大阪・関西万博(EXPO 2025)は2025年10月13日に閉幕しました。まもなく1年になります。会場だった夢洲や、万博に関わった企業・自治体からは、この1年の間にレガシーの行き先に関する発表が続きました。行き先を大きく分けると、横浜花博(GREEN×EXPO 2027)の会場に来るもの、夢洲や大阪にそのまま残るもの、ほかの場所へ行き先が決まったものの3つです。ここでは2026年9月時点で当サイトが公式発表で確認できた範囲を一覧にしました。解体や撤去を公式に確認できていないものは「消えた」とは書かず、行き先が分かった範囲だけを載せています。
横浜花博に来るもの
| 何が | どこへ | 状況 | 時期 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 大屋根リングの木材 | KAJIMA TREE(鹿島建設) | 起工済み、加工方法・展示内容は未発表 | 2026年6月9日起工、完成時期は未発表 | GREEN×EXPO協会、鹿島建設 |
| 大屋根リングの木材 | かながわ館の花壇(神奈川県) | 発表済み | 開幕(2027年3月19日)にあわせて公開予定 | 神奈川県 |
| パナソニック「ノモの国」のファサード・設備 | やさしくなりたい。STUDIO(東邦レオ) | 発表済み、館内の展示内容は未発表 | 2027年3月19日グランドオープン予定 | 東邦レオ、パナソニックグループ |
| アイルランドパビリオン、ORA外食パビリオンの建材 | メインゲート・レストラン(TSP太陽) | 発表済み | 完成時期は未発表 | TSP太陽 |
| null²の新作「null⁴(テトラヌル)」 | 会場SATOYAMA Village内 | 発表済み | 2027年3月19日開幕にあわせて公開予定 | サステナブルパビリオン2025 |
| null²の常設シアター「null²ⁿ」 | 横浜ランドマークタワー(会場外) | 一般チケット販売中 | 2026年10月14日グランドオープン予定 | サステナブルパビリオン2025 |
| イタリア館の建築・展示要素の一部 | GREEN×EXPO 2027 イタリア館 | 公式参加契約は調印済み、再現する要素の詳細は未発表 | 2027年開幕予定 | GREEN×EXPO協会 |
大屋根リングの木材とノモの国の設備は、会場そのものに建材として組み込まれます。アイルランドとORA外食パビリオンの建材は、メインゲートとレストランという来場者が必ず通る場所に使われる計画です。null²だけは行き先が2つに分かれていて、会場内に置かれる新作の彫刻と、みなとみらいにできる常設シアターは別のものです。イタリア館は建物や展示の一部を取り入れる予定ですが、どの部分かは2026年9月時点で発表されていません。
夢洲・大阪に残るもの
| 何が | どこへ | 状況 | 時期 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 大屋根リング北東部 約200m | 記念公園ゾーン(大阪市が公園施設として整備) | 夢洲第2期区域マスタープランVer.3.0を2026年6月19日に策定 | 公開時期は未定 | 大阪市、大阪府 |
| (仮称)EXPO2025記念館 | 記念公園ゾーン内に新設 | 2026年度に整備内容を調査・検討中 | 開館時期は未定 | 大阪市 |
| 静けさの森(樹木約1,500本) | 夢洲会場内にそのまま残置 | 保全組織「静けさの森 共鳴機構(FoR)」が2025年9月12日に設立 | 継続中 | 一般社団法人better Co-Being |
大屋根リングは全部が解体されるわけではありません。北東部の約200mは、大阪市が記念公園の一部として残す方針で、隣に(仮称)EXPO2025記念館も新設される計画です。ただし、どちらも2026年9月時点で公開・開館の時期は決まっていません。会場中央にあった「静けさの森」は、間伐予定だった樹木約1,500本を万博記念公園や大阪城公園などから移植して作られた森です。会期後もそのまま残す方針が示され、慶應義塾大学教授の宮田裕章氏と建築家の藤本壮介氏を共同代表とする「静けさの森 共鳴機構」が、保全と活用を引き継いでいます。
