大阪・関西万博(2025年4月13日〜10月13日、夢洲)のシンボルだった大屋根リングは、閉幕後に姿を消したわけではありません。木材の一部は横浜花博(GREEN×EXPO 2027)の会場に運ばれ、別の一部は夢洲に残る計画が進んでいます。行き先ごとに発表の主体が違うため、全体像がまとまって公表されているわけではありません。以下は、当サイトが公式発表で確認できた行き先の、2026年9月時点の状況です。
早見表
大屋根リングの木材や部材が、どこに、どれだけ、いつ渡るかを表にしました。数量が公表されていない項目は「非公表」と書いています。
| 行き先 | 何を | どれだけ | 時期 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 横浜花博 KAJIMA TREE(鹿島建設) | 大屋根リングの木材 | 非公表 | 2026年6月9日起工、完成時期は未発表 | GREEN×EXPO協会、鹿島建設 |
| 横浜花博 かながわ館の花壇(神奈川県) | 大屋根リングの木材 | 非公表 | 開幕(2027年3月19日)にあわせて公開予定 | 神奈川県 |
| 横浜花博 RING PASS(GREEN×EXPO協会・横浜市) | 大屋根リングの杉材(横浜市が譲り受けた分の一部) | 券2,027枚。木材の量は非公表 | 申込2026年9月18日正午〜30日(抽選)、発送2027年2月 | GREEN×EXPO協会 |
| 夢洲・記念公園ゾーン(大阪市) | 大屋根リングの構造体(北東部) | 約200m。周辺を含む記念公園ゾーンは約2.9ha | 保存方針2025年9月16日、整備方針2026年2月13日、公開時期は未定 | 大阪市、2025年日本国際博覧会協会 |
| 阪神電気鉄道 伝法駅・福駅 | 大屋根リングの檜材の柱 | 2本 | 新駅舎の供用にあわせて設置予定(時期未定) | 阪神電気鉄道 |
| 高知県 | 大屋根リングのヒノキの柱・CLTパネル | 柱8本、CLTパネル23枚、計約53立方メートル | 引き渡しは2026年5月〜9月の予定 | 高知県 |
横浜花博での再利用:KAJIMA TREE、かながわ館の花壇、RING PASS
GREEN×EXPO協会(公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)のサイトによると、鹿島建設は大屋根リングの木材の譲渡先です。Village出展の1つ「KAJIMA TREE」で、この木材を再利用します。高さは約60mで、再生木材を使った建物として国内最大級だと鹿島の特設サイトは説明しています。2026年5月13日に1/100模型を初公開し、6月9日に起工しました。木材の加工方法や展示内容、完成予定日は、2026年9月時点で未発表です。
神奈川県は2026年9月8日の開催半年前発表会で、県が出展する「Vibrant INOCHI Forest かながわ館」の庭園中央「かながわの花壇」に、大屋根リングの木材を再利用すると発表しました。花壇には季節ごとにナノハナ、パンジー、ヒマワリなど県産の花を植える計画です。
GREEN×EXPO協会は2026年9月15日、横浜市が2025年日本国際博覧会協会から譲り受けた大屋根リングの木材の一部で、通期パス「RING PASS」を2,027枚限定で作ると発表しました。杉材の券にシリアルナンバーを付け、50,000円(通期パスの料金と送料を含む)で抽選販売します。申込は9月18日正午から30日まで、発送は2027年2月です。横浜市が木材を持っていることはこの発表で初めて分かりました。市が持つ量と券以外の使い道は公表されていません(RING PASS のニュース)。
木材が渡った先は、企業のパビリオン、自治体の花壇、横浜市の木材で作る入場券という3つの形です。ほかに渡った先があるかは、2026年9月時点で公表されていません。
夢洲に残る北東部約200m
