渋谷区広尾の山種美術館は、1966年に日本初の日本画専門の美術館として開いたと自らを紹介しています。館の基本理念は「日本画は、岩絵具や和紙など自然の素材を用いる芸術です。」と書き出され、季節感や自然の美しさを大切にしてきた絵を、年齢や国籍を問わず伝えたいと続きます。
その絵を見せる場所に、常設展示はありません。地下の約650㎡の展示室で、所蔵品を中心にした展覧会を年に5〜6回入れ替えています。いま開いているのは開館60周年を記念した「ザ・ベスト・オブ・山種コレクションⅠ」で、会期は12月6日(日)まで、一般1,500円です。12月7日から11日は休館し、12月12日(土)から次の展覧会が始まります。日時指定の予約をしていなくても、当日券で入れます。
竹内栖鳳《班猫》が出ているコレクション展Ⅰ
「ザ・ベスト・オブ・山種コレクションⅠ」は10月10日(土)に始まりました。出品は約40点で、すべて館の所蔵品です。重要文化財の竹内栖鳳《班猫》と村上華岳《裸婦図》が並び、上村松園《蛍》、川端龍子《鳴門》、福田平八郎《筍》なども出ています。館は、近代日本画の顔ぶれがこれだけそろうのは10年ぶりと案内し、《班猫》を「当館の看板猫」と呼んでいます。2025年に修復した小室翠雲《海寧観潮》は、この展覧会が修復後の初公開です。
12月12日からの「ザ・ベスト・オブ・山種コレクションⅡ」は、戦後から今の画家の絵が中心です。館のもとになる絵を集めた山﨑種二は戦後に東山魁夷とも付き合って《年暮る》を手に入れ、2代目館長の山﨑富治は横山操・加山又造・平山郁夫と四方山会を作って、それぞれの名作を所蔵しました。会期は2027年3月7日(日)までで、戦後の名品から、開館60周年のために4人の画家が描きおろした新作まで、やはり約40点をすべて所蔵品で見せます。
料金と割引
コレクション展Ⅰの入館料は、一般1,500円(前売り1,300円)、大学生・高校生1,200円(前売り1,100円)です。中学生以下は無料ですが、付添者の同伴が必要です。コレクション展Ⅱは一般1,500円(前売り1,300円)で、大学生・高校生は「冬の学割」の500円になります。
障がい者手帳か被爆者健康手帳を見せた人と介助者1名は、一般料金から200円引きです。きものかゆかたで来た人も一般料金から200円引きになります。20名以上の団体は一人200円引きで、事前の申し込みが要ります。太田記念美術館か戸栗美術館のチケットを受付で見せると100円引きで、券1枚につき1名、1回限りです。どの割引もほかの割引とは併用できません。オンラインの券には各種割引が付きませんが、きもので来た場合は窓口で差額を返してもらえます。
当日券とオンラインの日時指定券
当日券は美術館の窓口で買えます。事前の日時指定予約がなくても入館でき、混んでいるときは入館まで待つことがあります。
オンラインの券は入館の日時を指定して買うもので、混雑時でも待たずに入れます。買ったあとのキャンセルと日時の変更はできません。
開館時間と休館日
開館は10時から17時で、入館は16時30分までです。休館は毎週月曜で、祝日の月曜は開き、翌日の火曜が休みになります。この先では11月23日(月・祝)が開館、11月24日(火)が休館です。
12月7日(月)から11日(金)は、館の開館カレンダーで休館日になっています。コレクション展ⅠとⅡのあいだの展示替えの期間で、この日に行っても中には入れません。年末年始は12月28日(月)から1月2日(土)まで休み、1月は4日(月)と11日(月・祝)が開館、12日(火)が休館です。
恵比寿駅からの行き方
JR恵比寿駅の西口か、東京メトロ日比谷線恵比寿駅の2番出口から歩いて約10分です。
バスなら、恵比寿駅西口の1番乗り場から日赤医療センター前行きの都バス(学06)に乗り、約5分の「広尾高校前」で降りて徒歩1分です。渋谷駅からは東口ターミナルの54番乗り場で同じ行き先の学03に乗り、約10分の「東4丁目」から徒歩2分です。
一般の人が使える駐車場はありません。身体障害者用の駐車スペースが1台分あり、事前に連絡して予約します。
種二が集めた画家たちの絵
館のもとになったのは、山種証券(現・SMBC日興証券)を創業した山﨑種二(1893-1983)が個人で集めた絵です。相場の世界に身を置いていた種二にとって、絵を見ることは「こよなき楽しみ」でした。やがて真贋に間違いのない同時代の画家の作品を集め始めます。種二は「絵の値打ちは作者である画家の人柄に負うところ大だ」と考え、横山大観や竹内栖鳳、上村松園、奥村土牛らと直接つきあいながら作品を買いました。美術館を作るきっかけは、大観から言われた「世の中のためになることをやったらどうか」という一言だったと館は説明しています。
開館のあとも、種二は2代目館長の山﨑富治とともに集め続けました。1976年には旧安宅コレクションにあった速水御舟の作品を一括で買い、1971年から1997年までは若手のための「山種美術館賞」を設けて受賞作を買い上げています。
開館の場所は日本橋兜町で、1998年に千代田区三番町へ仮移転し、2009年10月にいまの広尾へ移りました。所蔵品は約1,800点で、そのうち6点が重要文化財です。地下には天井高3.8mの企画展示室があり、大きな屏風も余裕をもって並べられます。入口と地下の展示室の入口に掛かる「山種美術館」の文字は、日本画家の安田靫彦が書いたものです。ロビーから地下の展示室へ下りる階段の脇には、加山又造の陶板壁画《千羽鶴》が常に掛かっています。
カフェ椿と地下のショップ
1階の入口の隣に「Cafe 椿」があり、名前は速水御舟の重要文化財《名樹散椿》から取っています。営業は10時30分から17時で、展覧会によって変わることがあります。展覧会ごとに出品作に描かれた花や動物を題材にした和菓子を、青山の菓匠「菊家」に頼んで作っていて、持ち帰りもできます。カフェだけ、地下1階のミュージアムショップだけの利用もできます。ショップは展示スペースと展示スペースのあいだにあり、見ている途中で寄れます。
撮影と車いす
展示室では写真・ビデオの撮影も模写もできません。メモは鉛筆で取り、ボールペンや万年筆は使えません。床が木なので、下駄や硬いヒールの靴ではスリッパに履き替えを頼まれることがあります。作品を守るために展示室の温湿度は一定に保たれ、照度も下げてあるので、少し暗く、季節によっては寒く感じることがあります。
車いすは4台あり、受付で借りられます。車いすで使える多目的トイレは1階です。ベビーカーも1台貸し出しています。1階と地下では無料のWi-Fiにつなぐと、作品の音声解説を聞けます。