港から約160年を7つの時代に分け、1894(明治27)年からおよそ100年間、海底で大さん橋を支えたスクリューパイルや、関東大震災のときに横浜港で被災者を救助した貨客船アンドレ・ルボンの模型を置いています。総帆展帆を5面のLEDパネルで見せるVRシアター「みなとカプセル」もあります。
ここにも市民の手が入っています。学芸員と一緒に展示を勉強してきた約25名の展示案内ボランティアが常設展示室にいて、毎週土曜日には無料の「楽しい船の折り紙教室」、日曜・祝日には「ペーパークラフト教室」が開かれます。
館内の柳原良平アートミュージアムは、アンクルトリスの広告デザインや船の絵で知られる柳原良平(1931〜2015)の常設展示室です。柳原は1964年、毎日船を見られる横浜の山手に移り住みました。いまの特集展示「船と港町」(2027年1月27日まで)は、函館や尾道、ニューヨークなどの港町を船とともに描いた19点を並べ、柳原の「近頃は船そのものよりも港を見るのがたのしくなった。」という言葉を添えています。2026年8月17日には、サントリー株式会社から寄贈された「柳原良平 アンクル像」が日本丸メモリアルパークで公開されました。
入館料と休館日
| 区分 | 共通券 | 日本丸 | 博物館 |
|---|---|---|---|
| 一般 | 800円 | 400円 | 500円 |
| 65歳以上 | 600円 | 250円 | 400円 |
| 小・中・高校生 | 300円 | 200円 | 200円 |
個人の料金です。小学生以上20名以上の団体は割引があります。土曜日は小・中・高校生が一律100円になり、この分は進水100周年に向けた保存活動に使われます。65歳以上は年齢のわかる身分証を見せます。障害者手帳を見せると、本人と介助者1人は無料です。「ぐるっとパス」にも参加しています。
開館は10時から17時(入館は16時30分まで)。休館日は月曜日(祝日なら開館して翌平日が休み)、年末年始の2026年12月28日から2027年1月4日、メンテナンスの2027年1月28日から2月4日です。日本丸はさらに、帆の取り外しで11月28日・29日、船体整備で2027年1月28日から3月1日まで休みます。
駅からの行き方
JR根岸線と市営地下鉄ブルーラインの桜木町駅、みなとみらい線のみなとみらい駅・馬車道駅から、どれも徒歩5分です。横浜市営バスは横浜駅前と日本丸メモリアルパークを結び、均一区間の運賃は大人220円です。専用駐車場はなく、身障者用の駐車スペースが1台分だけあります(事前に電話で連絡)。
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車いす・ベビーカー・撮影
日本丸は安全管理上、車いすで見学できるのは最上甲板(長船尾楼甲板)までで、付き添いが要ります。ベビーカーは入口で預かってもらいます。博物館はスロープとエレベーターがあり、1階に貸出用の車いす、総合案内に貸出用のベビーカー3台があります。おむつ交換台は1階と地下1階に、授乳は総合案内の隣のスペースを使えます。
撮影は、船内はできますが、博物館内は資料保存と著作権保護のため控えるよう案内されています。船内での飲食もできません。
編集部の考え
日本丸は、83万人の署名で横浜に迎えられ、いまも人の手で帆を広げている船です。帆を広げる日にはマストに約80人が登り、船内は元船長たちが案内しています。