「観光客の1番人気は『地獄炊き』ですが、島の人にとっては家庭での食べ方。」有川のうどん店を切り盛りしていた豊住紀美江さんは、五島手延うどん協同組合のサイトでそう話しています。地獄炊きは、長崎県新上五島町で、ゆで上げたうどんを大鍋ごと食卓に出し、煮えたぎる鍋からすくって、あご(トビウオ)のだしや生卵にからめる食べ方です。
鍋から直接すくう地獄炊き
地獄炊きは上五島の代表的な郷土料理で、あごだしには薬味を加えます。町の観光サイトによると、鍋からすくうのには「うどんすくい棒」を使います。
豊住さんの話が載っているのは、組合のサイトの「縁の下の力持ち」の2018年夏号です。当時、豊住さんは「うどん茶屋 遊麺三昧」の現場を切り盛りしていました。島の出身で、五島うどんは白米のようになじみ深い食べ物だといいます。
細くても、煮て伸びにくい
文化庁の一覧にある町の文には、工程の中で熟成を重ねてから乾燥させるので「コシが強く切れにくい麺が完成します」とあります。町の観光サイトは、「細麺でコシが強く、鍋で煮ても麺が伸びにくい」ことを、島で地獄炊きの食べ方が親しまれている理由に挙げています。中本製麺の地獄炊きの案内にも、いろいろな鍋の締めに入れても煮崩れがないとあります。
町の観光サイトによると、島で細々と手作業で作られていたことから、五島うどんは「幻のうどん」とも言われました。
椿油を塗り、2本の箸にかけて延ばす
うどんづくりは、小麦粉と水と海塩を混ぜる「練り上げ」から始まります。足で踏んで生地を延ばし、棒状から紐状へ少しずつ細くしていく間に、何度も生地を寝かせて熟成させます。組合のページには、この熟成こそ「五島手延うどんの命」とあります。
延ばす途中で塗るのが、島の特産の食用の椿油です。組合のページによると、椿油は、麺どうしがくっつかないようにするために使います。組合と文化庁の一覧にある町の文は、棒状の生地を2本の箸にかけ、引き延ばしては束ねる作業を繰り返して紐状の細い麺にし、熟成させてから時間をかけて乾燥させる、と製法を説明しています。新上五島町曽根郷の中本製麺は、今は一部を機械化したものの、棒状の生地を2本の箸にかけて手で引き伸ばし、束ねる作業は続けています。
有川港から歩いて5分の遊麺三昧
島で食べるなら、組合の直営店「うどん茶屋 遊麺三昧」が新上五島町の有川郷428-31にあります。2026年10月24日に見た組合のオンラインショップの案内では、有川港から歩いて5分で、営業は11:00〜14:30(ラストオーダー14:00)、休みは不定休です。席は52席あり、隣の新上五島町観光物産センターでは上五島の特産品を売り、観光案内もしています。地獄炊きを出しているかと値段は、同じ案内から進める店のページの品書きで確かめます。
有川港へは、九州商船の高速船が佐世保港から出ていて、所要時間は高速船で最短1時間25分(九州商船の目安で、運航状況で前後します)。佐世保港の乗り場の鯨瀬ターミナルビルは、佐世保駅から歩いて約5分です。長崎港から有川港へ向かう高速船もあり、町の観光サイトのダイヤ案内に載っています。
高速船は前もってWebか電話で予約します。フェリーに旅客だけで乗る場合は当日発売のみです(お盆時期を除く)。予約したきっぷは、佐世保なら鯨瀬ターミナルビル、有川なら有川港ターミナルビルの1階の窓口で発券します。
取り寄せて家でゆでる
ますだ製麺の「五島手延うどん 300g」は、賞味期限が製造日から1年です。あごだしのつゆは関連商品として別に売っていて、2026年10月24日に見た商品ページでは、地獄炊きつゆ 360mlは675円(税込)です。あごだしスープを組み合わせた「五島手延うどん・スープセットA」もあり、麺もスープも賞味期限は製造日から1年です。
中本製麺の「椿うどん 300g 袋」は同社の定番の品で、商品ページには「一番腰の強い」五島手延うどんとあり、地獄炊きや鍋物の締めにはこの椿うどんを勧めています。ゆで時間は8〜10分です。
家でゆでる時間は、案内によって違います。組合の食べ方のページでは、大鍋にたっぷり湯を沸かし、1人前80〜100gを6〜7分ほどゆでます。ゆで上がったらうどんをすくって、あごだしの麺つゆにつけるか溶き卵にからめ、ねぎ・しょうが・かつお節を加えます。溶き卵で食べるなら、ポン酢を少し加えるのが組合の勧めです。中本製麺の地獄炊きの作り方は、うどん100gに湯1Lで、ゆで時間は5〜8分です。煮えてきたら各自で取り、つけ汁はしょうゆだけでも、あごの煮出し汁やみりんで割ったものでもよく、卵を割り入れて好みの薬味を加えます。同じ中本製麺でも、椿うどんの商品ページは8〜10分、地獄炊きの作り方は5〜8分と案内ごとに時間が違うので、買った品の案内に合わせてゆでます。
組合のオンラインショップで買うなら、2026年11月1日の注文分から、組合の通販のセット・単品・だし・つゆのほぼ全商品が今の価格より10〜15%値上げになります。上のますだ製麺と中本製麺の品は、それぞれの会社の通販のページで売られているものです。
ほかの製麺所の品も合わせて比べるなら、五島うどんを楽天市場で探すPRと、乾麺とあごだしのつゆが並びます。
五島うどんを作る人たち
地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を文化庁が認める「100年フード」に、五島うどんは令和6年度、伝統の部門で入りました。申請したのは新上五島町です。由来は伝承で、文化庁の一覧の文には、遣唐使船の寄港地だった上五島に「遣唐使によって伝えられたといわれています」とあります。
五島手延うどん協同組合は、昭和59年1月31日に、上五島の5町のうどん製造業者12人で設立されました。組合のサイトの2025年夏・秋号には、2022年春に父の祥一郎さんから社長を継いだ有限会社浜崎製麺所の浜崎祥雄さんが出てきて、「全国レベルでみると、五島うどんの認知度はまだまだ低いのが実情かと思います。」と話しています。