徳川美術館(名古屋市東区徳川町)は、尾張徳川家19代当主の徳川義親が昭和10年(1935)に開いた美術館で、いまも尾張徳川家の当主が館長を務めています。館長の徳川義崇はメッセージの結びで、館の使命を「文化を守るだけでなく、生かし、伝え続けること」と書きました。所蔵品は1万件を超え、そのなかに国宝9件、重要文化財60件、重要美術品50件があります。
「生かす」が何を指すかは、同じメッセージの前の段に書かれています。家康の遺品をはじめとする道具類は、だれが、いつ、どう使ったかという記録と一緒に受け継がれてきました。だから館は、美術品として眺めるだけでなく、「その道具としての役割や、その背景にある人々の営みや物語に触れる」場を用意している、と館長は続けます。
国宝「源氏物語絵巻」の特別公開
『源氏物語』を描いた現存最古の絵巻である国宝「源氏物語絵巻」は、毎年11月中旬から下旬にだけ特別公開されます。全15巻のうち、出るのは毎年1〜2巻です。2026年は11月14日(土)から11月29日(日)までで、第37帖「横笛」と第49帖「宿木(二)」が並びます。
この絵巻は昭和7年(1932)に保存のため額装に改められましたが、額装が本紙にかける負荷を減らすため、近年また巻物の形に戻されました。いまは一場面ごとに絵と詞書を一巻に仕立ててあります。館は10年に一度、全巻を一度に公開していて、次の全巻公開は2035年の予定です。
公開期間中の休館は月曜日ですが、11月23日は祝日のため開館し、翌24日(火)が休館です。
いま開いている展覧会
特別展「ときめく箱」は2026年10月8日から11月15日まで。茶碗や香炉そのものだけでなく、それを納めた箱の装飾や、蓋に記された箱書きに目を向ける展示です。展覧会の案内では、箱を「持ち主の想いを内に秘め、また時を越えて語るメディア」と呼んでいます。片桐石州が持っていた唐物丸壺茶入「唐丸壺」(個人蔵)は、これが初公開です。
企画展「旅する侯爵 徳川義親」は10月8日から12月13日まで。美術館を開いた義親その人を取り上げた展覧会で、今年は義親の生誕140年、没後50年にあたります。東南アジアやヨーロッパの旅で手に入れた美術品や、日本各地の郷土玩具など、義親が集めた品と旅先の古写真から足跡をたどります。
名品コレクション展示の展示室5では、11月13日(金)まで重要文化財指定記念の特別公開「菊白露蒔絵婚礼調度」があります。2026年3月の文化審議会の答申を受け、秋に重要文化財に指定される予定の調度で、加賀前田家4代・前田光高に嫁いだ大姫のために、蒔絵師の幸阿弥長重が寛永10年(1633)までに作ったと考えられています。個人蔵の「菊白露蒔絵小箱」1合も、あわせて初めて公開されています。
年明けは、2027年1月5日から1月31日まで企画展「古写経 祈りの美」が予定されています。
家康の遺品と昭和の本館
所蔵品の中心は、徳川家康の遺品「駿府御分物」です。家康の九男で尾張徳川家初代の徳川義直が父から受け継いだもので、家康自身の愛用品のほか、足利将軍家や織田信長、豊臣秀吉ゆかりの品も含まれていました。品々は「道具帳(蔵帳)」で代々管理され、来歴や出納の記録が作品と一緒に残っています。館長のメッセージにあった記録とは、これのことです。
建物は、外観のデザインを公募して昭和7年(1932)に着工し、昭和10年(1935)に完成した本館から始まりました。城郭を思わせる帝冠様式で、当時の展示棟と収蔵庫は国の登録有形文化財です。白壁と緑の屋根の新館は、開館50周年を記念して昭和62年(1987)に建てられ、外観は名古屋城をモチーフにしています。
入館料と開館日
入館料は徳川美術館と蓬左文庫の共通で、一般2,000円、高大生1,200円、小中生は無料。毎週土曜日は高校生以下が無料です。隣の日本庭園・徳川園に入るには別に150円が要り、徳川園や名古屋城とのセット券は販売していません。
ただし、企画展・特別展の展示替え期間は料金が変わります。2026年10月1日から7日までは名品コレクション展示だけの公開で、イベントカレンダーに載っていた入館料は一般1,600円、高校・大学生1,000円、小・中学生無料でした。展示替え期間は名品コレクション展示室だけを見る形になり、見学の目安は30〜40分です。オンラインチケットは使えず、現地のチケット売場で買います。
ふだんの見学の目安は60〜90分。チケットはオンラインでも事前に買え、売場ではクレジットカード、ICカード、QRコード決済が使えます。再入館はできません。
開館は10:00〜17:00で、入館は16:30まで。休館日は月曜日(祝日・振替休日の場合は直後の平日)で、年末年始は2026年12月14日(月)から2027年1月4日(月)まで休館します。玄関ロビーでは美術館の概要解説が毎日10:30、11:30、13:30、14:30から各15分ほどあり、予約は要りません。
展示室では、スマートフォン、タブレット、コンパクトカメラで写真を撮れます。一部撮影できない作品があり、展示室入口の掲示で確かめる決まりです。メモやスケッチは鉛筆だけで、ボールペンやシャープペンシルは使えません。
名古屋駅と大曽根駅からの行き方
名古屋駅からは、名古屋駅バスターミナル10番のりばから市営バスの基幹2系統「猪高車庫」方面ゆきに乗り、約30分の「徳川園新出来」で降ります。そこから徒歩約3分です。名鉄バスセンター3階4番のりばの「三軒家」方面ゆきも、同じ「徳川園新出来」に約30分で着きます。なごや観光ルートバス「メーグル」も名古屋駅バスターミナル11番のりばから出ていて、所要は約30分です。
電車なら、JR中央線の「多治見」方面ゆきで大曽根駅まで約20分、南口から徒歩10分です。栄からは地下鉄名城線(右回り)で大曽根駅まで約15分、E5番出口から徒歩約15分。栄バスターミナル(オアシス21)3番のりばからは、基幹2系統で「徳川園新出来」まで約20分です。
車で行く場合、美術館の駐車場は2026年9月1日から無料をやめ、有料のタイムズに変わりました。乗用車17台、24時間で、8:00〜18:00は30分100円、最大料金も提携割引もありません。近くの徳川園市営北駐車場(地下)は乗用車79台で、6:00〜23:00、25分ごとに100円、当日最大1,000円です。
館内で使えるもの
コインロッカーは無料で、入らない荷物はミュージアムショップで預かってもらえます。館内はバリアフリーで、車椅子とベビーカーは無料で借りられ、車椅子対応のお手洗いと授乳室もあります。
ザ ミュージアムカフェ(24席)とミュージアムショップを使うには入館が必要です。敷地内の日本料理 宝善亭は昼の部が11:00〜15:00で、当日でも入れますが、館は事前予約をすすめています。お弁当を持ち込んで食べることはできません。
編集部の考え
2026年に源氏物語絵巻が出るのは、11月14日から29日までです。特別展「ときめく箱」は11月15日で終わるので、絵巻と箱の展示が重なるのは11月14日(土)と15日(日)の土日だけになります。企画展「旅する侯爵 徳川義親」も12月13日まで続いていて、この土日なら、3つの展示を同じ日に見られます。特別公開のページに載る入館料も一般2,000円で、ほかの時期と変わりません。
絵巻の公開が終わったあと、館は12月14日から2027年1月4日まで閉まります。年内に絵巻を見る機会は11月29日までで、その次に全巻がそろうのは2035年の予定です。