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千葉の太巻き祭りずし:海苔と干瓢と赤でんぶで、切り口に花を出す農家の寿司

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皿にのせた太巻き祭りずし2切れ。左は海苔で巻いた切り口にピンクの飯と卵焼き、右は卵焼きで巻いた切り口にきゅうりと紫の具が見える
千葉県香取市で撮影された太巻き祭りずしの切り口。海苔巻きと卵巻きの2種 写真: katorisi(CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)

太い海苔巻きを切ると、切り口に花や蝶が出てきます。千葉県の太巻き祭りずしは、上総地方を中心に米を作っている農家が巻いてきた寿司で、海苔・干瓢・赤でんぶの三品を基本に、切り口へ花や動物や文字の文様が出るように巻きます。令和3年度に、文化庁が地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する「100年フード」で、伝統の100年フード部門の有識者特別賞を受けました。申請したのは千葉伝統郷土料理研究会です。

切り口に花と文字が出る

認定の文は研究会が書いたもので、材料から説明が始まります。東京湾で豊富に採れる海苔、保存のきく干瓢、手近に売られている赤でんぶ。この三品を基本に、冠婚葬祭の主役として様々な文様が生まれたとあり、「まさに農民の手から生まれた農民の芸術作品が、千葉県の太巻きずしです」と続きます。研究会の公式サイトが挙げる文様は花や揚羽蝶、動物や文字で、種類が多く、創作もできます。上の写真は香取市で撮られた2切れで、左が海苔で巻いたもの、右が卵焼きで巻いたものです。研究会の紹介にも、海苔で巻くものと卵焼きで巻くものの両方が出てきます。

農林水産省の「うちの郷土料理」の千葉県の項では、食べる機会は祭りや桃の節句、花見、入学式のほか、安産祈願の子安講、商売繁盛のえびす講、豊作を祈る虫送りで、季節を問わず通年です。同じ項には、戦前は地元の名誉職の男性がつくってふるまうものだったのが、戦後に作り手が女性に移って華やかになった、ともあります。呼び名は「房総巻き」「房総太巻き寿司」など土地によって違います。

いつから作られたかは定まっていない

時期については、出どころで言うことが違います。認定の文には、すき海苔を農家が買えるようになった時代が検証できていないため、いつごろから作られてきたかは分かっていない、とあります。そのうえで「戦前の昭和の時代に作られていたことは確実です」と書き、江戸時代の終わりごろから作られてきたという説もある、と添えています。

農林水産省の項はもっと古く見ていて、歴史は寛政年間(1789年-1801年)頃まで遡り、イワシを追って来た紀州の漁師の弁当のめはりずしをルーツとする説も挙げています。 研究会の公式サイトのコラムの前書きには、逆の感触が残っています。戦時中はこの太巻きずしはなかったはずで戦後の産物だと思うが、詳細は不明な食文化だと思う、とあります。書いたのは会を立ち上げた人で、太巻きの取材は1957年(昭和32年)頃からと前書きにあります。

三つを並べると、江戸時代の終わりごろ、寛政年間、戦後、と幅があります。確かと言えるのは、研究会が書いたとおり、戦前の昭和には作られていたことまでです。

上総の米と東京湾の海苔

研究会のコラムの前書きは、沿岸の海の海苔と田圃の米と大地の野菜に恵まれた土地柄が房総の太巻きずしを生んだと書き、米を腹いっぱい食べたいという欲望が生んだ結果には違いないと思う、と続けます。同じコラムの別の回には、1975年(昭和50年)には山武郡や君津郡、市原郡、匝瑳郡、安房郡の農家の間で盛んに作られ、どこへ行ってももてなしは太巻きずしばかりだった、とあります。そのころの具は甘辛く煮た干瓢と赤でんぶと茹でたホウレンソウで、海苔はやや下級品だったそうです。文様はチューリップが全盛で、いまに比べると単純だった、とも同じ回にあります。

千葉伝統郷土料理研究会は1982年の発足

研究会は1982年に発足し、太巻き祭りずしを中心に千葉県の郷土料理の伝承活動をしている団体です。会の仕事は「独特の太巻きずしの技術を正しく後世に伝えること」で、現地の人から直に教わったものを後輩に無料で伝えてきた、と公式サイトにあります。会員は栄養士で、食品の知識と技術を加えて普及したいと考えています。

1985年(昭和60年)に初めての本「楽しくつくる祭りずし」が全国学校給食協会から出て、同じ年に食糧庁の「ふるさとおにぎり百選」に千葉県の太巻きずしが載りました。これをきっかけに、県内の学校給食で郷土料理として太巻きずしを取り上げることになりました。

いまの活動で公式サイトのお知らせに出ているのは、秋の食文化フォーラムと、小中学生から新作のデザイン画を募る催しです。第31回の食文化フォーラムは2026年10月3日(土)に千葉市民会館で、千葉県と研究会の主催、参加費無料で開く案内が出ていました。令和8年の新作デザイン画は7月10日が締め切りで、応募は小学生から中学生でした。太巻きを巻く体験ができる教室については、公式サイトに常設の案内がなく、未確認です。

買える所は県内の道の駅

研究会の自己紹介には、最近は県内各地の道の駅で生産者が競って太巻きずしを売り、好評だとあります。どの道の駅に置いてあるかは公式に名前が挙がっておらず、未確認です。行く先の道の駅の公式ページで確かめてください。

作り方は農林水産省のサイトに

作り方を見たいなら、農林水産省「うちの郷土料理」の千葉県「太巻ずし」の項に、千葉県食生活改善協議会の「ちばのおかず」から提供された4人分のレシピが載っています。材料はすし飯、海苔、卵、かんぴょう、青菜、桜でんぶで、卵焼きで巻いて切り口に木の形を出す巻き方です。研究会の公式サイトのコラムには、さんがい松やバラの花、揚羽蝶、鶴のマーク、文字と、文様ごとの回があります。チューリップが「基本の花」で、これを覚えないと次に進めない、とコラムにあります。

編集部の考え

太巻き祭りずしの起源は、認定の文を書いた研究会でも分かっていません。すき海苔を農家が買えるようになった時代が検証できていないからで、確実なのは戦前の昭和まで、と範囲を区切っています。農林水産省の項の寛政年間の説も、研究会の前書きの戦後説も、それぞれ説と感触のまま残っています。材料の三品も、東京湾で豊富に採れる、保存がきく、手近に売られている、と農家が手に入れやすい理由付きで挙げています。

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