ほかへ行き先が決まったもの
| 何が | どこへ | 状況 | 時期 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 大屋根リング南西部 約350m(解体後の部材) | 阪神電気鉄道 伝法駅・福駅(檜材の柱2本) | 有償で譲渡済み | 新駅舎の供用にあわせて設置予定 | 阪神電気鉄道 |
| 同上の木材 | 高知県(ヒノキの柱8本・CLTパネル23枚、計約53立方メートル) | 無償で譲渡済み | 引き渡しは2026年5月〜9月 | 高知県 |
| シグネチャーパビリオン「Dialogue Theater – いのちのあかし –」 | 大阪府泉佐野市 泉佐野丘陵緑地(敷地全体を移設) | 移設が正式決定。イチョウの木は移植済み | 完成予定は2028年 | 一般社団法人Dialogue Theater |
| 同パビリオンのイチョウの苗木 | 兵庫県芦屋市翠ケ丘町 | 寄贈済み | 2026年6月20日 | 一般社団法人Dialogue Theater |
| ルクセンブルクパビリオンの基礎コンクリートブロック(約542トン) | ネスタリゾート神戸(園内の環境整備資材) | 発表済み | 万博閉幕後に実施予定 | 株式会社船場 |
| 会場で使われた樹木(泉北竹城台一丁団地の建替えで伐採した木) | 泉北パークヒルズ竹城台(堺市南区) | おかえりイベントを開催 | 2026年3月25日 | 独立行政法人都市再生機構 |
このなかで規模が大きいのは、河瀨直美氏がプロデュースしたシグネチャーパビリオン「Dialogue Theater – いのちのあかし –」です。一般社団法人Dialogue Theaterによると、ランドスケープを含む敷地全体を移設するのは、大阪・関西万博の出展施設のなかでもこの1件だけだといいます。パビリオンの完成は2028年を予定し、シンボルだったイチョウの木はすでに移植が終わっています。育てられた苗木の1本は、2026年6月20日に兵庫県芦屋市へ寄贈されました。ほかに、大屋根リングの部材が鉄道の駅のベンチや自治体のモニュメントに、ルクセンブルクパビリオンの基礎コンクリートが観光施設の資材に、団地の建替えで使われた樹木がもとの団地に、それぞれ渡っています。
まだ発表されていないもの
2026年9月時点で、当サイトが確認できた出典の範囲では、次のことがまだ発表されていません。
- KAJIMA TREEの木材の加工方法、館内の展示内容、完成予定日
- やさしくなりたい。STUDIOの具体的な展示物や体験の内容
- イタリア館で、大阪・関西万博のどの建築・展示要素を再現するか
- (仮称)EXPO2025記念館の具体的な整備内容と開館時期
- 剰余金の3つの使い道それぞれに配分される個別の事業と金額の内訳
- 大屋根リングの木材のうち、阪神電気鉄道・高知県以外の譲渡先(協会は計約4,000立方メートルの譲渡を予定)
編集部の考え
一覧にしてみると、大阪・関西万博のレガシーには3つの型があると思います。建物や部材をそのまま移設する型(横浜のKAJIMA TREE、泉佐野のいのちのあかし)、跡地にとどめる型(大屋根リングの一部、静けさの森)、部材だけを切り出して各地へ分ける型(阪神電気鉄道や高知県、ネスタリゾート神戸)です。1970年の大阪万博は、太陽の塔という1つのシンボルを万博記念公園にそのまま残しました。2025年の万博は、1つのものを丸ごと残すのではなく、複数の場所に分けて残す道を選んだのだと思います。
横浜花博に来る人にとっては、KAJIMA TREEやかながわ館の花壇、やさしくなりたい。STUDIO、メインゲートとレストランを見れば、大阪・関西万博の一部を実際に目にすることになります。それは万博全体の再現ではなく、選ばれた部材や建築の一部だと分かって見るほうが、実感が持てると思います。
大阪・関西万博からの継承のほかの例は、特集ページ「大阪・関西万博からの継承」にまとめています。
