大原美術館の代表理事、大原あかねは、館に来る人の姿を具体的に書いています。ピカソの絵の前で模写をする子どもたち、エジプトの陶片に見入る若者たちの中の車いすの人、児島虎次郎の絵を並んで見る年配の夫婦。そのうえで「私たちはすべての鑑賞者のためにありたいと願っています」と続けます。
その言葉に沿う案内が、入館案内に並んでいます。車いすとベビーカーの館内用の無料の貸出、フロアガイドの車椅子順路図、そして入館券1枚で本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館の3つに入れる作りです。一般2,000円、18歳未満500円の券で、3館を同じ日に回らなくてもかまいません。分館は長期休館中です。
入館券1枚で入れる3つの館
本館は1930(昭和5)年11月5日に完成した開館当時の建物です。事業家の大原孫三郎が、前年に亡くなった画家の児島虎次郎を記念して設立した、日本で最初の西洋美術中心の私立美術館でした。いまの本館1・2・4〜7室はコレクション展「OHARAコレクション・ハイライト」で、2026年4月25日から続いています。展示作品リストには、モネ《睡蓮》(1906年頃)、ゴーギャン《かぐわしき大地》(1892年)、児島虎次郎《椅子に座る女》(1912年)、蜷川実花《the otherside》(2006年)が載っています。会期中に一部の作品は入れ替わります。
工芸・東洋館は米蔵を改装した展示館で、浜田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉、河井寛次郎の陶芸、棟方志功の木版画、芹沢銈介の染色と、児島虎次郎が集めた東洋の古代美術を展示しています。工芸館の横の池には、2000年にフランス・シヴェルニーのモネの日本庭園から睡蓮が届き、春から夏に花が咲きます。
児島虎次郎記念館は、中国銀行倉敷本町出張所の跡に2019年10月に新児島館(仮称)として暫定開館し、2025年4月にグランドオープンした館です。開くのは10:00からで、本館より1時間遅れます。
分館は長期休館中で、再開の時期は未確認です。入館案内には長期休館中とだけあり、2026年4月から9月のお知らせにも再開の案内は出ていません。
エル・グレコ《受胎告知》は修復後の姿で本館3室に
本館3室では、2026年4月25日から2027年3月28日まで、修復を終えたエル・グレコ《受胎告知》を展示しています。入館券でそのまま見られます。
修復は2025年7月に、クラレ財団の助成を受けて館内で行われました。プラド美術館の絵画修復士エバ・マルティネス氏を招き、財団の研究員・学芸員と作品の前で状態を確かめたうえで、エル・グレコが描いた当初の姿にかぎりなく近い状態へ戻す方針を立てました。そのうえで表面の汚れと後の時代の加筆を取り除いています。日本に来てからの修復は1959年に記録が一度あるだけで、そのときに何をしたかの記録は残っていません。館はこれを約60年ぶりの修復と呼び、本格的な修復作業としては今回が初めてとも説明しています。
この絵は1922年にパリのベルネーム・ジュヌ画廊で児島虎次郎が大原孫三郎の支援を得て買い、1923年に倉敷で公開したものです。展示室では修復前・修復中の実寸大の複製パネルを並べ、購入と公開の当時の資料も一緒に出しています。
料金と券の買い方
入館料は一般2,000円、高校・中学・小学生(18歳未満)500円、未就学児は無料。団体料金はありません。倉敷市民と倉敷市内に勤める人は、住所や勤め先の分かるものを見せると一般1,900円です。身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳(ミライロIDも可)を持つ人は無料で、重度の場合は付添いの1名も無料になります。岡山県内の大学に通う留学生も学生証で無料です。
券は入館券売場で買い、現金のほか電子マネー、クレジットカード、QR決済が使えます。入館制限はなく、予約は要りません。発券には少し時間がかかるため、団体は事前に予約すると券の受け渡しが早くなります。券は各館の入口でスタッフが押印し、原則として同じ館への再入館はできません。押印されていない館には別の日に入ってもかまいません。有効期限はありません。初日は本館だけ見て、工芸・東洋館と児島虎次郎記念館は翌日以降に同じ券で回る、という使い方ができます。
音声ガイドは1本600円で、本館だけで使えます。英語・中国語・韓国語にも対応し、WEB版は自分のイヤホンが要ります。
開館時間と休館日
3月から11月は9:00〜17:00(最終入館16:30)、児島虎次郎記念館は10:00〜16:00です。12月から2月は9:00〜15:00(最終入館14:30)に短くなり、記念館は10:00〜15:00。2026年は12月1日(火)から冬の時間に入ります。
休館日は毎週月曜日で、祝日・振替休日と重なる日は開きます。8月は無休です。公式の開館カレンダーでは、10月の休館は19日と26日、11月は9日・16日・30日で、11月2日と23日の月曜は開館になっています。12月は7日・14日・28日の月曜のほか、21日(月)から25日(金)まで続けて休館で、29日から31日は9:00〜15:00で開いています。臨時休館もあるので、出かける日が決まったら公式の開館カレンダーで確かめてください。
倉敷駅からの行き方
JR倉敷駅から徒歩約15分です。東京方面からは山陽新幹線で岡山まで行き、山陽本線に乗り換えて倉敷へ約18分。広島方面からは新倉敷で山陽本線に乗り換えて約10分です。岡山空港からは倉敷駅までバスで約35分。
美術館に駐車場はなく、提携の駐車場もありません。車なら周辺の有料駐車場を使います。山陽自動車道の倉敷インターチェンジ、瀬戸中央自動車道の早島インターチェンジから美観地区まではどちらも約20分です。所在地は岡山県倉敷市中央1-1-15。
9:00の開館から児島虎次郎記念館まで回るなら、前の晩の宿は楽天トラベルの倉敷駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
荷物・車いす・撮影
手荷物は入館券売場の隣の預かり所で、見ている間は無料で預かります。車いすとベビーカーも館内用を無料で貸し出し、台数に限りがあるので、来館日が決まっていれば予約できます。館の外でも使うなら、くらしきシティ車椅子を借りられます(申込書の記入が要ります)。フロアガイドには車椅子順路図もあります。
館内では写真撮影を遠慮するよう求められ、メモは鉛筆かシャープペンシルだけ、飲食はできません。館のお願いの文には「美術館には、理由のない規制はありません」とあり、理由は作品を守ることと、ほかの客の迷惑にならないことの二つです。かつて館内で自由に撮影できた時期があり、エル・グレコやモネの人気作の前で団体の記念撮影会が始まったために取りやめた、という経緯も同じ文にあります。
ミュージアムショップは館内店が美術館と同じ時間で、本店は10:00〜17:15(12月から2月は10:00〜16:00)です。