鞍馬寺(京都市左京区)と大山寺(鳥取県大山町)は、どちらも山中に建つ寺で、天狗の伝承が残ります。鞍馬寺は宝亀元年(770年)の創建、大山寺は養老二年(718年)の開山と伝わります。いま二つの山を区切っているのは、寺の境内と、大山隠岐国立公園という制度です。
1. 鞍馬寺、天狗と牛若丸の伝説
鞍馬寺は宝亀元年(770年)、鑑禎上人が毘沙門天を祀る草庵を建てたのが始まりです。延暦15年(796年)には藤原伊勢人が観世音を祀る堂を建て、寺の公式サイトは「毘沙門天も観世音も根本は一体」という考えのもと、以来両尊が併せ祀られてきたと説明しています。
平安時代には白河上皇や藤原道長が参詣し、清少納言は『枕草子』に「近うて遠きもの、くらまのつづらをりといふ道」と書きました。紫式部も『源氏物語』で鞍馬寺を「北山のなにがし寺」として描いています。
寺の歴史で語られてきたのが、源義経(幼名・牛若丸)の伝説です。7歳頃に鞍馬寺へ入り、16歳で寺を出たとされ、「昼間は仏道修行、夜は僧正ガ谷で天狗に兵法を授けられた」と伝えられています。参道は山門から本殿金堂まで、寺の公式サイトの案内で約30分の道のりです。

戦国時代には武田信玄や豊臣秀吉など武将の戦勝祈願も相次ぎました。江戸時代には十院九坊の塔頭が並び、毘沙門天は福の神として信仰され、桜の名所として京都所司代が採花を禁じる「花の制札」まで出ています。昭和22年に「鞍馬弘教」が創設され、昭和24年、鞍馬寺はその総本山となりました。
2. 拝観時間・料金と、出町柳駅からの行き方
本殿の拝観(本殿開扉)は9:00〜16:15、問い合わせは寺務所(075-741-2003)です。境内を歩く「健脚コース」は愛山費500円で、鞍馬駅から山門を経由し、本殿・魔王殿を通って貴船口駅まで歩きます。山門駅と多宝塔駅を結ぶケーブルカーは大人・片道200円、小学生以下・片道100円、始発8:40・終発16:20、20分間隔で運行し、乗車時間は2分です。

行き方は、京阪・阪急・地下鉄・JR京都駅などいくつものルートがあり、寺の公式サイトが案内する主な経路は出町柳駅から叡山電車で鞍馬駅まで30分です。地下鉄烏丸線の国際会館駅からは、京都バス鞍馬温泉行きで鞍馬まで25分というルートもあります。出町柳から鞍馬駅までの運賃は、叡山電鉄公式サイトの普通運賃表(2023年4月1日改定版)で大人470円、こども240円です。
鞍馬駅は1929年10月20日開業、標高238.0mです。昼間時間帯のみ駅係員がいて、早朝・夜間は無人駅になります。ICカード利用者は乗車前にタッチ、それ以外は乗車駅証明書を受け取ります。鞍馬寺に駐車場はありません。
本殿の開扉は9時からなので、遠くから来て朝のうちに健脚コースを歩き始めるなら、前の晩の宿は楽天トラベルの鞍馬駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
3. 大山寺、養老二年に依道が開いた山
大山寺(鳥取県西伯郡大山町大山9、天台宗別格本山・角磬山大山寺)は、奈良時代の「養老年間(約一,三〇〇年前)」に開かれたと寺の公式サイトは書いています。大山開山1300年祭実行委員会の公式サイトに残る「大山寺縁起」は、開山を養老二年(718年)とし、出雲国玉造の依道という人物が金色の狼を追ううち地蔵菩薩に出会って弓矢を捨て、出家して名を金蓮と改め、この山に地蔵権現を祀ったと伝えています。
本堂は昭和の火災を経て昭和26年に再建されました。重要文化財の阿弥陀堂と弥陀三尊をはじめとする宝物が伝わり、「山内寺院十ヶ院」を有する「山陰の名刹」として知られています。

拝観の基本志納額は大人300円・小人200円、拝観時間(4月1日〜11月30日)は9:00〜16:00です。宝物館にあたる霊宝閣は12月1日から3月31日まで休館します。電話は0859-52-2158です。前の晩を米子で過ごすなら、宿は楽天トラベルの米子駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
4. 大山隠岐国立公園、昭和11年の指定と1300年祭
大山の周辺は大山隠岐国立公園の区域です。環境省によると、最初の指定は昭和11年2月1日、昭和38年4月10日に隠岐島・島根半島・三瓶山・蒜山地域を編入して現在の名称になりました。公園面積(陸域のみ)は35,097ha、大山蒜山地域が22,317ha、隠岐島・島根半島・三瓶山地域が12,780haで、鳥取県7市町村・島根県9市町村・岡山県2町、合計5市11町2村にまたがります。公園のキャッチフレーズは「神話がつなぐ山と島-神在ります山と連なる火山、太古の記憶が息づく島-」です。公園内は保護の度合いで地種区分が分かれ、特別保護地区2,179ha・第1種特別地域4,900ha・第2種特別地域10,911ha・第3種特別地域12,755ha・普通地域4,352haです。大山寺がどの区分に立地するかは、環境省のこのページには書かれていません。
2018年には「大山開山1300年祭」が開かれました。伯耆国「大山開山1300年祭」実行委員会の公式サイトによると、開催期間は平成30年5月〜11月、メインテーマは「日本はじまりの地『大山』」です。地元大山寺地区の事業「大山への祈り」(ステージテーマ「調ふ」)と、自治体・民間団体等による「大山からの恵み」(ステージテーマ「不思議と素敵」)の2つが柱でした。実行委員会は令和2年6月22日に解散し、現在は大山山麓・日野川流域観光推進協議会が大山圏域の情報発信を引き継いでいます。
編集部の考え
鞍馬でも大山でも、山への出入りは昔から自由ではありませんでした。鞍馬寺は「ここから先は寺の境内」という線を770年から引き続けています。大山は養老二年に依道が開いた後、昭和11年に国立公園の指定が加わりました。天狗の伝承や開山の物語が先にあり、そのあとに国立公園という制度の線が引かれた、という順番です。
大山寺の建物が地種区分のどこに立地するかは、環境省の公開資料には出ていません。畏れが山を守ってきたと言い切るには、寺の境内と公園の区分がどこまで重なるかを、現地か大山町への確認で埋める必要があると思います。
訂正(2026年9月29日): 「2. 拝観時間・料金と、出町柳駅からの行き方」で、出町柳から鞍馬までの叡山電車の運賃を片道410円と書いていましたが、大人470円(こども240円)でした。