静岡おでんの鍋では、具が串に刺さったまま真っ黒なつゆに立っています。黒はんぺん、牛スジ、豚モツ、コンニャク、大根、卵。食べる人は好きな串を抜いて、青海苔と魚のだし粉をかけます。静岡市では、この食べ方を居酒屋だけでなく駄菓子屋でもしてきました。
文化庁が、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する「100年フード」の令和3年度の認定で、静岡おでん(しぞーかおでん)は近代の100年フード部門に入り、有識者特別賞を受けました。申請したのは静岡おでんの会です。
真っ黒なつゆと優しい味
認定の文は会が書いたもので、つゆの話から入ります。戦後の混乱期に、牛スジや豚モツという安い材料を煮込んだことで広まった食べ物で、「醤油ベースのスープは見た目と違って優しい味です」。会の歴史のページには、濃い口醤油を使って牛すじでだしをとり、毎日つぎ足している、とあります。青のりの割合は店ごとに違い、だし粉はサバやイワシの削り節です。
「静岡おでんの5か条」という言い方もあります。静岡市観光ナビが挙げるのは、黒はんぺんが入っている、黒いスープ、串に刺してある、青のりとだし粉をかける、駄菓子屋にもある、の5つです。
黒はんぺんの原料と形
黒はんぺんは、イワシやサバなどの青魚を丸ごとすり身にして茹で上げた静岡の練り製品です。焼津市のまちかどフォトニュースによると、形は半円形でアルファベットのDに似ていて、白はんぺんより薄く、歯ごたえがあります。白はんぺんはスケトウダラなどのすり身に卵白ややまいもを加えたもので、原料から違います。黒はんぺんはそのまま食べても、焼いても、フライにしても食べられ、冷蔵庫に常備している家庭も少なくない、と同じページにあります。
会の歴史のページには、黒はんぺんは日持ちしないため消費の9割が静岡県内だ、とあります。焼津市のページも、静岡県外では手に入りにくいと書いています。静岡市で「はんぺん」といえば白ではなく黒で、「はんべ」とも呼びます。会のトップページによると、静岡の人にとって静岡おでんはただの「おでん」で、黒はんぺんも少し前まではただの「はんべー」でした。よそで知られるようになってから、あえて「静岡おでん」「黒はんぺん」と呼ぶようになったそうです。焼津市のページは、焼津の小川港で水揚げした魚を使った黒はんぺんを勧めていて、大人は酒と、子どもはごはんのおかずやおやつとして食べる、と続けます。
駄菓子屋で串の本数で払う
会が文化庁に出した文は、「駄菓子屋さんで串の本数でお会計した経験は多くの市民にとって懐かしい思い出です」と結ばれています。会の歴史のページは、その仕組みをもう少し細かく書いています。串の色や形で値段が違い、鍋から好きな具を選んで、食べ終わってから串で会計をしてもらう。小遣いの中からおやつに買い、文具屋や海の家にもあった。静岡おでんは「居酒屋系」と「駄菓子屋系」に大きく分かれる、というのも会の言い方です。駄菓子屋の鍋には大人も集まり、世代を超えた付き合いが生まれていたことを、会は静岡おでんの特徴に挙げています。
静岡市観光ナビも、市でおでんの店として一番多かったのは子どもが集まる駄菓子屋だった、と書いています。今でも駄菓子屋やパン屋、おにぎり屋がおでんを売っていて、寒い季節に限らず夏にも食べるそうです。
焼津や由比の港と練り製品
認定の文では、静岡おでんは大正時代から静岡県中部で出されてきた食文化です。現在の静岡市の周りには焼津や由比といった漁港があり、黒はんぺんに代表される練り製品の製造が盛んだったことで、おでんが独自の発展をとげたと書かれています。会の歴史のページは、昭和30年代初頭には静岡市の目抜き通りに100を越える屋台が並んでいたようだ、と伝聞の形で書き、その後の都市開発で屋台は姿を消したが、青葉おでん街と青葉横丁がおでん街として残った、と続けます。会のトップページは、戦後の静岡市民との関わりをこう書きます。「戦後50年以上にわたり、静岡市民に愛され続け、くらしの中に確実に根付いてきた」。
青葉おでん街と青葉横丁
青葉おでん街と青葉横丁は、静岡市葵区常磐町にあります。屋台街から発展したおでん街で、どの店もおでんの専門店だと静岡市観光ナビにあります。JR静岡駅から徒歩15分。営業時間と定休日は店ごとに違うので、行く前に店に直接確かめるよう観光ナビは案内しています。同じ観光ナビの特集には、静岡茶で割った焼酎を静岡では「静岡割り」と呼ぶこと、おでんのある店にはフライもあって定番は黒はんぺんとじゃがいもだということも書かれています。
同じ観光ナビは、静岡浅間神社の参道の浅間通りにある「静岡おでん おがわ」を、昔ながらの駄菓子屋スタイルのおでん屋として載せています。静岡おでんの会が出している「しぞ~かおでんMAP」は、静岡市内で静岡おでんを食べられる店を集めたものですが、2021年3月の情報で、営業時間や定休日は各店に確かめるようにとあります。
会は、かつて屋台が連なった青葉シンボルロードでおでん祭を開いています。2026年は2月27日(金)から3月1日(日)の3日間でした。次の日程は会のトップページで確かめてください。
静岡駅までと、取り寄せ
静岡駅は東海道新幹線と東海道本線の駅で、所在地は静岡市葵区黒金町です。JR東海の駅案内では、きっぷうりばは5:30〜22:20、接続する鉄道に静岡鉄道があります。青葉おでん街へは駅から歩いて15分です。
行く前に品を見ておくなら、楽天市場で静岡おでんを探すPRとAmazonの検索結果PRで、つゆと串の具のセットや黒はんぺんの売られ方を一覧で見られます。
編集部の考え
静岡おでんの会が文化庁に出した認定の文は、つゆと具の説明のあと、駄菓子屋で串の本数で払った記憶で終わっています。令和3年度の有識者特別賞を受けたのは、その文です。会の歴史のページも、串の色と形で違う値段、小遣いで買ったおやつ、文具屋や海の家の鍋、の順に書いています。