こしがや鴨ネギ鍋は、埼玉県越谷市の鍋です。しょう油ベースの鍋つゆに合鴨の肉を入れ、越谷ねぎを煮込みと焼きの二通りで使います。決まりはこの 3 つだけで、隠し味やほかの具は店ごとに違います。文化庁が、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を認定する100年フードに、令和5年度、未来の100年フード部門で認定されました。申請したのは越谷商工会議所青年部です。
越谷ねぎと宮内庁の鴨場から
認定の文は、この鍋が生まれた訳を、地元特産の越谷ねぎと、市内に宮内庁の鴨場があることの二つで説明しています。越谷のねぎは、文化・文政期(1804〜1830年)に編まれた『新編武蔵風土記稿』に越ヶ谷の名物として載っていると、越谷市の農産物のページにあります。軟白部が長く、巻きが多く、加熱しても煮崩れしないのが特徴で、いまは新方・増林・荻島の各地区を中心に作られています。足立区のねぎ専門の市場にも出荷され、そこで仲買に選ばれたものは千寿葱の名で東京の料亭に売られています。越谷ねぎという呼び名は、越谷産のねぎの総称です。
もう一つの鴨は、越谷市大林にある宮内庁埼玉鴨場にちなんでいます。宮内庁が管理する鴨場は、埼玉鴨場と千葉県市川市の新浜鴨場の 2 か所だけです。鴨が葱を背負って来る、ということわざは、鴨の肉に葱まで添えてあればすぐ鴨鍋ができるという意味で、認定の文はこれを引いて縁起のいい鍋だと言っています。
条件は 3 つだけ
公式サイトの掲載要件は、越谷産の長ねぎを煮込みと焼きの両方で使うこと、店主が選んだ合鴨の肉を使うこと、鍋つゆがしょう油ベースであること、の 3 つです。店は越谷商工会議所の会員であることも要ります。認定の文には「越谷ねぎは煮込みと焼きのダブル使い」とあり、元祖の鍋はつゆに鴨つくねと野菜を入れ、焼いたねぎを最後に薄く切った鴨肉と一緒に載せます。
なぜねぎを二通りにするのかは、越谷市の子育てサイトのクワイエが2024年5月に商工会議所に聞いています。回答は「冬の焼きネギは特に甘みが強く両方を味わっていただきたい」で、レシピは当時の越谷市商工会青年部のメンバーの話し合いで決まり、その後の改良はないと商工会議所は答えています。ほかの候補はなく、はじめからこの鍋だったそうです。
2005年の産業フェスタの大鍋
公式サイトの由来では、当時の越谷市商工会青年部が、地元を盛り上げようと2005年11月のこしがや産業フェスタで5,000人分の大鍋を出したのがきっかけです。その後、彩の国鍋合戦(現在のニッポン全国鍋グランプリ)で 2 度優勝し、2011年度にこしがやブランドの認定品になりました。文化庁の100年フードの認定は2023年度で、公式サイトのお知らせは2024年3月18日付です。公式サイトの運営はいま、越谷商工会議所の特産品推進事務局です。
食べられる店は 7 店
公式サイトの鴨ネギ鍋提供店は、2026年10月の時点で 7 店です。越谷エリアのそば処久伊豆、南越谷・新越谷エリアの居酒屋いちまると居酒割烹若竹、蒲生エリアの石臼挽そば更科、北越谷エリアの Free Style Dining ななうみ(蕎麦清藤が2026年1月から休業中で、ななうみで提供)、大袋エリアのそば処増林砂場、せんげん台エリアの手打ちそばふしみです。
鍋は冬のものです。若竹の店ページには「鴨ネギ鍋は冬季限定になります」とあり、提供は10月半ばから4月末まで、1人前1,980円(税込)で、1人前から作ります。いちまるは1人前2,980円(税込)で、越谷市内の契約農家から毎日仕入れる越谷ねぎを年間を通して使うと店ページにあります。この 2 店の住所は、公式サイトではどちらも南越谷1-26-9です。久伊豆(東越谷4-24-6)は1人前3,000円(税込)で、2人前からの注文、提供は11月から3月末まで、予約が必須です。値段はどれも2026年10月に公式サイトで見たもので、公式は営業日や営業時間を予告なく変えることがあると断っています。行く前に各店へ確かめてください。
埼玉鴨場は見学会のときだけ
宮内庁の鴨場のページによると、埼玉鴨場と新浜鴨場それぞれの約12,000平方メートルの池には、毎年2千羽を超える野鴨などの渡り鳥が越冬のために飛来します。11月中旬から翌年2月中旬の狩猟期間には、天皇陛下の思召しにより内外の賓客をもてなす場に使われます。捕まえた鴨は足環を付けて全て放し、食用にはしません。鍋の鴨は鴨場の鴨ではなく、店主が選んだ合鴨です。
ふだんは中に入れません。政府広報オンラインによると、一般向けの見学会が例年2月頃と6月頃にあり、募集は例年4月頃と12月頃に宮内庁ホームページのお知らせで発表されます。見学会は猟期の外なので、実際の鴨猟は見られません。越谷市観光協会のページには、越谷市や埼玉県が開く見学会もあり、対象者は主催によって違うとあります。
越谷駅・新越谷駅・南越谷駅へ
越谷市の鉄道案内では、市内の駅は東武スカイツリーラインの越谷駅・新越谷駅・北越谷駅・蒲生駅・大袋駅・せんげん台駅と、JR武蔵野線の南越谷駅・越谷レイクタウン駅です。南越谷駅と新越谷駅は乗り換えができます。提供店のエリア名は駅の名前と同じで、いちまると若竹は南越谷・新越谷エリア、久伊豆は越谷エリアです。店から駅までの道のりは、各店のページの住所と地図で確かめてください。
お取り寄せ
公式サイトのギフトセットのページには、越谷市観光協会がこしがや鴨ネギ鍋ギフトセットをリニューアル販売し、注文は観光協会のホームページで受けるとあります。お知らせでは2024年12月1日からの販売で、その前の2023年度の冬は販売を中止していました。今季の販売の時期は未確認です。通販の一覧は楽天市場でこしがや鴨ネギ鍋を探すPRで見られます。
編集部の考え
この鍋で作る側が決めたことは 3 つだけです。しょう油ベースのつゆ、店主が選んだ合鴨、越谷ねぎの煮込みと焼き。それ以外は各店に任せると公式サイトにあり、2005年の大鍋のレシピから改良はないと商工会議所は答えています。提供店は 7 店で、名前にそばが付く店が 4 店、公式に値段のある 3 店では1人前1,980円から3,000円まで。同じ名前の鍋を、違う店が違う値段と違う具で、冬に出しています。