「鮮度が命です」。いぶりがっこにする大根について、秋田県漬物協同組合が書いている言葉です。普通のたくあんなら天日に干して水分を抜く大根を、収穫した翌日の夕方までに小屋に吊るして燻しの火を入れ、煙で乾かしてから糠に漬けます。
2026年5月8日からは、断り書きなしにいぶりがっこと表示できるのは、決まりどおりに作られた品と、それを原料にした加工品だけになりました。買うときは、袋のGIマークが手がかりになります。
いぶし小屋で燻して糠に漬ける
今のいぶりがっこは、燻すための専用の小屋で作ります。横手市の案内によると、横手では個人の作り手が多く、自分で大根を育て、「いぶし小屋」と呼ぶ小屋で燻しています。
秋田県漬物協同組合の説明では、大根は国内産の白首大根で、10月から12月初旬にかけて収穫し、葉を落として冷水で洗います。火入れに間に合わせるため、大根は8本から10本ずつ手早く紐で編み、一綴り10キロにもなる束を小屋の天井に吊るします。
薪はナラやサクラなどの広葉樹です。組合の頁には、杉や松などの針葉樹は「刺激臭がつくため適しません」とあります。昼も夜も燻す日数は、団体によって2日以上から4~5日と書き方が分かれます。農林水産省の伝統食図鑑によると、燻した大根は表面を洗い流し、米ぬか、塩、ザラメなどと一緒に重石をして樽に漬け、冬場の冷気の中で発酵させます。漬ける期間も40日以上から2カ月以上と団体によって幅があり、GIの基準で決まっているのは40日以上です。
普通のたくあんとの違いは、この燻しから生まれます。漬物協同組合の頁では、燻しは「独特の色合いと燻製の風味をもたらす重要な工程」で、低温でゆっくり発酵させた品は酸味が少なく、まろやかでコクのある独特な風味になります。振興協議会の頁によると、食感はパリパリとして、香ばしい燻しの香りがします。同じ協議会の頁には「燻しの工程の具合と、糠床の味の調整が各メーカーの味わいを大きく左右します」とあります。
横手市の案内によると、市内の山内地区では11月から12月にかけて、いぶし小屋から煙が立ち上る光景があちこちで見られます。市はこの景色を原風景のひとつに挙げています。
囲炉裏の煙から始まった漬物
振興協議会が文化庁に出した説明では、秋田の冬は日照時間が短く、気温も氷点下になるので、大根を外に干せませんでした。そこで家の中の梁などに吊るしたところ、囲炉裏の上の大根が自然と燻され、それを漬けたのがいぶりがっこの始まりとされています。
名前の「いぶり」は燻したという意味で、「がっこ」は秋田の方言で漬物のことです。農林水産省の登録の説明には、野菜を燻して漬物にした食品は日本だけでなく世界でも希少だ、とあります。
横手の作り手といぶりんピック
横手市には、個人と団体を合わせて100以上の作り手がいます(2024年12月時点の横手市の案内)。農林水産省の郷土料理の頁によると、冬の保存食として家で作る家庭は減り、物産品として作る生産者が増えてきました。
山内地区では、作り手が漬けたいぶりがっこを持ち寄って競う「いぶりんピック」が2007年から毎年開かれています。第19回は2026年2月4日に山内地区交流センターで開かれました。
GIマークが付く品の決まり
GI(地理的表示保護制度)は、地域の自然や伝統的な製法といった条件のもとで作られる農林水産物や食品の名前を、国が知的財産として守る制度です。名前が登録されると、決められた作り方と基準を守った品だけがその名前を使えます。いぶりがっこの登録は令和元年5月8日で、登録番号は第79号、生産地は秋田県です。
横手市の案内が挙げる主な基準は次のとおりです。
- 振興協議会を作る3団体(秋田県漬物協同組合、秋田いぶりがっこ協同組合、横手市いぶりがっこ活性化協議会)に入っている作り手が作る
- 秋田県内で作る
- 国内産の大根を使う
- ぬか床に40日以上漬ける
- 食用黄色4号などの着色料、ソルビン酸などの保存料、サッカリンなどの甘味料といった、指定の添加物を使わない
基準を満たした品には、いぶりがっこの表示と一緒にGIマークが付きます。買うときは、袋にいぶりがっこの名前とGIマークが並んでいるかを見てください。
登録の前から名前を使っていた事業者には猶予が認められていましたが、それも令和8年5月7日で終わりました。振興協議会の告知によると、翌5月8日からは、上の作り手の品と、それを原料にした加工品のほかは、断り書きなしにいぶりがっこの名前を表示できません。会員以外がこの名前や似た名前をパッケージやメニューに使うときは、「本商品は地理的表示(GI)登録された『いぶりがっこ』ではありません」などの表示を、商品名と同じ視野に、認識しやすい大きさで書くことが法律に基づいて義務になりました。秋田県外で製造された類似品は、名前そのものを使えません。
いぶりがっこは令和5年度に文化庁の100年フード(伝統の部門)にも認定され、有識者特別賞を受けました。こちらは地域の食文化の継承を進める制度で、名前の使い方を守るGIとは別の仕組みです。
通販で取り寄せる
角館の安藤醸造は、嘉永六年創業の味噌・醤油・漬物の店で、秋田県漬物協同組合の組合員です。組合の頁には、組合員の製品全体について、「すべて地理的表示法GIによる生産管理基準を満たして」いて、いぶりがっこの表示とともにGIマークが付くとあります。
公式の通販では「いぶりがっこ 150g入」が864円(税込、2026年10月23日の表示)で、賞味期限は1年です。直射日光を避けて保存し、開封したら冷蔵庫に入れて早めに食べるよう書かれています。商品の頁の題名は「200g入」で本文の150g入と合わないので、注文の前に量を確かめてください。
食べ方は、農林水産省の郷土料理の頁では、ご飯のお供のほか、酒の肴やお茶うけにもします。
楽天市場で探すときも、名前だけで決めず、商品ごとにGIマークと作り手を見て選んでください。いぶりがっこを楽天市場で探すPR
横手と秋田駅で買う
横手市の案内(2024年12月25日更新)は、市内のスーパーのほか、次の直売所でいぶりがっこを買えるとしていました。当時の案内では、GIの基準の品のほかに、作り手ごとのさまざまな味も並ぶとあります(2026年5月8日からの表示の決まりより前の案内です)。時間は2024年12月の案内のものなので、出かける前に各店に確かめてください。
| 直売所 | 所在地 | 営業時間 | 休み |
|---|---|---|---|
| 道の駅さんない(産直グループ農香庵) | 横手市山内土渕 | 4月~10月は9時~19時、11月~3月は9時~18時 | 不定休、1月1日・2日 |
| 道の駅十文字(ふれあい直売十文字) | 横手市十文字町 | 4月21日~11月20日は9時~19時、11月21日~4月20日は9時~18時 | 年中無休(お盆・正月は時間が変わる場合あり) |
| JA秋田ふるさと直売の会 | イオンスーパーセンター横手南店1階 | 9時~22時(時季により変わる場合あり) | 年中無休 |
秋田市では、秋田駅ビル トピコ2階の「秋田特産 さいとう」が、いぶりがっこといぶり加工品を扱っています。きりたんぽの製造元の直営店で、営業時間は8:00~20:00です。
横手駅へは、秋田駅からJR奥羽本線で約1時間20分です。東京からは、秋田新幹線で大曲まで行って奥羽本線に乗り換えると約3時間40分、東北新幹線で北上まで行ってJR北上線に乗り換えると約4時間です。いずれも乗り換えの時間を含む最短の時間です。