岩手県二戸市の金田一温泉に、座敷わらし「亀麿(かめまろ)」の言い伝えが残る宿があります。温泉旅館「緑風荘」で、奥座敷の「槐(えんじゅ)の間」に現れるとされ、敷地内の亀麿神社にも参拝できます。最寄り駅はIGRいわて銀河鉄道の金田一温泉駅です。
1. 早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 言い伝えの宿 | 緑風荘(岩手県二戸市金田一字長川41) |
| 座敷わらしの名 | 亀麿(かめまろ) |
| 現れるとされる場所 | 奥座敷「槐(えんじゅ)の間」 |
| 祀る神社 | 亀麿神社(緑風荘の中庭) |
| 日帰り入浴 | 10:30〜14:30最終受付(15:00退館)、大人500円・子供300円 |
| 最寄り駅 | IGRいわて銀河鉄道 金田一温泉駅 |
| 駅から緑風荘 | タクシーで5分(緑風荘の送迎あり) |
料金・時間は、緑風荘・二戸市の公式サイトで確かめた内容です。
2. 「侍の湯」と呼ばれた金田一温泉
金田一温泉は、二戸市によると寛永3年(1626)の発見と伝えられ、古くは南部藩の指定湯治場だったことから「侍の湯」と呼ばれてきました。現在は4つの源泉を使う7軒の入浴施設が温泉郷を形作っており、緑風荘はそのうちの1軒です。座敷わらしの言い伝えは、この温泉郷の宿の一つに伝わる話です。
3. 南北朝時代の亀麿と「末代まで家を守る」の言葉
緑風荘の公式サイトによると、由来は南北朝時代(約680年前)にさかのぼります。南朝の後醍醐天皇に仕えていた藤原朝臣藤房(万里小路藤房)の一行は、北朝の足利軍に追われてこの地にたどり着きました。道中に連れていた2人の子どものうち、6歳だった兄の亀麿が病に倒れ、「末代まで家を守り続ける」と言い残して亡くなったと伝えられています。それ以来、守り神「座敷わらし」として、奥座敷の槐の間に現れるようになったと緑風荘は説明しています。座敷わらしの姿を見たり不思議な体験をしたりした人には、大きな幸運(男性は出世、女性は玉の輿)が訪れると伝えられています。
4. 亀麿神社への参拝と、緑風荘の日帰り入浴
緑風荘の中庭には「亀麿神社」があり、座敷わらしとなった亀麿の霊を祀っています。どなたでも自由に参拝でき、手を合わせて日々の感謝や願い事を伝える形です。毎年、亀麿を慰霊し感謝を捧げる「亀麿神社大祭」も執り行われていますが、開催日は緑風荘のお知らせで確かめてください。
槐の間は、緑風荘が宿泊客に公開している共有スペースです。宿泊しなくても、日帰り入浴なら10:30〜14:30受付・15:00退館で、料金は大人500円・子供300円(2歳まで無料)です。
5. 宿泊予約とキャンセル料
緑風荘の宿泊予約は、公式サイトのインターネット予約か、電話(0195-27-2131、受付10:30〜20:00)で申し込みます。キャンセル料は、当日と宿泊しなかった場合が100%、前日が50%、2〜3日前が30%、7日前が20%です(プランによって異なる場合があります)。宿泊予約受付期間は2027年2月までで、それ以降の受付開始日は未定です。1泊の料金は公式サイトに載っておらず、予約のときに確かめます。二戸市観光ツーリズム協会の宿泊ガイドにも、部屋数(和洋室4室・和室6室、収容56名)はあっても料金は載っていません。2026年10月8日から23日までは青森国体の選手の貸し切り期間にあたり、一般の宿泊はできません。
6. 火災からの再建、2016年の営業再開
緑風荘は昭和25年に旅館としての営業を始め、地元出身の作家・三浦哲郎の小説『ユタとふしぎな仲間たち』のモデルとしても知られるようになりました。2009年(平成21年)10月4日、火災で母屋が全焼します。江戸時代から残っていた建物と、亀麿が現れたとされる槐の間も失われましたが、敷地の奥にある亀麿神社だけは火の手を逃れて無事でした。全国からの支援を受けて再建が進み、2016年(平成28年)5月14日、約6年半を経て営業を再開しました。
7. 柳田國男『遠野物語』の座敷わらしとの違い
座敷わらしは、岩手県や青森県南部(南部藩)を中心に伝わる、旧家に棲みつき富をもたらすとされる子どもの姿の神霊です。二戸市観光ツーリズム協会は、民俗学者・柳田國男の『遠野物語』の座敷わらしがよく知られていると紹介しています。同書の17話・18話には、遠野の旧家に現れる「ザシキワラシ」の話が収められています。18話は、ザシキワラシが女の子のこともあると述べ、山口の旧家について「山口孫左衛門という家には、童女の神二人いませり」と長く言い伝えられてきたと記しています。
17話には、土淵村の今淵勘十郎という人の家で、休暇で帰っていた娘が廊下でザシキワラシに出会って驚いたという話も収められています。金田一温泉の亀麿と、遠野・山口孫左衛門家や今淵勘十郎家の座敷わらしは、それぞれ別の家に伝わる話です。旧家を守る子どもの姿の神霊という性格が共通しているために、同じ「座敷わらし」の名で呼ばれています。
『遠野物語』は青空文庫で全文を読めます。紙で持つなら、Amazon の『遠野物語・山の人生』(岩波文庫)のページPRで版と目次を確かめられます。
8. 金田一温泉駅からの行き方と運賃
最寄り駅は、IGRいわて銀河鉄道の金田一温泉駅です。1909年(明治42年)11月25日に国鉄東北本線の駅として開業し、現在はIGRいわて銀河鉄道の最北端の駅で、隣の目時駅からは青い森鉄道になります。
新幹線が停まる二戸駅までは営業キロ7.6km、運賃は大人340円・小児170円です。盛岡駅までは営業キロ78.4km、運賃は大人2,090円・小児1,050円です。金田一温泉駅の時刻表では、盛岡方面が1日11本、八戸方面が1日11本運行しています。

緑風荘は金田一温泉駅までの送迎に対応しており、14時から17時台に到着する電車に合わせて迎えに来てくれます(前日までに到着時間を連絡)。チェックアウト時の送りは8:30〜10:00です。二戸駅までの送迎はありません。駅から緑風荘まではタクシーで5分です。
駅の待合室には、地域の人たちが寄贈した本が置かれています。駅の駐車場は、日貸しが200円/日(3台分、駅窓口で受付)、月極が3,000円/月(IGR定期券の利用者は2,000円/月)です。駅には4〜11月にレンタサイクル「へのクル」もあり、温泉郷まで自転車で回ることもできます。
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9. 編集部の考え
緑風荘を取り上げたのは、2009年の火災で亀麿が現れたとされる槐の間を失ったあと、全国からの支援で建て直し、2016年に座敷わらしの宿として営業を再開したからです。火の手を逃れたのは中庭の亀麿神社だけでした。建て直した宿にも槐の間があり、宿泊客に共有スペースとして開いています。神社は、日帰り入浴で来た人も参拝できます。