大塚国際美術館の初代館長、大塚正士が1998年3月付で書いた挨拶は、机の上に盛られた一握りの砂から始まります。持ってきたのはグループ会社の大塚化学の技術部長と技術課長です。砂の出どころを尋ねると、答えは「これは鳴門海峡の砂です。」でした。建築用にトン幾らで売られていた白砂で、タイルを作らせてほしいという相談でした。
ところが会社を作った昭和48年(1973年)に石油ショックが来て、ビルの建設が止まり、タイルの会社は操業できなくなりました。そこで陶板に絵を描いて美術品へ向かうことになり、色の研究が始まります。挨拶には「なにしろ2万点に近い色を開発したのです。」とあります。この技術で、古代の壁画から現代の絵画まで西洋名画1,000余点を原画と同じ大きさに再現したのが、徳島県鳴門市の鳴門公園内にあるこの館です。大塚製薬の創立75周年事業として設立されました。
陶板で名画を残す館
いまの館長の大塚一郎は、館のコンセプトのページで、原画は環境汚染や地震、火災による退色や劣化を免れないと書き、そのうえで「陶板名画は約2,000年以上にわたってそのままの色と姿で残る」と述べています。陶板を作っているのは大塚オーミ陶業で、1枚の最大サイズは縦300cm×横90cmです。展示は、世界26カ国190余の美術館が所蔵する西洋名画約1,000点。6名の選定委員が選びました。
館長の文によると、門外不出の「ゲルニカ」も陶板になり、戦争で散り散りになっていたエル・グレコの祭壇画は、衝立の形で復元されました。1,000余点の検品のために、ピカソの子息や各国の美術館の館長、館員が来日しています。
初代館長は、作品を選ぶ基本を大学生に美術を教えることに置いたと書いています。大学生のうちにここで絵を見ておいて、「将来新婚旅行先の海外で実物の絵を見ていただければ」と続けています。挨拶の終わりには、間違ったところがあれば指摘を受けて直していきたい、とも書いています。

システィーナ礼拝堂の天井画と壁画は、部屋ごと陶板で再現されています。沿革では、開館10周年の2007年4月1日に天井画の完全再現が加わりました。ゴッホのヒマワリは、1945年に芦屋で焼失した1点も再現していて、館はこれを含めて7点を「7つのヒマワリ」と呼んでいます。
いまも増えている絵
2026年7月11日からは、ヴィジェ=ルブランの「バラを持つマリー・アントワネット」が地下1階の展示室61に加わりました。原画はヴェルサイユ宮殿美術館にあり、門外不出の肖像画です。王妃が28歳のときの姿で、館の解説には「こよなく愛したバラを手に持つ気品溢れる姿で描かれています」とあります。隣の展示室62には、画家が娘を抱きしめて笑う自画像「画家と娘」があります。
地下2階のフェルメールギャラリーには12点が並びます。フェルメールの作品は30数点とされていて、そのうち12点を一度に見られることを館は自分の特色に挙げています。2026年3月13日に加わった「ギターを弾く女」や、1990年にボストンの美術館から盗まれて行方の分からない「合奏」もここにあります。
地下3階から上る約4kmの順路
館が代表作に挙げるのは、システィーナ礼拝堂壁画、モナ・リザ、ヒマワリ、ゲルニカなどで、鑑賞ルートは約4kmあります。建物のほとんどは山の中にあります。正面玄関から約40mのエスカレーターを上がった先が、最初のフロアの地下3階です。地下3階が古代・中世、地下2階がルネサンスとバロック、地下1階がバロックと近代、1階と2階が現代とテーマ展示。最初の展示のシスティーナ・ホールから床の矢印に沿って進むと、全作品を見て回れます。展示作品リストは2026年7月時点で全1,095点です。館は歩きやすい靴で来るよう案内していて、所要の目安はフロアマップの「モデルコース」にあります。

