横浜市歴史博物館の館長、佐藤信さんは、館のサイトに載せたあいさつを、自分と館との関係は「学生時代に港北ニュータウンの大塚遺跡の発掘調査に参加した経験にはじまります」という一文から書き起こしています。その大塚遺跡は博物館のすぐ隣にあり、いまは弥生時代のムラを復元した遺跡公園として、無料で歩けます。
博物館は1995年1月に開館し、原始から開港期までを中心に、約3万年の市域の歴史を扱っています。常設展示観覧料は一般400円で、毎週土曜日は小学生・中学生・高校生が無料です。最寄りは横浜市営地下鉄のセンター北駅で、徒歩5分です。
館の基本理念
館が基本理念に掲げているのは「横浜に生きた人々の生活の歴史」です。館はこの理念に沿って調査研究や展示を行い、講座や「市民参加の体験学習」も続けています。
常設展示室は、原始I・原始II・古代・中世・近世・近現代の6つです。どの室も中央に、その時代の横浜で人が暮らし、働いた場所の大型模型を置いています。原始Iは都筑区の南堀貝塚、原始IIは隣の大塚・歳勝土遺跡。古代は青葉区の都筑郡衙、中世は鎌倉の外港だった金沢区の六浦湊、近世は神奈川宿の茶屋「桜屋」です。近現代は明治後期の伊勢佐木町にあった勧工場「横濱館」で、さまざまな商品を扱う店が一つの建物に集まった場所でした。原始Iには、ナウマンゾウの頭骸骨やヤベオオツノジカの角も並んでいます。
展示の解説は、館の公式解説アプリでも読めます。日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・ドイツ語に対応していますが、映像は日本語版だけです。休憩と学習の場所「スタディサロン」では、横浜の歴史のクイズと文化財のビデオを自分のスマートフォンで見られます。
館長が掘った隣の公園の遺跡
佐藤館長は日本古代史が専門で、文化財研究所や文化庁で文化財の調査と保護に携わったあと、大学で長く教えてきた人です。あいさつには、館を横浜の歴史文化や伝統を「多くの人々が理解・共有する場」にしたいとあります。その学生時代の発掘の現場が、いまの遺跡公園です。
大塚遺跡は、今から約2200年前の弥生時代のムラの跡です。外からの敵を防ぐ濠が周りにめぐらされ、当時は100人くらいが暮らしていたようだと館は説明しています。公園には竪穴住居7棟のほか、高床式倉庫や濠に架かる木橋が復元されています。



その隣の歳勝土遺跡は、大塚遺跡に住んだ人々の墓地です。低い四角形の盛り土を溝で囲んだ方形周溝墓で、発掘当時の状態や木棺が復元してあります。ムラと墓地が一体で見つかったことが、この遺跡が国史跡に指定された理由だと館は書いています。

公園は無料で、開園は9:00〜17:00です(大塚遺跡を除く部分は24時間)。大塚遺跡は博物館と同じ日に休みます。園内の工房は土器作りなどのワークショップの会場で、2026年度は「まがたま・あじろ編み作り」の催しが案内されています。江戸時代に牛久保村の名主や組頭を務めた長沢家の住宅を移した都筑民家園もあります。
発掘の話は、夏の企画展でも続いています。考古担当の橋口豊学芸員は、副題に「横浜発掘物語」と付いた企画展「君も今日から考古学者!」を2016年度から何度も手がけてきました。館は遺跡公園と常設展示の解説にボランティアのガイドを置いていて、令和9年度のボランティアも募集しています。
企画展「横浜絵の深層」
いま企画展示室で開かれているのは、企画展「横浜絵の深層」(2026年9月5日〜10月18日)です。展示の案内は「「横浜絵」という言葉をご存知でしょうか」と問いかけるところから始まります。幕末から明治初めに五姓田派の画家たちが描いた和洋融合の肖像画や風俗画から、明治の水彩画、輸出用の工芸品の下絵までをたどり、「知られざる作家や作品も含めてとりあげ」る展示だと館は説明しています。横浜の画家・笠木治郎吉の、初めて出品される作品も多く並びます。図録(2,200円)の総論は、美術担当の吉井大門学芸員が書いています。
| 常設展 | 企画展 | 企画展と常設展の共通 | |
|---|---|---|---|
| 一般 | 400円 | 1,000円 | 1,200円 |
| 高校生・大学生 | 200円 | 700円 | 800円 |
| 小学生・中学生、横浜市内在住65歳以上 | 100円 | 500円 | 550円 |
毎週土曜日は、どれも小・中・高校生が無料です。20人以上の団体には団体料金があります。会期中は10月12日(月・祝)が開館、翌10月13日(火)が休館です。次の特別展「南武蔵の平安仏」は2026年10月31日(土)〜12月13日(日)で、9:00〜17:00(券売は16:30まで)、観覧料は横浜絵の深層展と同じ、一般1,000円(常設展との共通券は1,200円)です。休館日は月曜日(11月23日は開館)と11月24日(火)で、講演会とギャラリートークも催しの一覧に載っています。
開館日と館内のきまり
開館は9:00〜17:00(券売は16:30まで)、休館日は月曜日(祝日の場合は翌平日)と年末年始です。
車椅子4台、ベビーカー1台(生後1か月〜4歳、18kgまで)、シルバーカー1台を無料で貸し出しています。補助犬と一緒に入館でき、障害者手帳を持つ人と介護者は無料です。窓口で手帳か「ミライロID」の画面を見せます。横浜市内在住の65歳以上の人は「濱ともカード」など年齢を示せるものを持っていきます。支払いにはクレジットカードと交通系ICカードが使えます。
常設展示室の資料は、フラッシュをたかなければ撮影できます。その訳は「強い光は資料を痛めてしまいます」とあります。資料や模型には触れず、大きな荷物はコイン式ロッカー(コインは戻ります)へ入れます。遺跡公園では、復元住居に登ったり茅を抜いたりしないよう呼びかけています。
一般の団体でボランティアの展示解説を頼むときは、希望日の1週間前までに電話(045-912-7777)で伝えます。
センター北駅からの行き方
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンラインのセンター北駅から、博物館まで徒歩5分、遺跡公園の工房まで徒歩7分です。バスなら東急東横線綱島駅か田園都市線江田駅から東急バスに乗り、「横浜市歴史博物館前」か「歴博通り中央」で降りて徒歩3分です。
遠くから来て開館から回るなら、宿は楽天トラベルのセンター北駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。センター南駅の近くの宿も同じ一覧に出ます。
車は第三京浜の都筑ICから3kmです。博物館の駐車場は19台、30分100円で、高さ2.0mまで。遺跡公園には駐車場がないので、博物館の駐車場を使います。駐輪場は無料です。
編集部の考え
展示室の模型と隣の遺跡が、同じムラの話をしています。原始IIの中央にある大塚・歳勝土遺跡の模型を見て外へ出れば、その竪穴住居と濠と墓地を復元した公園があります。館はこの公園を「博物館の野外施設」と呼び、館内の展示と組み合わせて使っています。館長が学生のころ掘った土地を、いまは誰でも無料で歩けます。