ひたちなか市のほしいもは、同じ産地の品でも品種と干し方で味が変わります。ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会が挙げる品種はたまゆたか、いずみ、べにはるか。干し方は、太陽と風に当てる天日干しか、機械で乾かすか。薄く切って干す平干しと、日数をかける丸干しの違いもあります。そのうえ農家ごとに作り方も売り方も違い、直売所でしか売らない農園もあれば、自社のサイトで通販する農園もあります。
この記事は、その違いで選んで農家から買うための案内です。
品種で違う色と甘さ:たまゆたか・べにはるか・いずみ
たまゆたかは、協議会が茨城のほしいもの中で最もポピュラーな品種と紹介するもので、産地で長く作られてきました。温めると色が黄色く変わり、その頃が食べ頃です。
べにはるかは文化庁の100年フードの説明にある「強い甘みが特徴」の品種で、県の農業総合センターの記事では干し上がりが黄金色、肉質はねっとりしています。協議会はやわらかな食感を挙げています。
いずみは濃厚な甘みと柔らかな食感の品種ですが、生産と加工が難しく、作る量が少ない品種です。
このほかに県の記事は、肉色が橙色で干しいも向きのほしあかね、肉色が紫色のふくむらさきを挙げています。ひたちなか市部田野のほしいも村飛田勝治農園は、たまゆたか、いずみ、べにはるかなど8品種を栽培しています。ただ、直売所に並ぶ品ぞろえは天候や仕上がりで変わるので、目当ての品種があれば電話で在庫を確かめてから行きます。
硬くなったほしいもは、電子レンジで30秒、オーブントースターで2分ほど温めると柔らかくなります。焦げやすいので弱火で。白い粉はほしいもに含まれる麦芽糖が結晶になったもので、食べて差し支えありません。
干し方で違う香りと日数:天日干しと機械乾燥
作り方は、蒸す、切る、干す。県の農業総合センターの記事は、甘いほしいもを作る要点として蒸し方と乾かし方を挙げています。蒸すときは、酵素がデンプンを分解して麦芽糖を作る温度帯をゆっくり通して、麦芽糖を増やします。
干し方は2通りあります。天日乾燥は雨よけのビニールハウスの中で干すもので、平干しで7日程度、丸干しで14日程度かかります。費用があまりかからず、香りと色つやに優れます。機械乾燥は冷風か温風で乾かします。7〜48時間で仕上がり、天候に左右されにくい方法です。2つを組み合わせる農家もあります。
ひたちなか市の農園で見ると、部田野の飛田勝治農園は手作業の天日干しです。協議会のインタビューで飛田勝治さんは、平干しは1週間、丸干しは約1か月かかると話しています。小谷金のオオスガファームは、収穫したさつまいもを倉庫で寝かせて熟成させ、機械で乾かしたあとに天日干しでさらに水分を飛ばします。市販の品より厚めに切るのもこの農園のやり方です。
飛田勝治さんの原料いもの選び方
協議会の生産者インタビュー(掲載の時期は書かれていません)で、飛田勝治さんは父から経営を継ぎ、妻と二人で直売所を建てて直売を始めた、と話しています。客の声が直に聞けるようになったことが、原料いもの選抜を始めたきっかけでした。「もっとおいしいって言ってもらえるものを作りたい」。種いもの選抜と、肉質や形の選抜を重ね、T.T34号という系統を見出した頃には20年あまりが経っていました。インタビューではこれをT.T34号たまゆたかと呼んでいて、たまゆたかの系統です。その種いもを飛田さんは近隣の農家にも無償で配りました。
畑では、いものうねの間に麦を植えて寒さから守る麦間栽培を続けています。昔からこの土地にあったやり方で、今も続ける農家は少なくなりました。干す工程を機械で行う農家が増える中で、飛田さんは手作業の天日干しについて「うちはできる限りこの伝統の製法にこだわっていきたい」と話していました。農園の今のサイトにも「昔ながらの天日干しにこだわりながら」とあります。
農園ごとに違う売り方と時期
協議会によると、生産農家で加工が始まるのは12月上旬頃で、一般的には翌2月頃まで。年末は予約でいっぱいになることがあります。秋に掘ったいもは、すぐには加工しません。デンプンを糖に変えるために寝かせる期間は、軒下やハウスなら40日以上が目安です(県の農業総合センター)。実際の時期と売り方は農園ごとに違います。
| 農園 | 売り方 | 時期 | 支払い・発送・確かめ方 |
