「うどんが喉ごしならきしめんは口先で平らな感触を楽しめます」。愛知県の麺類の店の組合が、100年フードの申請でうどんとの違いをこう書いています。名古屋駅では、その平たい麺を新幹線と在来線のホームで立って食べられ、どちらの店も朝7時に開きます。
名古屋駅で食べる
新幹線のホームでは、16・17番線(14号車付近)にJR名古屋駅 新幹線下り2号店があります。店を営むジャパン・トラベル・サーヴィスの案内では、営業は7:00〜21:00(ラストオーダー20:45)です。立ち食いそばと同じ形の店で、食券を買って注文します。人気の品に挙がっているのは、きしめん、かき揚げきしめん、牛肉きしめんです。
在来線の5・6番線には住よしがあり、営業は7:00〜21:30(ラストオーダー21:20)で、こちらも食券制です。店の案内には「在来線店舗の一番人気はワンコインきしめんです」とあります。どちらの店も、節のだしと醤油を効かせたつゆを自慢にしています。名古屋駅の近くに泊まった朝、列車に乗る前に寄ることもできます。
改札の外では、太閤通口から徒歩3分のエスカ地下街に、吉田麺業が営むきしめんよしだエスカ店があります。営業は月〜金曜が11:00〜15:00と17:00〜20:30(ラストオーダー20:00)、土日祝日が11:00〜15:00と17:00〜21:00(ラストオーダー20:30)です。元日とエスカ地下街の休業日のほかは開いていて、席は49席あります。名古屋コンシェルジュの店の案内によると、ここのきしめんのつゆは、ムロアジをベースにしただしにたまり醤油を加えた昔ながらの味で、だしは削るところから自家製です。麺は本社の製麺所から届く生きしめんで、国産の小麦と塩だけで作っています。品書きには、きしめんのほかに、おかめ、えび天おかめ、八宝などが並びます。
名古屋城と熱田神宮で食べる
名古屋城の中には名古屋城きしめん亭があり、地下鉄名城線の名古屋城駅7番出口から徒歩5分です。営業は10:00〜16:30で、12月29日〜31日は休みです。
熱田神宮の境内には宮きしめん神宮店があり、熱田駅・神宮前駅・神宮西駅の近くで、営業は9:00〜16:30(ラストオーダー)、年中無休です。
ここまでの営業時間は、どれもこの記事を書いた日に各店の案内で見たものです。
うどんとの違い
愛知県麺類食堂生活衛生同業組合のこの申請は、令和3年度に文化庁の100年フードの伝統の部門に認定されました。同じ申請の文は、平打ちなので茹で上がりが早く、温かいままでも冷たくしても食べられる、とも説明しています。
組合の「めんについて」のページによると、きしめんという名前には、料理の名前と麺の種類の名前の2つの意味があります。料理としては、ゆでた平打ちのうどんに、たまりで味を付けただしを張り、具を盛り付けたものを指します。麺の名前としては、平打ちにしたうどんを特にきしめんと呼び、地方によってはひもかわと呼ぶ所もあります。麺の厚さは1mm、幅は7から8mmほどです。
農林水産省のページによると、昔ながらの作り方では、つゆをムロアジとたまりで味付けします。たまりは、醤油が大豆と麦で造られるのに対して、ほぼ大豆で造る調味料です。つゆを濃くするのは、平たい麺は口に含んだときに味が薄く感じられ、汁をしっかりした味付けにする必要があったからだといわれています。同じページには、愛知県できしめんが広まったのは、うどんよりつゆの味が染みやすく、しっかりした味付けを好む県民の好みに合ったからではないか、という見方も載っています。今は、だし汁と醤油で作ることも多いそうです。
具は、名古屋市の観光サイト「名古屋コンシェルジュ」によると油揚げ、かまぼこ、青物、花かつおが基本です。組合のページによると、一般的な盛り付けは青味と味付けした油揚げ、かつお節です。具を問わずうどんかきしめんかを選べる店が多いそうです。食欲の落ちる夏には、麺もつゆも冷たくした「ころ」も食べられています。
取り寄せて家でゆでる
名古屋の製麺所2社、1923年(大正12年)創業の宮きしめんと、明治23年に荒子で創業した吉田麺業の通販から、乾麺と半生麺を取り寄せられます。値段は、この記事を書いた日に各社の通販に出ていた税込みの表示です。
| 作り手 | 品 | 麺の量 | つゆ | 賞味期限 | 値段 |
|---|---|---|---|---|---|
| 宮きしめん | 乾麺 しょうゆ味 13食入 | 1人前80g | 1食ずつ付く | 製造より180日 | 3,780円 |
| 宮きしめん | 半生麺 しょうゆ味 3食入 | 1人前100g | 付く | 製造より30日 | 1,404円 |
| 吉田麺業 | 乾麺 | 1袋220g(2人前) | 別売り | 製造日から1年 | 1,540〜7,300円(6〜30袋入で変わる) |
宮きしめんの乾麺は、同社が日本で初めて技術開発したという折りたたみ式で、13食入は1食ずつつゆと一緒にパックになっています。通販のほか、電話(0120-380758、受付は9:00〜17:00で日曜・祝日を除く)でも注文できます。吉田麺業の乾麺は、通販の原材料の表示が小麦粉(国内製造)と塩で、直射日光と湿気を避けて保存します。品によって製造の時期が違うので、賞味期限は袋の印字で確かめるよう、同社の通販に添え書きがあります。
ゆで時間は、乾麺か半生麺か冷凍麺かで変わります。吉田麺業のきしめん辞典(2026年5月12日)によると、同社の乾麺は約14分で、半生麺はそれより短く、冷凍麺は180gを電子レンジで3分、ゆでるなら1〜1分半です。吉田麺業は2026年4月から通販で冷凍麺も売っていて、同社の半生麺(上の表には載せていない品)の賞味期限は約50日です。
きしめんを楽天市場で探すPRと、ほかの作り手の乾麺のセットも見られます。
名古屋で買って帰るなら、吉田麺業のお土産のきしめんが、名古屋駅のPLUSTA名古屋中央などのキヨスク、名古屋城内の売店、中部国際空港セントレアおみやげ館、県営名古屋空港スカイショップ翼にあります。
1728年の句集に出てくる名前
名前そのものは古く、宮きしめんのページは、1728年の句集『二重袋』にきしめんを詠んだ句が載っていることを挙げています。組合のページによると、料理としての食べ方は江戸時代の終わりから明治の初めには出来上がっていたと言われています。名前の由来には説がいくつもありますが、どれも確かなものはなく、だれがいつ作ったのかの記録も残っていません。その理由として、きしめんが「大衆の中で生まれて、大衆の中で守り育てられてきた」食べ物だったからではないか、とあります。
宮きしめんのページによると、名古屋の辺りで平たい麺が好まれたのは、倹約のためにゆで時間を短くして燃料を節約したから、という説がよく言われるそうです。同社はこの説を紹介したうえで、ゆで時間は形よりも麺の加水量や塩分などの違いに左右されるところが大きいとして、後世のこじつけと見ています。申請の文がいう茹で上がりの早さとは、ここで見方が分かれます。同社自身は、表面積が大きいので中部地方の濃い醤油や味噌の汁をめん肌にのせて味わえることが、平たい形のわけだと推測しています。