ドクターイエローは4号車の床を12cm底上げしていて、天井が低くなるこの方式は乗客を乗せる車両には使えませんでした。JR東海は台車のセンサとカメラで線路と架線を測る方式を開発し、東海道新幹線の検測は2027年1月、乗客を乗せて走るN700S「ドクターS」へ移る予定です。目印は先頭車のドア横など1編成20か所に付く「Dr.S」のロゴですが、ロゴを付けた編成が10月に走り始めたかどうかは10月30日時点で未確認で、検測で走る日と時刻を前もって知らせる案内もどの会社も出していません。
「Dr.S」のロゴは1編成に20か所
ドクターSの名称とロゴは、JR東海が2026年4月16日に発表しました。ロゴはN700Sのシンボルマークに「Dr.S」の文字を添えた形で、Sの字は黄色です。Sは、N700Sや「S Work車両」など東海道新幹線で使ってきた「S」から取っています。名称の由来には「ドクターイエローの役割を受け継ぐ車両であることを表現」とあり、Sを黄色にした理由も同じだと発表のロゴの図に書かれています。
ロゴが付くのは、両先頭車のドア横に左右1か所ずつで計4か所と、奇数号車の左右に計16か所です。1編成で合わせて20か所あるので、走り始めていれば、ホームに入ってきたN700Sの先頭車のドア横を見て、ドクターSかどうかが分かります。
ドクターSは計4編成で、どれも16両です。2026年10月に営業車両として走り始め、試験運用と確認試験を終えたあと、2027年1月に検測機器の運用を始める予定と発表されています。
車体の屋根と側面の一部には、ドクターイエローT4編成の車体に使われていたアルミ部材を使います。JR東海の言う水平リサイクル(使い終えた製品を同じ種類の製品の原料に回すこと)で、T4編成の車体だったアルミがドクターSの屋根と側面になります。
検測のスケジュールと時刻表は、いまどの会社も出していない
ドクターイエローT5編成を持つJR西日本は、2026年6月22日の発表で検測運転を2027年1月に終える予定と知らせ、「イベントを除き、最終運行日も含めた検測運転の計画は公表いたしません」と添えました。JR東日本のEast iも運行ダイヤを出していないと、同社のJREメディアの記事にあります。
ドクターSは、検測機器の運用がまだ始まっていません。JR東海は、どの日にどの列車で検測するかを知らせる案内を出していません(10月30日時点)。ロゴで分かるのは、目の前の列車がドクターSの編成かどうかまでです。その列車がその日に検測しているかどうかは、ロゴからは分かりません。
T5編成で前もって日付が出るのは、JR西日本が除いた体験乗車のようなイベントの列車です。ドクターイエローのイベントの日付は、ドクターイエローの記事にまとめています。
ドクターイエロー・ドクターS・East i・SOARの違い
| 車両 | 会社 | 検測する線区 | 形式ともとの車両 | 検測の始まりと終わり |
|---|---|---|---|---|
| ドクターイエロー | JR東海(T4編成)、JR西日本(T5編成) | 東海道・山陽新幹線(東京〜博多) | 検測専用の車両(T4は923形) | T4は2001年9月から2025年1月まで。T5は2005年製で、2027年1月に終える予定 |
| ドクターS | JR東海 | 東海道新幹線 | N700Sの営業車両に検測機器を積む | 2027年1月に検測機器の運用を始める予定 |
| East i | JR東日本 | JR東日本管内の東北・上越・北陸・山形・秋田新幹線 | E926形。E3系がもと | 2002年に導入 |
| SOAR | JR東日本 | East iと同じ | E927形。次期秋田新幹線の車両がもと | 2029年度中に検測を始める予定 |
表で山陽新幹線が入るのはドクターイエローだけです。JR西日本は2024年6月13日、2027年以降の山陽新幹線の検測は、JR東海が持つ営業車両の検測機器で行う方向で検討中と発表しました。山陽の今後の検測について、2026年6月のT5編成の引退の発表が伝えているのは、検測運転を2027年1月に終えることまでです。
JR東海が検測専用の車両をやめ、営業車両に積む理由
ドクターイエローのT4編成とT5編成は、交互に約10日に一度、東京〜博多の電気設備と軌道設備を検測してきました。JR東海は2024年6月13日、T4編成を老朽化のため2025年1月に退かせると発表していました。
ドクターイエローが床を底上げしたのは、2つの台車を使い、床下に通したレーザ光を基準にして線路の形を測るためです。営業車両に向けてJR東海は、1つの台車に付けたセンサで線路の形を割り出す方式を開発しました。架線は、ドクターイエローが測定専用のパンタグラフで測っていたのを、営業車両の集電用パンタグラフ近くに付けた3台のカメラの画像で調べます。運転台にもカメラを付け、電線や電柱に近づいた支障物を走りながら見つけます。こうした技術を合わせ、2025年10月16日に、ドクターイエローの検測機能を全て営業車両で代わりに担えると発表しました。
これで、ドクターイエローのような検測専用の車両を開発し、製造し、運用する必要がなくなり、費用も下がるとJR東海は挙げています。営業車両で測れるようになれば、ドクターイエローでの検測と比べて検査の頻度が上がり、社員が現地で行っている検査の一部も置き換えられる、と同じ発表にあります。
JR東日本は検測専用の車両SOARを作り続ける
JR東日本は次も検測専用の車両を作り、2025年10月7日の発表で、その理由に新幹線が5方面に分かれ「方面毎に編成が異なることから、全方面で共通使用できる専用の検測車」を挙げました。今のEast iの方式は、275km/hを超える速度では検測できないという課題も発表にあります。
次のE927形は、同時に開発する次期秋田新幹線の車両(E6系の後継)をもとにし、5方面で共通に使う検測車です。最高速度は320km/hで、East iの275km/hを上回ります。
愛称のSOARは、2026年7月14日にJR東日本グループの社員の応募作から決まりました。英語で翔けるという意味の語で、Oの字には事故ゼロの0の意味も込めてあります。