|---|---|---|---|
| ほしいも村飛田勝治農園(部田野831) | 直売所だけ。通販と電話での販売はしていない | 12月頃〜翌3月頃。月曜定休(祝日なら火曜)。平日9:30〜15:00、土日祝9:00〜17:00。最終日は原料いもがなくなり次第早まることがある | 現金のみ。直売所からクロネコヤマトの宅急便を出せる。予約・取り置きは不可。品ぞろえは営業時間内に電話(029-263-0024)で確かめられる |
| オオスガファーム(小谷金11055) | 直売所と、自社サイトの通販 | 直売所の営業時間は公式サイトに無い。訪ねる前に電話(029-262-4741)で確かめる | 直売所ではほしいものほかスイーツも売る |
| 干しいも工房 遊心(馬渡318-1) | 自社サイトで通販する農家直売の店 | 2026年は11月中旬頃に販売開始の予定(9月11日の告知)。詳しい日はサイトで知らせる | 店頭で買えるかは公式サイトで確かめられない |
このほかの農家は、協議会の生産農家一覧から探せます。一覧には電話番号と三ツ星の印、品評会の入賞回数が並び、電話で確かめるのは小売りや発送に対応しているかどうかです。三ツ星は、生産履歴の記帳、衛生加工の実践、適正な品質表示の3項目を満たした生産者の認定で、味の格付けではありません。品評会は、味・見た目・食感を試食の審査と消費者の投票で比べる年1回の会です。問屋は在庫を調整して通年で売るところもあり、協議会のページに問屋の一覧もあります。
現地へ行けないなら、Amazonでひたちなかのほしいもを探すPR方法もあります。この記事の農園の品とは限らないので、売り手と品種、干し方の表示を見て選びます。
買ったあとの保存は、常温で1週間、冷蔵で2週間、冷凍で1年以上と言われていますが、乾き具合などで変わります。開封したら冷蔵庫に入れて早めに食べきります。密封していない箱を暖かい所に置くと、数日でかびることがあります。
2026年は10月24日(土)・25日(日)の2日間、ニューポートひたちなか ファッションクルーズのメインゲート外で『芋に沼る2日間』が開かれました。10:00〜17:00の販売会で、ほしいも農家が自分で売りました。
公共交通で飛田勝治農園へ
毎日走る便で往復を1組だけ示します。行きは勝田8:42発のひたちなか海浜鉄道湊線で那珂湊8:56着。那珂湊駅9:50発のひたちなか市営スマイルあおぞらバス那珂湊コースに乗り、部田野十文字に10:00着、直売所まで徒歩1分です。帰りは部田野十文字12:25発のバスで那珂湊駅12:39着、湊線は那珂湊12:51発で勝田13:06着。農園にいられるのは2時間あまりで、直売所の奥に簡単な休憩スペースがあります。平日の開店は9:30なので、10:00に着けば開いています。月曜(祝日なら火曜)は定休日です。
運賃は湊線の勝田〜那珂湊が大人350円、バスは100円。湊線ではSuica、PASMOなどのIC乗車券が使えないので、現金を用意します。バスは12月29日〜1月3日が運休です。年末に買いに行く人は、この期間はバスで直売所へ行けません。時刻は湊線が2026年3月14日改正、バスが2026年5月30日改正のものです。
車なら、東水戸道路のひたちなかICで降りて国道245号を大洗方面へ。駐車場は直売所の右隣に5〜6台と、徒歩3分の第2駐車場があります。
明治後半に始まった産地
ほしいもが茨城に伝わったのは明治時代後半です。協議会の産地紹介では、湊町のせんべい屋・湯浅藤七が1908年に製造を始め、同じ頃に阿字ヶ浦の小池吉兵衛も始めました。その後、農業と漁業に携わる人の副業として定着しました。阿字ヶ浦の堀出神社には小池吉兵衛の胸像がまつられています。農林水産省のうちの郷土料理によると、戦争中は生産がほぼ止まり、戦後に県の勧めもあって戻りました。
ひたちなか市は、ほしいもが美味しい理由として、冬の長い晴天、ミネラルを多く含んだ潮風、水はけのよい黒ぼく土を挙げています。茨城県は全国の干しいも生産量の約9割を占め、その大部分を作っているのがひたちなか市、東海村、那珂市です。文化庁の100年フードには令和3年度に、近代の100年フード部門で認定されました。申請したのはひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会です。