松本市の旧開智学校で石積みに見える校舎の四隅は、石ではなく、漆喰に灰色を付けて塗り重ねたものです。明治9年(1876年)に完成したこの校舎は、松本出身の大工棟梁・立石清重が設計と施工を担い、正面の車寄せに龍の彫刻と天使の額を掲げました。2019年には近代学校建築として初めて国宝になりました。
校舎の中には今も入れます。窓口で買う観覧料は一般700円で、1階と2階の両方を見て回り、2階へは階段で上がります。
龍と天使の車寄せを建てた大工・立石清重
二層の車寄せは、正面に龍の彫刻、上の露台に瑞雲の彫刻を飾り、その上の唐破風屋根に天使の額を掲げ、さらに上に八角形の塔屋を載せています。館の国宝指定の説明では、西洋の天使と日本の龍を並べたこの意匠はここにしか見られないともいわれます。洋風に見える所の多くは、日本の職人が使い慣れた漆喰と塗りの技で作られていて、四隅の石積み模様のほかに、木の柱にもペンキでレンガ模様を描いてあります。立石はこうした仕上げを石目塗、煉瓦塗と呼んでいました。

立石は江戸時代から大工として働いてきた人で、設計の前に東京や横浜へ行き、洋風建築を見学しています。
料金と電子チケット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開館時間 | 9:00〜17:00(入館は16:30まで) |
| 休館日 | 3〜11月は第3火曜日、12〜2月は毎週火曜日(どちらも休日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日 |
| 観覧料(窓口) | 一般(高校生相当以上)700円、小・中学生300円、小学生未満は無料 |
| 観覧料(電子チケットの単独券) | 一般600円、小・中学生300円 |
一般700円は、旧開智学校の窓口で買うときの値段です。電子チケットで先に買うと、旧開智学校の単独券は一般600円になります。電子チケットには、松本城との共通券(一般1,600円・小中学生600円)と、松本城・旧開智学校・市立博物館・美術館の4館共通券(一般2,600円)もあります。共通券で選ぶ時刻は、松本城に入る時刻です。電子チケットはどれもオンラインだけで売っていて、券売所では買えません。
障がい者手帳を見せると、本人と介護者1名が無料になります。
校舎の中はスリッパで、2階へは階段で
旧開智学校に時間指定はなく、開館日の9:00〜16:30のあいだなら、窓口で券を確かめてもらって入れます。一度に入れるのは1団体100人程度までで、状況によって入場制限をする場合があります。
校舎内はスリッパに履き替えて見学し、入口に靴箱があります。飲食はできず、自動販売機は庭園にあります。1階と2階のあいだは階段で行き来します。館の案内には「創建当初の姿を保持しているため、階段のみでの見学となります」とあります。フラッシュ撮影と、展示ケースの中の資料の撮影は控えるよう求められています。
中は廊下が木、壁が漆喰、天井が紙で、伝統の材料で洋風に仕上げてあります。中廊下に沿って教室や講堂、教員控所が並ぶ造りです。館は明治から受け継いできた教育資料を約11万点持ち、校舎の中では、学校日誌や教案、児童の図画、各時代の教科書を含む学校資料と、立石が作った新築仕様帳や平面図などの建築資料を展示しています。屋根の上の塔屋にはふだんは入れません。

松本駅からの行き方
JR松本駅から歩くと25分です。バスなら、タウンスニーカー北コースの旧開智学校停留所から徒歩1分、松本駅から出る北市内線の蟻ヶ崎高校前停留所から徒歩5分です。

車は長野道の松本ICから約15分です。駐車場は20台分ほどしかなく、料金は無料ですが、校舎の見学のほかには使えません。館は公共交通機関で来るよう頼んでいます。
近代学校建築で初めての国宝
校舎は昭和36年(1961年)に重要文化財になり、2019年9月30日に国宝に指定されました。館の説明では、近代建築の国宝としては3件目、長野県内では10件目にあたります。文化遺産オンラインの解説は、この校舎を「近代教育の黎明を象徴する最初期の擬洋風学校建築」と位置づけています。館の国宝指定の説明によれば、校舎は建築当初から「建築の出来ハ目今(ただいま)日本第一等」と評されていました。
館の説明では、評価された点の一つが学校としての造りです。明治初期の小学校の校舎は7割近くが寺院や空き家の転用だったといわれるなかで、この校舎は中廊下で各教室を独立させ、全部で32部屋あった教室を当時としては広めの3間×4間の大きさにそろえました。
館の沿革の説明では、開智学校は明治6年(1873年)に廃寺の全久院の建物を仮の校舎にして開校し、明治9年4月にその跡地に新しい校舎が建ちました。工事には当時のお金で1万1千余円がかかり、そのおよそ7割を地域の人々が負担しています。校舎は昭和38年(1963年)3月まで、90年近く小学校として使われました。もとは女鳥羽川のほとりにあり、同じ沿革の説明によれば、川幅を広げる工事のため移転修理工事を経て今の場所へ移り、1965年4月から教育博物館になっています。2026年に創建150周年を迎えました。
立石家の建築図面を並べる特別展
1階特別展示室ほかでは、創建150周年記念の特別展「立石家伝来の建築図面」を2026年11月23日まで開いています。国宝の附に指定された校舎の図面7点をすべて並べ、立石の自宅で新しく見つかった板図を初めて公開しています。特別展の観覧料は一般700円・小中学生300円で、窓口の通常の観覧料と同じ額です。会期中の休館日は11月17日です。
無料のボランティアガイドは10名以上から頼め、2週間前までに申込書をFAXで送ります。
隣の旧司祭館と高橋家住宅は無料
校舎の隣の旧司祭館は、明治22年(1889年)にフランス人のクレマン神父が建てた西洋館です。観覧は無料で、開館時間(9:00〜17:00、入館は16:30まで)と休館日は旧開智学校と同じです。近くの武家住宅、高橋家住宅も無料で、開くのは3〜11月の土・日・祝日と、12〜2月の日曜日の9:00〜17:00です(12月29日〜1月3日は休館)。タウンスニーカー北コースの旧開智学校停留所から徒歩5分です。
