大阪・関西万博で約 60 万人(GREEN×EXPO協会の案内では約 54 万人)が入った鏡のパビリオン「null²(ヌルヌル)」は、閉幕から 1 年後の 2026 年 10 月 14 日に、横浜ランドマークプラザ 5 階の常設シアター「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」として再開します。そして 2027 年 3 月 19 日に開幕する GREEN×EXPO 2027(横浜花博)の会場には、4 棟の鏡面体が回転する屋外作品「null⁴(テトラヌル)」が置かれます。
プロデューサーの落合陽一氏は、この 2 つを null² の「移設」ではなく「転生」と呼んでいます。何が受け継がれ、何が変わるのか。株式会社サステナブルパビリオン2025と GREEN×EXPO協会(公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)の発表、2 つの公式サイト、落合氏本人の note を読んで整理しました。数字と日付は 2026 年 9 月 13 日時点の発表によります。
null² は何だったか
null² は、2025 年 4 月 13 日から 10 月 13 日まで開かれた大阪・関西万博で、落合氏がプロデュースしたシグネチャーパビリオンです。発表主体の説明では、仏教の「空」とコンピュータの「null」を重ねた考え方を土台に、特殊なミラー膜と LED、ロボティクスを組み合わせた体験型の作品でした。外壁の鏡が周囲の風景を映しながら波打つように変形し、中では来場者をデジタル化した分身「Mirrored Body」と向き合う構成でした。
会期中の来場は、発表主体の株式会社サステナブルパビリオン2025によると延べ約 60 万人、GREEN×EXPO協会の null⁴ のページでは「国内外から約54万人」です(数え方の違いは公表されていません)。分身を作るアプリ「Mirrored Body」は 17 万人が体験しました。Casa BRUTUS の「ベストパビリオン20」で 1 位、みんなの建築大賞 2026 の大賞(一般投票 13,750 票)、JCD/DSA 日本空間デザイン賞の銀賞を受けています。閉幕後に始まったクラウドファンディング「ぬるぬるのお引越」(READYFOR、2025 年 10 月 1 日から 12 月 19 日)は、開始 23 時間で 1 億円を超え、最終的に 15,821 人から約 2 億 8,150 万円を集めました。引越先が花博に決まったことは、発表に先立つ 2025 年 12 月 17 日に、このページの追記で支援者に知らされています。
2 つの続き
2026 年 4 月 7 日の発表で、null² の続きは 2 つに分かれました。
| null²ⁿ(ヌルヌルネクサス) | null⁴(テトラヌル) | |
|---|---|---|
| 場所 | 横浜ランドマークプラザ 5 階(みなとみらい) | GREEN×EXPO 2027 会場の SATOYAMA Village |
| 時期 | 2026 年 10 月 14 日開業、常設 | 2027 年 3 月 19 日〜9 月 26 日(会期中) |
| 形 | 屋内の常設シアター。LED シアター 2 室を含む全 5 室、約 60 分 | 屋外の彫刻。回転する 4 棟の鏡面体と巨大なマニ車のような回転体 |
| 主体 | 株式会社サステナブルパビリオン2025(主催) | 一般社団法人計算機と自然(企画) |
| チケット | 完全日時指定。2026 年 7 月 14 日から販売中 | 会場内の作品。観覧の方法は未発表 |

null²ⁿ:建物ではなく体験を常設にする
null²ⁿ は、大阪の建物を再現するのではなく、中の体験を常設シアターとして作り直すプロジェクトです。発表では、大阪の LED シアターは 1 部屋だったのに対し、横浜は 2 部屋になるとしています。全 5 室を約 60 分で巡る構成で、2026 年 8 月には 3 つ目の部屋として、映像のない「音だけの部屋」の構想が公開されました。鏡張りの空間は音が反射して聞かせるのに向かないため、逆に無響の空間を作り、複数のスピーカーで音の位置や動きを立体的に感じさせる計画です。落合氏は LED シアターをサウナに、その後の無響の部屋を水風呂にたとえて説明しています。
「ⁿ」はネクサス(結節点)の意味で、人と体験と場所をつなぐ常設の拠点として、定期的なイベントや来場者のコミュニティ作りも予定されています。共同で発表しているのは、サステナブルパビリオン2025、一般社団法人計算機と自然、横浜ランドマークタワーを運営する三菱地所、Mirrored Body の基盤を共同開発したマクニカの 4 者です。行き方・料金・当日の注意はnull²ⁿ の訪問ガイドに分けました。
null⁴:自然の中で回る 4 棟の鏡
