笹ずしは、笹の葉を皿にして食べるすしです。葉の上に酢飯を広げ、ぜんまいやこごみ、わらびといった山菜とくるみをのせます。長野県飯山市では、祝い事や祭りがあるとこれを作り、「晴れの食」として客に出してきました。市内の富倉地域の里人が上杉謙信に献上したと伝えられていて、謙信ずしとも呼ばれます。
文化庁が、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する「100年フード」では、令和3年度に「謙信ずし(笹ずし)」の名前で伝統の100年フード部門に認定されました。申請したのは飯山市と、いいやま食文化の会です。
笹の葉から直接食べる
飯山市と会が文化庁に出した認定の文には、酢をきかせた飯を抗菌作用のある笹の葉にのせるので防腐の働きが高く、「直接笹の葉から食べるのが本来の食べ方とされるなど、保存食、携帯食に適しています」とあります。箸も器も使いません。農林水産省の「うちの郷土料理」によると、笹ずしを手に持ち、ずらしながら笹を下へ引いて、笹から離れたところを食べます。
作り方の細かいところは、信州いいやま観光局の特集に載っています。ごはんは、うるち米に餅米を1割ほど混ぜて炊きます。時間が経っても乾きにくくするためです。具はゼンマイなどの山菜とクルミ、それにダイコンの味噌漬けを細かく刻んだもので、紅ショウガを少し添えます。油あげや錦糸玉子をのせる家もあり、具は家庭によって違います。おかずをごはんの上にのせる形は、箸がないときでも謙信が食べられるようにという配慮から生まれたと、この特集にあります。
農林水産省「うちの郷土料理」の長野県の笹ずしのページには、飯山市食の風土記編集委員会の『未来へつなごう ばあちゃんの味 かあちゃんの味』から取ったレシピがあります。大根の味噌漬けとぜんまい、干ししいたけを炒めて具にし、笹の表にすし飯を楕円形に広げてのせる手順で、専用の四角なすし箱に何段も重ねる押しずし風の作り方も添えてあります。
富倉峠と謙信の言い伝え
富倉は、飯山の市街地を越えてさらに山の奥へ入った集落です。峠を越えると新潟県妙高市で、3m以上の雪が積もります。この富倉峠は、上杉謙信が武田信玄と戦うために通ったとされる峠です。
認定の文には、1553年から12年間にわたって争われた川中島の合戦に向かう謙信の兵が、笹ずしを食べたとされる言い伝えが出てきます。飯山市の広報紙では、謙信が川中島合戦に出陣した際に富倉峠を通り、笹ずしを食べたという伝説が残っていることが、謙信ずしの名の由来です。農林水産省のページには、謙信の軍勢にふるまわれたのが始まりだともいわれていて、ほかにもいくつかの説がある、とあります。
富倉のはしば食堂
富倉のはしば食堂は、信州いいやま観光局の特集に、見るからに普通の民家だが行列ができる店として載っています。富倉そばを待つ客に、店の人がこう声をかけたと載っています。「笹ずしも食べたらいいわ、名物だでな」。
笹ずしの説明をした女将の言葉も載っています。「注文があれば、3000枚分もつくることもあるわ」。
この特集は平成24年度の事業で作られたものです。はしば食堂のいまの営業日、予約が要るかどうか、笹ずしの値段は未確認なので、行く前に信越自然郷 飯山駅観光案内所(電話 0269-62-7000)に尋ねてください。
県と市の文化財になった郷土食
笹ずしは平成12年に長野県選択無形民俗文化財になりました。飯山市は平成19年11月20日付で、文化財保護審議会の答申を受けて「富倉の笹ずし」を、いもなます、えご、富倉そばと一緒に市の選択無形民俗文化財に認定しています。市の広報紙によると、郷土食を文化財に選ぶのは市町村レベルで県内初でした。
その一方で、作る人は減っています。平成24年度の観光局の特集には、富倉そばも笹ずしも作るのに手間ひまがかかるうえ、集落の高齢化による担い手不足で伝承が危うくなっている、とあります。飯山商工会議所と関係団体は平成23年度と24年度に「峠の合戦食開発プロジェクト」を行い、2013年の大学入試センター試験の前には、長野県飯山北高等学校の3年生157名全員に笹ずしを贈りました。合戦の食べ物だった笹ずしで、試験でも力を出してほしいという願いからです。
観光局の郷土料理のページに出てくる「飯山食文化の会」は、郷土の料理に詳しい人から話を集めて料理を再現し、学校で子どもたちに食を教える活動をしています。農林水産省のページには、以前より減ってはいるものの、今も祝い事や行事があると笹ずしを作る家庭がある、とあります。
飯山駅まで新幹線で
飯山駅は北陸新幹線と飯山線の駅で、新幹線は、はくたかが止まります。観光局の案内では、東京駅から最速1時間41分、長野駅からは約11分です。いまの平日の時刻表では、東京方面のはくたかは11時台、13時台、15時台、17時台に1本もないので、帰りの列車は行く前に決めておくほうが確かです。
改札口は駅の2階にあり、併設の飯山駅観光交流センターに観光案内所が入っています。案内所は無休で、4〜11月は9:00〜17:00、12〜3月は9:00〜18:00。観光タクシーの手配も頼めます。飯山駅の構内で笹ずしを売っているか、富倉へ路線バスで行けるかは未確認です。市内のバスの路線図と時刻表は、観光局のアクセスのページから飯山市役所のサイトへたどれます。
買える所と取り寄せ
農林水産省のページによると、笹ずしは地元の飲食店で出していて、道の駅などでも売っています。長野駅では笹ずしの駅弁が販売されています。
名前で確かめられた作り手は、飯山市のふるさと納税の返礼品を出している、ぜにがめ堂です。返礼品は笹ずし10枚とおやき9個のセットで、寄付金額は16,000円以上(ふるさとチョイスの返礼品ページ)。笹ずしは、クマ笹の上に飯山産コシヒカリの酢飯をおき、ゼンマイ、くるみ、錦糸卵をのせたものです。冷蔵便で届き、受け取りから2日以内が食べる目安とされています。届けられるのは土曜と日曜だけで、北海道・九州・沖縄・離島へは発送不可です。
通販でどんな品が出ているかは、楽天市場で飯山の笹ずしを探すPRと一覧で見られます。