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天龍村の柚餅子は、くり抜いた柚子に味噌を詰めて2〜3か月もみながら乾かす

伝統の100年フード · 令和7年度認定

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白木の板の上に置かれた丸柚餅子。柚子の形のまま半分に切られて中の味噌の生地が見え、手前に薄切りが数枚並ぶ
丸柚餅子の断面と薄切り(天龍村で作られたものかは、写真の記載に無い) 写真: 漱石の猫(CC0、Wikimedia Commons)

天龍村の坂部地区では、12月に柚子の果肉をくり抜き、甘味噌の生地とクルミを詰めて蒸します。それを2〜3か月もみながら乾かしたものが、柚餅子(ゆべし)です。柚子の形のまま焦げ茶色になり、食べるときは縦に薄く切ります。

この「天龍村の柚餅子」は令和7年度に、文化庁が地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する「100年フード」の、伝統の100年フード部門に入りました。申請したのは、坂部で柚餅子を作って売っているNPO法人ツメモガキです。

3時間以上蒸してから2〜3か月もむ

ツメモガキが文化庁に出した認定の文では、くり抜いた柚子に入れるのは、甘味噌と小麦粉とゴマを混ぜたものと、クルミの粒。これを「3時間以上蒸しあげ、2、3か月間揉みながら乾燥させて作ります」。柚子の豊富な天龍村では冬に家庭で柚餅子を作り、お茶請けや酒の肴にしてきました。そのまま食べるほか、キュウリや大根の薄切りと合わせたり、チーズやバターを挟んだりする食べ方も、同じ文にあります。

材料の多くは村のものです。ツメモガキの通販のページによると、味噌は天龍村産の糀から手作りしたもの、柚子は村産で農薬を使っていないもの、クルミは村で拾う山ぐるみです。小麦粉は北海道産で、砂糖には奄美諸島のきび糖を使っています。

生地のつなぎは、ほかの地域では餅粉が多く、小麦粉を使うのは天龍村の柚餅子の特徴だ、と文化庁のサイトに載っている柚餅子の冊子にあります。蒸す回数も、1回が主流のところ天龍村では2回です。

落武者の話と1352年の口承

柚餅子は古くから保存食としてこの地域で食べられてきました。認定の文には、平安末期の源平の落武者たちがこの丸柚餅子を伝えたとも言われている、とあります。

冊子には、坂部に引きつけた言い伝えも載っています。南北朝時代の1352年、坂部集落の始まりとなった源氏の熊谷貞直とその家来たちが丸柚餅子を伝えた、という口承です。どちらも口で伝えられてきた話で、令和7年度の事業報告書は、書籍による明確な記録がなく、由来や歴史を明文化した資料が村内に無いことを課題に挙げています。

生産者組合と「天公鬼」

家庭で作っていた柚餅子を村の特産品にしたのは、坂部の生活改善グループ「あゆみ会」です。令和6年度の調査報告書によると、柚子が豊作だった1973年に関京子さんたちが作り始め、1975年には坂部地区の15世帯30人で「天龍村柚餅子生産者組合」を組織しました。商品名は「天公鬼」で、坂部の冬祭りに登場する鬼のことです。組合は年に1万個以上を作り、2000年3月には泰阜村や飯田市のものと合わせた「南信州の柚餅子」が長野県の選択無形民俗文化財になった、と同じ報告書にあります。その組合は2018年4月に解散しました。当時の坂部地区は11世帯14人でした。

関さんから習った人たち

いま坂部で柚餅子を作っているツメモガキは、天龍村の地域おこし協力隊を務めた人たちが中心のNPO法人です。組合の解散が決まった2018年の秋から関さんに習い、2021年に製造と販売を始めました。商品名は「坂部のゆべし」に変わり、作る場所も、旧福島小学校坂部分校の跡地にある「夢工房左閑辺屋」に移っています。

柚餅子づくりの中心にいる村澤葉花さんは仙台市の出身で、学生だった2015年に坂部で「天公鬼」に出会いました。冊子の聞き書きで村澤さんは、関さんから「柚餅子とお祭りがこの坂部の象徴」と聞かされていた、と話しています。

作る数は2021年が240個、2024年が600個でした。令和7年度の事業報告書は年度で数えていて、前の年度の800個から20%増えた960個が実績です。それでも通販のページには、すべて手作業のため生産量に限りがある、とあります。

買える所と値段

公式のページで売り場を確かめられたのは、ツメモガキのオンラインストアです。「天龍村 坂部のゆべし」は重さで分けて売っていて、小(60g以上)が1,100円、中(75g以上)が1,320円、大(90g以上)が1,650円、特大(120g以上)が1,980円。薄切りが5〜10枚ほど入った17gの「スライス」は500円です。伝統の味のほかに、村産の皮剥きえごまパウダー入りと砂糖半分のものもあり、同じ大きさなら値段は同じです。値段は税込みで、送料は全国一律700円が別にかかります。大は2026年10月9日の時点で売り切れの表示でした。賞味期限は1年半で、真空包装でクラフト箱に入って届きます。封を開けたら冷蔵し、開けていなくても冷蔵がおすすめ、と販売のページにあります。

仕込みは12月で、できあがるのは年が明けてからです。2026年は3月7日のお知らせで、前の年の12月に仕込んだ分ができあがってきたと伝えていました。数に限りがあるので、ほしい大きさが残っているかはストアで見てください。

東京では、令和7年度の事業報告書に、銀座NAGANOで柚餅子の販売委託を始めたとあります。村の中の売り場は、2024年に作った600個の行き先から分かります。ネット通販が200個、地元の直売所が100個、JA直売所などが100個、飲食店などが200個でした。ただ、直売所の名前は報告書に無く、村内のどの店にいつ並ぶかは未確認です。

平岡駅では、長野県の南信州地域振興局が案内する「平岡駅おもてなしイベント」に並んだことがあります。2024年11月2日の出店の一覧に、「坂部のゆべしスライス」が500円で載っていました。2026年の秋の一覧は、県のページにまだ出ていません。

12月の柚餅子づくり体験

ツメモガキは、柚餅子づくりを教わる体験を毎年12月に開いています。2025年は12月2日・4日・6日・8日の4回、坂部活性化施設で交流会があり、ツメモガキの人を除いて計18人が参加しました。2026年の募集は、ストアのお知らせにまだ出ていません。

平岡駅と坂部

天龍村を通るJR飯田線の駅は、中井侍、伊那小沢、鶯巣、平岡、為栗です。このうち村役場があるのは平岡です。村のページには、豊橋方面と辰野方面の時刻表(2024年改正)が載っています。

柚餅子を作っている坂部は、村の南部の天竜川沿いにある山あいの集落です。どの駅から坂部へ向かうのか、バスなどの足があるのかは、村の公式ページでは未確認です。

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