本館1階の19世紀ホールで、2027年1月11日まで特集展示「昭和100年」が開かれています。題はそのあとに「昭和時代 当館における保存修復の変遷」と続きます。ゴッホの《ばら》とルノワールの《帽子の女》を例に、1959年の開館から1989年までの修復の仕事を、館に残る記録の資料で振り返る展示です。
館はこの展示の趣旨に、自分たちを「国立美術館の中でも唯一、保存修復室と保存科学室を有する美術館」と書き、「所蔵作品を代々守ってきた美術館の裏方の仕事を知っていただく機会となれば幸いです」と結んでいます。絵の前に立つ人からは見えない側の仕事を、館が自分で見せようとしている展示です。
19世紀ホールは館内地図では観覧券なしで入れるフリーゾーンですが、展示のページにも観覧料の欄があり、この展示だけを見るのに券が要るかどうかは未確認です。
若い画家に本物を見せたかった松方幸次郎
館の所蔵品の出発点は、神戸の川崎造船所(いまの川崎重工業)の初代社長だった松方幸次郎が集めた作品です。第一次大戦中のロンドン滞在をきっかけに、1916年から約10年、たびたびヨーロッパの画廊を回り、絵画や彫刻から家具やタペストリーまで買い集めました。その動機は、自分の趣味のためではなく「若い画家たちに本物の西洋美術を見せてやろう」という気概だったといいます。
松方は東京の麻布に用地を確保し、「共楽美術館」を建てる準備をしていました。ところが1927年の経済恐慌で川崎造船が経営危機に陥り、美術館は建たずに終わります。日本に運んだ作品は売り立てで散り、ロンドンの倉庫の作品は1939年の火災で失われました。パリに残った約400点は戦後フランスの国有財産になり、フランス政府がその大部分を日本へ寄贈返還すると決めます。その作品を保存し、公開するために、1959年に国立西洋美術館が設立されました。
所蔵品は1959年の松方コレクション370点から始まり、いまはおよそ6,000点です。
本館はフランスの建築家ル・コルビュジエの設計で、1959年3月に竣工しました。2007年に国の重要文化財に指定され、2016年7月17日には、7か国17資産からなる「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の一つとして世界文化遺産に登録されています。

