いわきでウニを獲るのは、海女ではなく海士です。文化庁の100年フードの認定の文はいわき市漁業協同組合が書いたもので、そこに「いわき市では海女(女性)ではなく海士(男性)が潜水し、雲丹を漁獲します」とあります。海士は波や潮の状況を見て、当日の朝に漁へ出るかどうかを決めます。獲れた雲丹はその日のうちに、各家庭にある作業場でうにの貝焼に加工され、出荷されていました。
うにの貝焼は令和4年度に、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を文化庁が認める100年フードの、伝統の100年フード部門で認定されています。
ホッキ貝の殻に手で盛る
加工は全て手作業です。認定の文には「ホッキ貝の殻に綺麗に盛り付けるには熟練の技が必要となります」とあり、調味料や保存料は一切使いません。
うにの貝焼1個には、ウニ約4〜5個を使います。ウニの殻から身を丁寧に取り出してホッキ貝の上に盛り付け、小石の上で蒸し焼きにします。いわき市の水産振興課が運営する、いわき常磐もの公式サイトのお知らせにある作り方です。
ウニの種類はキタムラサキウニです。器になるホッキ貝は正式にはウバガイといい、福島県は2月から5月を禁漁期間に定めて資源を管理しています。その貝殻が、うにの貝焼の器にもなります。
市の統計にも、この形のまま出てきます。令和6年度の「いわき市の水産」では、キタムラサキウニは水揚げ機関に貝焼きの状態で持ち込まれるため、貝焼き1個あたりを殻付ウニ250gとして数量に換算しています。
塩漬けの献上品と藩政末期
江戸時代、磐城産の雲丹は将軍家献上品として取り扱われていました。認定の文では、日持ちさせるために塩漬けにして献上されていたということで、今のうにの貝焼の形になったのは藩政末期と言われています。
いわき常磐もの公式サイトの販売店一覧には、明治時代頃に、生では日持ちしないウニを保存するために作られたのが始まり、とあります。
5月1日の解禁から8月上旬まで
2026年のウニ漁は5月1日(金)に解禁され、小名浜の下神白採鮑組合が今シーズン初の水揚げをしました。キタムラサキウニ約40kgが小名浜の加工施設でうにの貝焼92個になり、沼之内魚市場で入札にかけられています。このお知らせには、漁協関係者の「いわきの郷土料理の美味しさが地元だけではなく全国に広まってほしい」という言葉が載っています。
漁は夏までです。2025年のお知らせではウニ漁は8月上旬まで続く予定で、2019年のお知らせでは操業日が5月から8月上旬の毎週3回、漁場は市内11浜でした。
認定の文で各家庭の作業場だった加工の場所は、近年のお知らせでは小名浜の加工施設になっています。2018年5月のお知らせには、解禁の初日に薄磯採鮑組合の組合員が朝6時ごろから素潜りで漁をし、下神白にある加工場で66個に加工して、沼之内魚市場で入札にかけたとあります。水揚げの当日の午後には、入荷があれば市内の魚屋で買えるようになった、とも書かれています。
震災のあと、いわき市の沿岸漁業は試験操業が続きました。2018年のお知らせでは、ウニは試験操業のため生ウニでの出荷が制限され、うにの貝焼に加工して出荷されています。2019年のお知らせでも、ウニは貝焼きに加工してから出荷していました。
いわき市内で買える店
いわき常磐もの公式サイトがウニ貝焼きの取扱店に挙げているのは、次の店です。営業時間は同サイトに載っているものです。
- 株式会社アザスコーポレーション: 昭和49年創業のかに専門店。11時から21時。
- 株式会社おのざき: 8時30分から19時。
- 株式会社丸市屋 四町目本店: 8時から17時15分。
- 株式会社大川魚店: 平日は9時30分から18時30分、日曜・祝日は18時まで。
いわき観光まちづくりビューローのいわき市観光サイトにも、買う店を探す区分にうに貝焼きがあります。この区分に入っているのは、小名浜のまるふと直売店、おのざき鮮場やっちゃば小名浜店(小名浜愛宕町5-1)、小名浜あおいちです。
小名浜の売り場と産地の表示
まるふと直売店と小名浜あおいちは、道の駅いわき・ら・ら・ミュウ(小名浜字辰巳町43-1)の1階にあります。1階の海鮮市場通りは9時から18時で、まるふと直売店は正面中央入口から入ってすぐ左側、黄色が目印の店です。
まるふと直売店の案内では、いわき名物のうに貝焼きの産地が、いわき産・三陸産・茨城県産・チリ産と並んでいます。いわきの海士が獲ったウニの貝焼を買うなら、売り場で産地を確かめることになります。いわきのウニ漁は5月から8月上旬なので、漁期の外にいわき産が店に並ぶかどうかは未確認です。いわき産の値段も、取扱店と売り場の公式のページに記載がなく未確認です。
まるふと直売店のオンラインショップにあるのはチリ産うに貝焼で、50gの1個が税込1,200円です。同店は、ネット通販で紹介している商品以外の発送も、問い合わせで受けています。
いわき・ら・ら・ミュウの全館休館日は、2026年は10月14日(水)、11月11日(水)、12月9日(水)です。
泉駅からバスで小名浜へ
いわき・ら・ら・ミュウへは、JR常磐線の泉駅からバスに乗ります。館の案内では、泉駅前の1番乗り場から小名浜車庫行きで約15分です。館のバス時刻の案内(2026年4月現在)では、降りるバス停はイオンモールいわき小名浜で、料金は320円。いわき駅前からは6番乗り場の鹿島SC経由小名浜行きで約45分、料金は760円です。湯本駅前のバス停からは約30分、590円です。
品川駅からは、特急で泉駅まで2時間です。泉駅には、常磐線のいわき・原ノ町方面と水戸・土浦方面の列車が止まります。おのざき鮮場やっちゃば小名浜店も、JR泉駅からバスで約15分です。
編集部の考え
いわきの海士は、潜って獲った雲丹をその日のうちにホッキ貝の殻に手で盛り、調味料も保存料も使わずにうにの貝焼にしてきました。漁に出るかどうかは波と潮を見て当日の朝に決め、加工の場所は各家庭にある作業場でした。いわき市の水産の統計は、キタムラサキウニが水揚げ機関に貝焼きの状態で持ち込まれるため、貝焼き1個を殻付ウニ250gに換算して数えています。2026年5月1日の解禁日には、下神白採鮑組合が水揚げした約40kgが、92個の貝焼になって沼之内魚市場の入札にかけられました。