夢洲側でも、大屋根リングの扱いは決まりつつあります。国・大阪府・大阪市・経済団体・2025年日本国際博覧会協会でつくる「大阪・関西万博の大屋根リングの活用に関する検討会」は、2025年5月から4回の会合を重ねました。2025年9月16日の第4回会合で、大屋根リングの一部を原型に近い形で残す方針を決めています。協会の公表資料によると、残す場所は夢洲第2期区域のヘルスケア跡地ゾーンに隣接する北東部約200mです。理由は、夢洲駅からのアクセスと、夢洲第3期区域で今後行う埋立工事です。第3期区域だと一般利用まで時間がかかります。
大阪府・大阪市が進める第2期区域の開発事業者の公募は、このリング約200mと周辺エリアを除外して実施し、リングとその周辺は大阪市が万博を記念する公園・緑地として整備・維持管理する方向で検討するとされました。改修と10年間の維持管理の概算費用は、公園施設(準用工作物)として整備する場合で約55億円、建築物とする場合で約90億円です。
2026年2月13日の大阪市戦略会議では、話がさらに具体的になりました。大屋根リングの一部を含む周辺エリア約2.9haを「記念公園ゾーン」として大阪市が整備・管理し、リング北東部約200mは人が登れる公園施設として、あわせて(仮称)EXPO2025記念館を新設する方針が示されています。この方針は、2026年4月30日の副首都推進本部(大阪府市)会議で「夢洲第2期区域マスタープランVer.3.0(案)」に盛り込まれました。案の説明資料では、記念公園ゾーン約2.9haに、約200mを残して展望台として改修する大屋根リングと、万博の記憶や最先端技術を発信する記念館を置くとしています。リングの改修費は博覧会協会の試算で約40億円、財源は万博の剰余金です。5月1日から6月1日までのパブリックコメントと府議会・市会での議論を経て、大阪府・大阪市は2026年6月19日にVer.3.0を策定したと発表しました。一般公開の時期は、2026年9月時点でこれらの資料に記載がなく、未定です。
保存の候補だった夢洲第3期区域部分の南西約350mは、解体する方針です。協会の公表資料によると、部材リユースの需要が増えていることから、この部分も可能な限りリユースするとしています。
ほかの木材の行き先
2025年日本国際博覧会協会は、リユースマッチング事業「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」で大屋根リングの木材の譲渡先を公募してきました。2026年3月30日の発表によると、2026年2月までの4回の公募で、地方公共団体や民間企業などに約4,000立方メートルの木材を譲渡する予定です。個別の譲渡先をすべて確認することはできませんでしたが、当サイトが公式発表で確かめられたものを2件挙げます。
阪神電気鉄道は2026年6月9日、大屋根リングの檜材の柱2本を有償で譲り受けたと発表しました。阪神なんば線の伝法駅・福駅の新駅舎で、待合ベンチに加工して設置する計画です。
高知県は2025年12月19日、ヒノキの柱8本とCLTパネル23枚、合計約53立方メートルを無償で譲り受けたと発表しました。引き渡しは2026年5月から9月の予定で、リングのレプリカやモニュメント、什器、空港や駅のゲートウェイ、よさこい文化祭、子ども向け遊具などへの活用を計画しています。
ほかの自治体・企業への譲渡については、2026年9月時点で当サイトは公式発表で確認できていません。
編集部の考え
1970年の大阪万博は、太陽の塔という単体のシンボルを万博記念公園にそのまま残しました。大屋根リングの残り方は、それとは違うと思います。北東部約200mが夢洲にほぼそのままの形で残る一方、南西部は解体されて部材が全国の駅や自治体、横浜花博の会場へ散っていきます。1つの建築物が丸ごと残るのではなく、部材が分かれて各地に渡っていく残り方です。
横浜花博でKAJIMA TREEやかながわ館の花壇を見るときも、この見方が役立つと思います。見えているのは大屋根リングという建物の移設ではなく、その部材の一部です。夢洲に残る約200mを含めて全体像を思い浮かべると、リングがどう受け継がれているかが分かりやすくなると思います。
大阪・関西万博から受け継がれるほかの例は、特集ページ「大阪・関西万博からの継承」に載せています。