本館に続いて、1979年に前川國男建築設計事務所の設計で新館が、1997年には前庭の地下に企画展示館が建ちました。企画展はこの企画展示館で開かれます。

常設展の料金
常設展は所蔵品の展示で、企画展とは料金が別です。企画展は展覧会ごとに料金が決まりますが、企画展の観覧券で常設展も見られるので、企画展に行く日は常設展の券を買い足さなくてすみます。
| 常設展 | いま | 2027年3月20日の会期から |
|---|---|---|
| 一般 | 500円 | 1,000円 |
| 大学生 | 250円 | 500円 |
値上げは、独立行政法人国立美術館による所蔵作品展の料金の改定によるものです(国立西洋美術館のお知らせは2026年9月18日付)。障害者手帳を持つ人と付添者1名の無料は続き、企画展の料金は従来どおり展覧会ごとに決まります。その前の2027年1月12日(火)〜3月19日(金)は、施設整備のため常設展を長期休室する予定と公式サイトにあります。いまの500円で常設展を見られるのは、予定どおりなら2027年1月11日までです。
無料になるのは、高校生以下と18歳未満、65歳以上、障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳)を持つ人とその付添者1名です。手帳はミライロIDでもよく、その場合はチケット売り場に並ぶ必要はありません。
誰でも常設展が無料になる日は、原則毎月第2日曜日の「Kawasaki Free Sunday」、国際博物館の日(5月18日)、文化の日(11月3日)です。以前あった第2・第4土曜日と金曜・土曜日17時以降の無料化は、2023年4月以降に取りやめになっています。古い案内を見て夜に行くと有料です。
20名以上の団体は一般400円・大学生200円で、来館日の1週間前までに公式サイトのフォームから予約します。予約なしでは団体料金になりません。当日券は券売窓口で買えますが、混雑時には販売を休止することがあり、オンラインチケットもあります。「常設展パスポートチケット」(1,500円、2027年3月31日まで有効)は2026年度分は完売しました。
常設展の中で見られる版画の展示
新館2階の版画素描展示室では、館が持つ版画を小企画展として入れ替えて見せています。2026年10月12日までは「神話、寓意、祝祭——ルネサンスからバロックにおけるイタリア宮廷と版画」で、約50点の版画からルネサンスからバロック期の神話や寓意、宮廷の祝祭の図像をたどる展示でした。次は「劇場をめぐるイメージ―ドラクロワ、ドーミエからトゥールーズ=ロートレック、クリンガーまで」で、会期は2026年10月20日(火)から2027年1月11日(月・祝)まで、会場は同じ版画素描展示室です。
企画展「版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト」は2026年9月23日で終わりました。次の企画展は「テート美術館 ターナー展――崇高の絵画、現代美術との対話」で、会期は2026年10月24日(土)から2027年2月21日(日)までです。観覧料は一般2,400円・大学生1,500円・高校生1,100円(前売券は一般2,200円・大学生1,300円・高校生900円)で、中学生以下は無料です。観覧当日はこの券で常設展も見られます。ただ、2027年1月12日(火)から2月21日(日)までは常設展示室が閉室します。
2026年9月24日(木)から30日(水)までは、公式サイトのカレンダーで続けて「休館日」になっていました(理由は公式のお知らせに書かれておらず未確認)。10月1日(木)からは開いています。
開館時間
開館時間は9:30〜17:30で、金曜・土曜日は9:30〜20:00です。常設展・企画展とも、入室は閉室の30分前までです。休館日は毎週月曜日で、月曜日が祝日か振替休日のときは開館し、翌平日が休みになります。年末年始は12月28日〜1月1日です。
公式サイトのFAQでは、常設展を見る時間の目安は1時間から1時間30分程度です。企画展が空いている時間として挙げているのは、会期前半の平日、開館直後の9時30分頃、金・土曜日の18時以降です。
上野駅からの行き方
最寄りはJR上野駅で、公園口から徒歩1分です。京成電鉄の京成上野駅からは徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線の上野駅からは徒歩8分。JR上野駅の公園口からバリアフリーで美術館に入れると、公式の案内にあります。

美術館に駐車場はありません。館は公園周辺の駐車場の数に限りがあるとして、公共交通機関を勧めています。
遠くから来て開館の9:30に合わせるなら、前の晩の宿は楽天トラベルの上野駅周辺のホテル・旅館の一覧PRで探せます。
撮影・食事・ベビーカー・車いす
常設展の所蔵作品は、一部を除いて写真撮影ができます。フラッシュなど光を出すものと三脚は使えません。混雑の状況によっては撮影を全面禁止にする場合があり、企画展などで他館から借りた作品の撮影は基本的に断っています。
大きな荷物はコインロッカーに入れます。100円を入れて、開けるときに戻る方式です。館内と敷地内での持ち込みの食事は、前庭を含めて断っていて、食べるならレストラン「すいれん」になります。レストランとミュージアムショップ、本館ロビーは観覧券なしで使えます。
ベビーカーは持ち込めて、貸し出し用も2台あります。おむつ交換台は本館1階と企画展示館の地下2階のトイレに、授乳室は企画展示館の地下1階のエレベーター横にあります。乳幼児の入館制限はありません。
貸し出し用の車いすはインフォメーションで頼めます。多目的トイレは本館1階にあり、オストメイト設備と親子トイレがついています。盲導犬・聴導犬・介助犬は一緒に入れます。日本手話と日本語字幕つきで常設展の作品を解説するタブレットが6台あり、予約なしで借りられます。
編集部の考え
松方幸次郎が作品を集めたのは、自分が眺めるためではなく、日本の若い画家に本物を見せるためでした。その計画は恐慌で途切れ、戦争をはさんでパリから戻った作品を守って見せるために、この館が建てられています。いま19世紀ホールで開かれている特集展示は、その作品を開館のときから直してきた人たちの仕事を、館自身が見せるものです。