半年から1年以上も糠に漬けた鯖を、焼かずに薄く切って食べる方法があります。若狭のへしこは焼いて食べるのが基本ですが、美浜の組合は二枚におろして中骨の無い側を生食用にし、小浜の田村長は酢醤油で食べたり大根にはさんだりする食べ方を挙げています。
焼くのが基本で生でも食べる
美浜の組合の焼き方では、頭を切り落として3cm前後の切り身にし、米糠が焦げやすいので火を加減しながら、表面が軽く焦げる程度に焼きます。糠は少し付いているほうが、焼いたときに香ばしくなります。焼いた身をご飯にのせてお茶をかければ茶漬けになり、小浜の観光協会は酒の肴のほか、アンチョビのようにパスタやピザに使う例も挙げています。落とした糠はゴマと乾煎りすると、ふりかけになります。
美浜の組合のさばき方では、二枚におろしたうち頭の付いた身には中骨が残るので、こちらを焼く用に回します。生で食べるときは腹骨を包丁でそぎ、糠を落として水でさっと洗い、好みで薄皮をはがして、食べやすい大きさに切ります。田村長は、水洗いしてから切り、お酒をふって食べる方法も添えています。小浜の観光協会によると、最近は薄造りを刺身として出す飲食店もあります。
塩漬けのあと、糠に漬ける
へしこは江戸時代の中頃にはすでにつくられはじめていたといわれる若狭地方の魚のぬか漬けで、令和3年度に文化庁の100年フードの伝統の部門に選ばれました。
使う魚は鯖が多く、イワシやイカ、フグなどでもつくられます。美浜の組合の頁にある漬け方は二段です。鯖を塩に漬けたときに出る液を「シエ」と呼び、これに米糠と、しょうゆ・みりん・酒粕・唐辛子などを合わせて本漬けします。
美浜町の観光サイトによると、冬の美浜町は荒波や積雪の日に漁に出られないこともあり、へしこはそうしたときのたんぱく源として昔から家庭でつくられてきました。100年フードの申請の文には「魚を食べないとご飯を食べた気のしない人が多い」とあり、漁のない冬などに焼いて食べてきたと続きます。
半年で出すか、1年以上寝かせるか
寝かせる長さと漬け方は、作り手によって違います。100年フードの申請の文では、春に鯖がとれたときに漬け、秋の終わり頃に取り出して食べます。小浜の海産物店の田村長は、鯖を塩に2〜3週間漬けてから、糠に唐辛子などを加えた糠床に押し込んで50kg以上の重石をのせ、梅雨と夏を越して秋口まで半年寝かせます。
美浜の組合によると、美浜のへしこは樽の中で約1年寝かせます。小浜市の内外海(うちとみ)地区には、鯖は国産、食品添加物は使わない、1年以上漬け込む、という基準を守った「内外海本づくりへしこ」があります。
内外海の田烏(たがらす)でへしこをつくる角野さんは、毎年1月上旬頃に仕込み、翌年の2月頃に仕上げます。樽ごとに熟成の進み方が違うので、さらに3か月以上寝かせてから出すものも多いそうです。糠漬けに使うのは糠と唐辛子だけで、唐辛子は主に虫よけとして表面へ振るものです。観光協会の取材に、角野さんは、人工的な調味料に頼らず、へしこのおいしさをつくりだすのは「純粋な糠の力による発酵と熟成だけ」だと話しています。
美浜の女将たちのへしこ
美浜へしこ組合によると、美浜町では家ごとに漬けていたへしこを、町内の旅館や民宿の女将たちが中心になって町の名物にしてきました。保存食のへしこは本来かなり塩辛いもので、女将たちは気軽に食べてもらえるよう味を改めてきました。
2024年2月の美浜町の観光サイトの記事では、丹生(にゅう)の丹生酵房へしこ丸で、新谷旅館の新谷富子さんら女将4人が、漁船をしまう舟小屋でへしこを仕込んでいました。新谷さんは「丹生のへしこは舟小屋で仕込むのが一番の特徴。」と話しています。同じ記事では、へしこ丸のへしこは毎年10月〜翌6月頃に売られ、全国へ発送もしていました。組合の商品紹介には、へしこ丸(美浜町丹生47-10、電話0770-39-1137)をはじめ、組合員9事業者の住所と電話番号が載っています。店で買うときは電話で確かめてから向かいます。丹生へは、JR美浜駅から国道27号線を東へ車で向かいます。
小浜で買って食べる
小浜の観光協会のへしこ特集(2026年5月26日更新)によると、道の駅若狭おばま(小浜市和久里24-45-2、JR小浜駅から車で5分)は、へしこを常時数種類置いていて、内外海本づくりへしこもあり、半身や切り身でも売っています。営業は9:00〜18:00で、冬は時間が変わります。
同じ特集は、店で食べる先として、お食事処 濱の四季(小浜市川崎3-5)の内外海本づくりへしこ定食を挙げています。店の営業は11:00〜14:30(ラストオーダー14:00)、休みは第3木曜(祝祭日は営業)と年末年始です。定食があるかどうかは、出かける前に店(電話0770-53-0141)で確かめてください。
田村長の本店(小浜市小浜広峰14)は、日曜・祝日以外は9時〜17時、日曜・祝日は9時〜16時に開いています。休みは水曜と年末年始(12月28日〜1月7日)で、臨時休業もあります。
角野さんの「かどのさん家のへしこ体験」では、樽からへしこを取り出す樽上げを体験できます。体験料は1人4,000円で、見学・試食・お土産が付きます(2026年2月現在の価格)。要予約で、時間は10:00〜16:00です。体験の内容によって場所が変わると観光協会の案内にあるので、申し込みの電話(090-2124-2636)か公式サイトで確かめます。体験ができる時期は未確認です。
小浜駅前の若狭おばま観光案内所(小浜市駅前町6-1、電話0770-52-3844)は、9:00〜18:00、冬期は9:00〜17:00に開いています。
取り寄せる
田村長のオンラインショップでは、「鯖へしこ漬 国産(半身)」が2,484円(税込)です。内容は半身1枚、冷蔵で賞味期限150日、原材料は真さば(国産)・糠・食塩・粕・唐辛子で、クール便で届きます。丸ごとの「鯖へしこ漬 国産 1尾」は4,320円(税込)です。「鯖へしこ漬 ノルウェー産 (半身)」(1,404円、税込)もあり、田村長は、日本海の鯖が少なくなったことを挙げて、脂ののったノルウェー産の鯖でも漬けています。こちらも半身1枚で、賞味期限は冷蔵で150日、原材料の鯖がノルウェー産になります。送料は10,800円以上の注文で無料、代金引換の手数料は2026年5月1日の注文分から一律330円です。価格はいずれも記事の日付の時点の公式サイトの表示です。
角野さんのへしこは公式サイトで買え、切ってあるセットもあります。丸ごとや半身は電話(0770-54-3006)でも注文を受けています。美浜では、組合の商品紹介に日向へしこ工房 勘兵衛の楽天市場の店が載っているように、通販の先を持つ作り手もいます。保存は、美浜の組合によると、なるべく密封して冷蔵庫に入れ、糠を付けたまま置くとより長持ちします。
作り手を決めずに品を見比べるなら、へしこを楽天市場で探すPRで、へしこの名前で売られている品の一覧を見られます。