牡丹が咲くのは、本来は春です。それを正月に見せるのが冬ぼたんで、上野東照宮ぼたん苑は公式サイトで、これを寒牡丹とは別のものとして説明しています。寒牡丹は早春と初冬の二季に咲く性質を持つ品種ですが、冬の花は天候に左右され、花の付く割合は2割以下だと苑は書いています。そこで、春に咲く品種を「花の少ない冬にお正月の縁起花として抑制栽培の技術を駆使して開花させた」のが冬ぼたんだ、というのが苑の説明です。
関東で、正月から冬ぼたんを見に行ける所に、鎌倉の鶴岡八幡宮の神苑ぼたん庭園と、上野の上野東照宮ぼたん苑があります。どちらも会期は1月1日からで、2026年は鶴岡八幡宮が2月中旬頃まで、上野東照宮が2月23日まででした。入園料は鶴岡八幡宮が500円、上野東照宮が大人1,000円です。鎌倉は初詣と同じ境内の中で見られ、上野は会期が2月の後半まで続くので、行く日を選ぶ幅があります。2027年の会期は、2026年9月28日の時点でどちらも未発表です。
寒牡丹と冬ぼたんは別のもの
上野東照宮ぼたん苑の冬の苑内には、抑制栽培で咲かせた冬咲きの品種が160株あり、そのほかに寒牡丹の戸川寒なども植えられています。2025年12月11日に出た2026年の会期の発表では、冬咲きの八千代椿、島錦、黄冠と、寒牡丹の戸川寒、流れ星を合わせて約40品種160株以上を並べるとしていました。島錦は紅白が入り乱れて咲くことのある品種、黄冠は珍しい黄色で甘い香りのある品種だそうです。寒牡丹の戸川寒には、気候によっては冬の花が開かないことがある、という断りが付いています。
ですから、正月の苑内で数多く咲いているのは、自然に冬に咲いた花ではなく、春の品種を人の手で冬に間に合わせた花です。それが冬ぼたんという呼び名の中身で、寒牡丹はその脇に、咲けば見られる花として置かれています。
牡丹そのものの来歴も、苑が公式サイトに書いています。牡丹は富貴の象徴とされ、日本には奈良時代に中国から薬用植物として伝えられたとされます。江戸時代以降に栽培が盛んになって多くの品種が作られ、俳句の季語として詠まれ、絵画や文様、家紋にもなってきた花です。
わらぼっちの中で咲く
上野東照宮ぼたん苑の冬ぼたんは、藁の囲いに包まれています。苑はこの囲いをわらぼっちと呼び、霜よけのためのものです。2025年12月11日の発表によると、わらぼっちは地域によって形や結び方が違い、この苑では「開苑当時から荒縄を用いた男結びや梅等のお花を模した飾り結び」で見せているそうです。開苑は1980年4月です。
藁で囲うのは寒さから守るためですが、見に行く側から言えば、見るものは花だけではなく、その囲いと結び目です。結び方は一通りではなく、荒縄の男結びと、梅などの花をかたどった飾り結びがあります。苑は、わらぼっちが並ぶ冬の苑内を、寂しさと華やぎが同居する景色として案内していて、雪が降った日の眺めも勧めています。

鶴岡八幡宮の神苑ぼたん庭園
鶴岡八幡宮の神苑ぼたん庭園は、源氏池のほとりに開かれた廻遊式の日本庭園です。源氏池の中の島には旗上弁財天社が建っていて、庭園はその池の岸にあります。八幡宮の境内の案内には、ここに「正月ぼたん、春ぼたんが植えられており、季節には大勢の拝観者でにぎわいます」とあります。冬に見られるのは、この正月ぼたんです。
鎌倉市観光協会(公益社団法人)の公式ガイドによると、2026年の正月ぼたんは1月1日から2月中旬頃まで、9時から16時30分(入園は16時まで)で、入園料は500円でした。開花の状況によって終了の時期が変わることがあるので、出かける前に確かめてください。この料金と時間は観光協会の公式ガイドに載っている値で、八幡宮の公式サイトの参拝案内には、境内の開門・閉門の時間が通年6時から20時までと書かれています。
境内へは、JR横須賀線・湘南新宿ラインの鎌倉駅東口から徒歩10分、江ノ電の鎌倉駅からも徒歩10分です。初詣と一緒に行くなら、正月三が日の参拝時間と交通規制は鶴岡八幡宮の初詣の記事に書いています。
上野東照宮ぼたん苑の冬ぼたん
上野東照宮ぼたん苑は、徳川家康を祀る上野東照宮の敷地内に、1980年4月、日中友好を記念して開かれた庭園です。回遊式の日本庭園に、春は110品種500株、冬は40品種160株の牡丹が育てられていると苑は書いています。苑内は枯山水の日本庭園で、旧寛永寺五重塔と、東照宮の参道に並ぶ石灯籠が見えます。江戸の建物と一緒に牡丹を見る造りだと、発表は書いています。
2026年の会期は第四十四回で、1月1日から2月23日(月・祝)まで、期間中は無休でした。主催は一般社団法人上野観光連盟です。時間は9時30分から16時30分(入苑の締め切り)まで。入苑料は大人(中学生以上)1,000円、15名以上の団体は800円、会期入苑券が2,500円で、小学生以下は無料です。割引はないと苑は書いています。
冬ぼたんのほかに咲く花木は、苑が開花期を示しています。ロウバイが1月上旬から下旬、紅梅が1月下旬から2月上旬、マンサクが2月上旬から中旬、フクジュソウとアセビが2月上旬から下旬、枝垂れ梅と河津桜が2月中旬から下旬です。1月に行けばロウバイと紅梅、2月の後半なら枝垂れ梅と河津桜が、牡丹と一緒に見られる時期に当たります。会期中は毎日の開花の様子を苑の公式Instagramに載せているそうです。
苑内には和ごよみに倣った飾り付けがあり、訪れる時期によって趣が変わると発表にあります。この苑が開くのは冬ぼたんの会期のほか、4月上旬から5月上旬の春のぼたん祭と、9月下旬から10月下旬のダリアの展示の時期です。
最寄り駅は、JR上野駅の公園口から徒歩5分、京成上野駅の池之端口から徒歩5分、東京メトロの根津駅2番出口から徒歩10分です。
編集部の考え
上野の苑では、冬に花の付く割合が2割に届かない寒牡丹に任せず、春の品種を抑制栽培で正月に間に合わせ、藁で囲って霜から守っています。1980年4月の開苑当時から続く荒縄の男結びも、その手間の一部です。鎌倉の鶴岡八幡宮でも、源氏池のほとりの庭園に正月ぼたんを植えて、1月1日から開けています。花の少ない時季に人の手で用意された花を見に行く、というのがこの二つの庭園を選んだ訳です。