徳島県三好市山城町は2008年、世界妖怪協会(初代会長・水木しげる氏)から「後世に遺すべき怪遺産」として認定されました。瀬戸内海を挟んだ小豆島の土庄町には、全国から集まった「現代の妖怪」の作品を並べる妖怪美術館があります。2026年の夏、この2つの町は妖怪でつながりました。境目の危険を示す印だった妖怪が、今は人を呼ぶ側に回っているのはなぜでしょうか。
1. 三好市山城町、境に生まれた妖怪と「怪遺産」
山城町は、土佐(高知県)や伊予(愛媛県)との境に近い土地です。三好市の公式サイトは、電気や車のなかった時代、山の崖や川の深い淵、夜の暗闇といった危険な場所に子どもを近づかせないため、大人たちが妖怪の話を語り継いできたと説明しています。境目には盗賊や見知らぬ人の出入りも多く、妖怪は子どもを守る親の愛情から生まれた、とも書いています。

藤川谷沿いの「妖怪街道」には妖怪の石像や木像が並び、JR大歩危駅では児啼爺(こなきじじい)の像が年中無休で客を出迎え、見送っています。街道には、野鹿池山(のかのいけやま)の龍神と乙姫伝説や、川で死んだ人の怨霊と伝わるカワミサキなど、山や川にまつわる妖怪の言い伝えが並びます。
道の駅大歩危にある「妖怪屋敷と石の博物館」は、地元の人たちが山城町の妖怪伝説を残すために作った施設です。入館料は大人800円、小中学生350円、幼児無料です(妖怪屋敷と石の博物館はセット)。営業時間は9時から16時30分(最終入館)まで、休館日は3月から11月は無休、12月から2月は火曜(祝日の場合は翌日休)です。土讃線の大歩危駅からは、大歩危橋を渡って右へ徒歩約20分です。遠くから来て朝から妖怪屋敷を回るなら、前の晩の宿は楽天トラベルの大歩危駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
道の駅大歩危は2026年に開設30周年を迎え、9月から「妖怪と石の感謝祭」という記念イベントを続けています。セットになっている石の博物館では、火星から来たとされる隕石や、世界最古とされるアカスタ片麻岩なども展示しています。
2. 小豆島「迷路のまち」の妖怪美術館
小豆島の土庄町には「迷路のまち」と呼ばれる一角があります。運営するMeiPAM(メイパム)の公式サイトによると、海賊の侵入や戦乱に備えて路地を迷路のように入り組ませたまちだといいます。この迷路のまちで、アートプロジェクトMeiPAMが運営しているのが妖怪美術館です。迷路のまちには、妖怪が夜な夜な集まってくる「妖怪バー」もあります。
所在地は香川県小豆郡土庄町甲398。鑑賞の目安は、妖怪美術館だけで60分、隣接する小野川直樹美術館で30分、両方と迷路のまちを回る共通券なら90分です。チケットは当日窓口でも購入できます。小学生以下は保護者の同伴が必須で、子どもだけでは鑑賞できません。個人向けの基本の入館料は、今回の取材では確認できませんでした。
土庄港からは徒歩15分(エンジェルロードからは7分)、オリーブバスの土庄本町バス停から徒歩1分、車なら5分です。小豆島までは複数の航路があります。新岡山港からのフェリーは土庄港まで約110分(1日8便)、高松港からは約60分(1日15便)です。JR高松駅から高松港までは徒歩7分です。島に泊まるなら、宿は楽天トラベルの小豆島・直島のホテル・旅館の一覧PRで探せます。

3. POPUPストアと、YOKAI EXPOのつながり
2026年の夏、妖怪美術館は徳島の「道の駅大歩危」と組んで『妖怪POPUPストア』を開きました。妖怪美術館の公式note記事は「この夏、妖怪が県境を越えた」と伝えています。
2027年2月21日(日)10:00から16:00まで、香川県小豆郡土庄町の土庄町総合会館フレトピアホールで「YOKAI EXPO 2027」が開かれます。主催は一般社団法人小豆島観光協会と妖怪美術館、入場料は無料です。主催者発表によると、来場予定は4,000人。前身の「妖怪万博2025」はのべ3,500人、2026年の「YOKAI EXPO 2026」はのべ約4,000人を集めたといいます。小豆島の観光閑散期にあたる2月に開催されるイベントで、小豆島観光協会は2月を「鬼在月」と位置づける観光キャンペーンも合わせて開いています。会場では、妖怪をテーマにした絵画のコンテスト「妖怪画大賞」の最終審査や、コスプレイヤーによるファッションショー、会場からエンジェルロードまで歩く仮装パレード「小豆島百鬼夜行」も予定されています。
公式サイトの出展ブース一覧には、徳島県の「妖怪屋敷と石の博物館・三好市観光協会」と、香川県の「妖怪美術館」が並んでいます。2つの町の妖怪スポットが、同じイベントの出展枠に名を連ねている形です。
4. 境目に立つ妖怪は、宇治橋にも
橋や峠、村境に立つ妖怪の言い伝えは、日本各地にあります。京都府宇治市の宇治橋も、646年に架けられたと伝わる「日本三古橋」の一つです。今の橋は1996年に架け替えられたもので、川を渡る境目として古くから大切にされてきました。境目の妖怪をたどる記事は、ほかに小泉八雲 怪談の舞台にも書いています。妖怪を学問として扱った明治の哲学者、井上円了の『妖怪学』PRは Audible で聴けます(朗読は三好翼、4 時間 11 分、聴き放題の対象)。

5. 編集部の考え
山城町の妖怪屋敷も、小豆島の妖怪美術館も、元は土地の言い伝えを地元の人たちが残そうとした取り組みです。YOKAI EXPOの来場者は、2025年の3,500人から2026年は約4,000人に伸びています。2026年のPOPUPストアや出展ブースの並びのように、県境を越えて手を組む形になったことで、1つの町だけでは呼べなかった客を呼べるようになったのだと思います。
YOKAI EXPO 2027に行くなら、小豆島だけでなく道の駅大歩危の妖怪屋敷にも足を延ばせないか、旅程を考える価値があります。
まだ確認できていないこと
- 妖怪美術館の個人向け基本入館料
- 妖怪美術館の休館日(公式サイトのカレンダーで確認する形になっています)
行く前に、公式サイト(meipam.net)で最新の案内を確かめてください。