吉田のうどんの丼には、太くて硬い麺の上に茹でたキャベツがのっています。つゆは味噌と醤油を合わせたもので、店によって甘辛く煮た馬肉や油揚げ、かき揚げが加わります。富士吉田市とその周りで食べられてきたうどんで、文化庁に申請した一般財団法人ふじよしだ観光振興サービスの文には、麺は中心に行くほど硬く、「この麺をゆでると緩やかにねじれます」とあります。断面が正方形に近いのも、この麺の特徴です。
文化庁が、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する「100年フード」では、令和6年度に伝統の100年フード部門に入りました。
上吉田の登山客と下吉田の買い付け客
認定の文によると、上吉田地区は富士山信仰で栄え、明治時代には富士登山をする人に向けてうどん店が営業していました。下吉田地区は織物の町で、戦後は東京や大阪から買い付けに来る人にうどんを振る舞うための店がありました。
麺が硬くなった経緯は、観光振興サービスの特集にもう少し細かく出ています。昭和初期の富士吉田は繊維業が中心で、下吉田地区では半数以上の世帯が機を織っていました。織物の機械を動かすのは女性で、昼食の支度で作業を止めずに済むように、また織物を扱う手が荒れないように、「男性が昼食にうどんをつくるようになったといわれています」。腹持ちのよいうどんにしようと力いっぱい練ったので、歯ごたえのある麺が主流になったそうです。農林水産省の「うちの郷土料理」によると、富士山の北麓にある富士吉田市は標高700〜900mで、冷涼な気候と火山灰土のため昔から稲作に向かず、小麦や大麦、蕎麦、雑穀を作るうちに粉物の食文化が進みました。
披露宴の最後に出るうどん
富士吉田では、うどんはハレの日の食べ物でした。認定の文には「披露宴の最後には必ずうどんが出てきます」とあり、うどんが出てくることで、その披露宴の終わりを告げます。山梨県の「やまなしの食」のページも、冠婚葬祭の宴や儀式の最後にうどんを食べる習慣を挙げています。農林水産省の項では、長い食べ物なので長寿や末永い幸せを願い、盆や正月、結婚式などの祝いの席で食べる縁起物だった、という由来です。
吉田のうどんは、2007年に農林水産省が選んだ「農山漁村の郷土料理百選」の一つで、山梨県が次の世代に伝える郷土食176品目「やまなしの食」のうち、代表の47品目「特選やまなしの食」にも入っています。県は平成30年度に、山梨県立ひばりが丘高等学校うどん部をこの料理の「食の伝承マイスター」に認証しました。
店は昼だけのところが多い
ふじよしだ観光振興サービスの吉田のうどんマップに載る店は40店舗(2026年現在)です。マップの全店で食べ、うどんと店の外観の写真を撮って道の駅富士吉田の観光案内所に出すと「吉田のうどんマイスター」に認定されます。2026年2月時点で298人がなっていて、市内在住はそのうち1割ほどで、県外から通った人が多数です。
観光振興サービスの「店主の語り」の一覧には、29軒の住所と営業時間が出ています。営業は昼だけの店が多く、下吉田のみうらうどんは10時から14時で水曜休み、桜井うどんは10時から14時30分で日曜休み、上吉田東の白須うどんは11時から15時で売り切れ次第終了、日曜休みです。富士山駅の駅ビル(Qスタ)の地下1階にはとがわがあり、10時から19時まで開いていて木曜休みです。道の駅富士吉田でも10時から16時まで食べられ、年中無休です。麺がなくなり次第閉める店が多いので、昼の早い時間に着くほうが選べる店が多くなります。麺’ズ冨士山は2026年6月22日から当面の間休業と一覧にあります。
家で食べるなら
うどんそのものを店が発送しているかは、観光振興サービスの公式に記述が見つからず、未確認です。公式の特集が挙げる関連食品は、道の駅富士吉田などで売る吉田のうどんカップ麺(問い合わせ0555-21-1033)、山梨県内のセブンイレブンで売るコンビニカップ麺、山下製麺・麺’ズ冨士山・めんの岩田食品・丸新製麺・田辺製麺の麺で、製麺所の麺は自店と道の駅富士吉田で買えます。つゆだけなら「吉田のうどんだしMAX」があり、ひばりが丘高校うどん部の監修で、販売は道の駅富士吉田ほかです。
取り寄せるなら、楽天市場で吉田のうどんを探すPRとAmazonの検索結果PRを並べて見ると、吉田のうどんの名前で売られている麺とつゆが出てきます。
自分で打つなら、農林水産省「うちの郷土料理」の吉田のうどんの項に8人分のレシピがあります。中力粉800gに塩水を入れてまとめ、袋に入れて1時間ほどねかせてから、袋のまま足で踏んでこね、5mmの厚さにのばして5mm幅に切り、12分ほど茹でます。つゆは煮干しとカツオの出汁に味噌と醤油、具は蒸したキャベツです。
富士山駅・月江寺駅・下吉田駅
店の多い上吉田と下吉田には、富士山麓電気鉄道の富士急行線の駅が3つ続きます。大月側から下吉田駅(標高753m)、月江寺駅(776m)、富士山駅(809m)の順です。下吉田駅は1929年6月19日の開業で、2009年7月18日に工業デザイナーの水戸岡鋭治さんのデザインで駅舎が生まれ変わりました。月江寺駅の名前は月江寺という寺から取られていて、周りには昭和の町を思わせる商店街があります。富士山駅は1929年に富士吉田駅として開き、2011年7月1日に今の名前になりました。富士急行線の列車はこの駅で進行方向を変えます。
大月駅からの普通運賃は、下吉田駅と月江寺駅まで980円、富士山駅まで1,040円です(営業キロは富士山駅まで23.6km)。新宿からはJRと富士急行線の直通特急「富士回遊」が毎日4往復あり、2026年3月14日以降の時刻では、平日の富士回遊3号が新宿7時30分発、下吉田駅9時13分、富士山駅9時23分です。新宿駅から下吉田駅までの合計は4,010円(乗車券2,390円、特急券1,620円)です。大月駅から富士急行線内だけ富士回遊に乗るときの特急料金は、下吉田・富士山まで600円です。観光振興サービスのアクセスのページには、都心から高速バスか電車で約1.5時間とあります。