null⁴ は、花博会場の SATOYAMA Village に置く「風景変換彫刻」と説明されています。4 棟の鏡面体が周囲の風景を映しながら回転し、花壇の花、空、風、来場者の影を取り込みます。巨大なマニ車のような回転体が連動し、昼と夜、季節で見え方が変わるとしています。名前の「⁴(テトラ)」は、4 棟の鏡面体と、4 つの立場を同時に扱う論理「テトラレンマ」から来ています。GREEN×EXPO協会の公式サイトにも null⁴ のページがあり、SATOYAMA Village に置く作品として「鏡の生命彫刻が回転しながら、花、空、訪れた人々を映し込」むと紹介しています。
公式サイトは、この作品を「パビリオンの延長ではなく、自然の中に置かれる風景変換彫刻」と位置づけ、風景には手を加えず反射と回転だけで見え方を変える、と説明しています。内部の体験の手順は「構想中(近日発表)」とあり、2026 年 9 月時点では未発表です。GREEN×EXPO協会と計算機と自然は、資金だけでなく映像・音響・植栽・運営などの役務も含めて共創パートナーを募集しています。

Mirrored Body がつなぐ
2 つの拠点をつなぐのが、大阪で 17 万人が使ったアプリ「Mirrored Body」です。全身を撮影して自分のデジタル分身を作り、その分身が null²ⁿ と null⁴ の演出と連動します。発表では、大阪で分身を作った人は横浜で再び分身と会える、としています。null²ⁿ の公式サイトによると、アプリは必須ではありませんが、入れておくと優先予約や特別な演出があります。13 歳以下と海外在住者には「Mirrored Body Lite」が用意されています。
落合陽一氏の言葉
ここからは落合氏本人の言葉です。発表文の中のコメントと、本人の note の無料公開部分から、当サイトが選んで短く引きます。
2026 年 7 月 14 日の発表に添えたコメントで、落合氏は万博の閉幕を「万博は閉じた.しかし計算機自然の森は閉じない.」と書き、大阪で質量を手放した null² が横浜で再び質量を得る、と続けています。大阪から横浜へ、祭りから常設へ、都市から森へ、と並べたあと、最後を「おかえり,ヌルの森.」と結んでいます。この「おかえり、ヌルの森」は null⁴ の公式サイトの冒頭にも掲げられています。
名前については、2026 年 3 月 19 日の note で「null²のままだとあまり味がないし」と書き、形が根本から変わるので、それを表す名前を探していたと説明しています。発表当日の 4 月 7 日の note には「null²の遺伝子は受け継がれて続いていく」とあり、その直後に「本当に森に引っ越した」と付け足しています。同じ記事には、発表の場でトゥンクトゥンクとミャクミャクに囲まれて幸せな気分になった、という一文もあります。
2026 年 8 月 23 日に大阪の万博レガシーイベントで登壇したときの説明では、万博のレガシーは保存される建物や展示物だけではなく、閉幕後も関わり続ける数万人規模の万博ファンが文化を盛り上げていること自体がレガシーだ、としています。null²ⁿ はシアター中心の没入体験、null⁴ は自然と一体になった彫刻的な建築で、両方を体験すると物語としてつながる、とも語っています。
日本科学未来館の展示は別の流れ
落合氏が監修する展示は横浜だけではありません。東京・お台場の日本科学未来館の常設展示「計算機と自然、計算機の自然」は 2019 年 11 月から続く展示で、2026 年 4 月 1 日に一部をリニューアルしました。未来館はこれを「大阪・関西万博シリーズ第二弾」と位置づけ、null² で使った AI の表現を応用した作品「計算機の自然」と、落合氏の声で AI が返事をする新作などを公開しています。null²ⁿ や null⁴ とは別のプロジェクトですが、同じ「計算機自然」の考え方を都内で常設で見られる場所です。
ただし未来館は 2026 年 10 月 1 日から 2027 年 4 月 22 日まで施設整備工事で休館します。行くなら 2026 年 9 月中か、休館明けです。詳しくは未来館の記事に書きました。
編集部の考え
null² の建物をもう一度見たい人にとって、横浜に来るのは建物ではなく体験と考え方だ、という点を先に押さえておくと、がっかりせずに済むと思います。null²ⁿ は屋内のシアターで、null⁴ は屋外の彫刻です。大阪の鏡の建物そのものは、どちらにもありません。
鉄道で回る人の視点では、この 2 つは同じ横浜でもかなり離れています。null²ⁿ はみなとみらいで、null⁴ は瀬谷の会場です。会期中に両方を 1 日で回るなら、午前に会場、夕方にみなとみらい、という順が現実的だと思います。null²ⁿ は夜 21 時まで開く予定なので、会場を早めに出てもまだ間に合います。
null⁴ の中身は 2026 年 9 月時点で「構想中」です。体験の手順や予約の要否は発表があれば追記します。
順路は大阪・関西万博からの継承の記事から来て、次はnull²ⁿ の訪問ガイドです。