入館料と休館日
当日券は一般3,300円、大学生2,200円、小中高生550円で、入館券の販売は16:00までです。20名以上の団体は当日券の10%引き、障がい者手帳を持つ人1名と同伴者1名は当日券の半額で、割引の重ね掛けはできません。公式のよくある質問では、未就学児は保護者1人につき6名まで同伴できます。料金表に未就学児の欄はなく、料金は未確認です。
前売券は一般3,160円、大学生2,140円、小中高生530円。公式オンラインチケットは手数料がかからず、スマートフォンの画面か印刷した用紙で入れます。コンビニの端末や、鳴門市観光情報センター、近くのホテルでも買えます。前売券に有効期限はありませんが、購入後の変更・キャンセル・払い戻しはできません。美術館の窓口で買った前売券は、その日は使えず翌日からになります。支払いは、正面玄関のチケット販売所と券売機で、クレジットカード、交通系ICなどの電子マネー、QRコード決済が使えます。再入館は当日限りで、出るときに地下3階のインフォメーションで手続きします。
開館は9:30〜17:00で、休館日は月曜日(祝日の場合は翌日)。1月は連続休館があり、8月は無休です。公式サイトには2027年12月までの開館カレンダーがあり、2026年9月1日に更新されています。
神戸・大阪・高松から高速バスで館の前へ
美術館まで直通の高速バスがあります。公式サイトの案内は次のとおりです。
| 出発地 | 便数と所要時間 |
|---|---|
| 三宮 | 西日本JRバス 1日4便・1時間22分、徳島バス 1日4便・約1時間30分 |
| 大阪駅周辺 | 西日本JRバス 1日4便・約2時間15分、徳島バス 1日3便・約2時間 |
| 京都駅 | 西日本JRバス・徳島バス 1日2便・約2時間35分 |
| 高松駅 | 徳島バス・四国高速バス 1日2便・約1時間30分 |
新神戸・なんば・岡山駅・広島駅新幹線口からの便もあり、アクセスのページに載っています。徳島バスの京都・大阪・神戸・高松・広島線には入館券とセットのきっぷがあり、大人で500円お得(広島線は1,300円お得)です。乗る前にバス会社の窓口で紙のチケットに引き換える必要があり、チケットがないと乗車も入館もできません。
車なら神戸淡路鳴門自動車道の鳴門北ICから約3分です。専用駐車場は450台で無料、正面玄関までは約500m・徒歩約10分で、無料のシャトルバスが随時走っています。最終入庫は15:50です。

JRの鳴門駅からは路線バスかタクシーです。公式のアクセスのページには徳島バスの時刻表と近くのタクシー会社の連絡先が置かれていますが、鳴門駅からのバスの停留所名と所要時間はそのページに書かれていないので、時刻表で確かめてください。タクシーは常駐していないので、電話で呼びます。飛行機で来る場合、公式サイトの案内は羽田空港から飛行機とタクシーで約1時間40分です。
遠くから来て、9:30の開館から午前を館に当てるなら、前の晩の宿は楽天トラベルの鳴門駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
正面玄関のエスカレーター
正面玄関にはエレベーターがなく、約40mのエスカレーターだけです。車椅子の人やエスカレーターが不安な人には別の入館口を案内するので、来館前に問い合わせるよう館は求めています(電話 088-687-3737)。館内は車椅子で見て回れ、車椅子とベビーカーは地下3階のインフォメーションで無料で借りられます。ベビーカーの対象は生後1か月〜48か月です。

コインロッカーは正面玄関と地下3階にあり、正面玄関にはスーツケース専用(42×48×82cm)が84個あります。撮影はできますが、フラッシュと三脚は禁止で、商業・営利目的の利用は館が許可した場合を除いて認められていません。音声ガイドは日・英・中・韓の4か国語で1台500円、収録時間は約2時間で、約100点の絵画解説が入っています。ペットは入館できません(補助犬は可)。
食事は1階のレストラン・ガーデン、地下2階のカフェ・ド・ジヴェルニー、地下3階のカフェ フィンセントの3店で、どれも入館料を払わないと使えず、予約は受け付けていません。持ち込んだ弁当は、晴天時に限って地上1階の庭園で食べられます。
訂正(2026年10月19日): 「神戸・大阪・高松から高速バスで館の前へ」で、飛行機なら徳島阿波おどり空港からタクシーで約1時間40分と書いていましたが、公式サイトの約1時間40分は羽田空港から飛行機とタクシーを合わせた所要時間でした。