大阪・関西万博は2025年10月13日に閉幕しましたが、運営した公益社団法人2025年日本国際博覧会協会はまだ存在しています。会場の解体と敷地の返還、剰余金の配分、記録と知的財産の引き継ぎを終えてから解散する段取りで、その予定は2028年3月です。ここでは、協会の公募要領と経済産業省の成果検証委員会の報告書から、万博の「終わり方」がどう決められているかを、解散の段取り、収支と剰余金、剰余金の3つの使い道、横浜花博とのつながりの順に書きます。
早見表
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 協会の解散予定 | 2028年3月。清算法人化し、財務・税務・登記・行政庁への届出・債権回収を進める | 協会の公募要領(2026年3月30日) |
| 解散・清算支援業務 | 契約から2029年2月28日まで。委託の上限は2億9,000万円(税込)。2026年6月上旬に契約締結の予定 | 同上 |
| 会期・来場者 | 184日間、約2,902万人(AD証の入場者を除くと約2,558万人)。158か国・地域と7国際機関が参加 | 経済産業省、協会 |
| 運営費の収支 | 最大370億円の黒字(報告書では約320億〜370億円の黒字見込み) | 経済産業省 |
| 経済波及効果 | 約3.6兆円 | 経済産業省 |
| 剰余金の使い道 | 3つの使い道に均等配分。大阪・関西で取り組むものと全国・海外で取り組むものにも均等配分 | 成果検証委員会の報告書 |
| 配分の時期 | 協会の清算をもって各主体へ配分するのが原則 | 同上 別添2 |
1. 解散の段取り:2028年3月まで活動し、支援業務を委託する
協会は2026年3月30日、「解散・清算支援業務」の企画提案を公募しました。公募要領によると、業務の目的は、2028年3月に予定される協会の解散と清算法人化、清算に関わる財務・税務・登記・行政庁への届出・債権回収などの手続きを一体で支援することです。あわせて、後継団体への残余財産の引き継ぎと、切れ目のないレガシー継承事業の実施を実現するとしています。契約期間は契約締結日から2029年2月28日まで、委託の上限額は2億9,000万円(税込)です。提案の締め切りは5月7日、審査結果の公表は5月下旬、契約締結は6月上旬の予定でした。
要領には、もう1つの筋道も書かれています。協会は成果検証委員会の議論などを踏まえて今後の法人の方針を決めるとしており、博覧会の事業だけを清算して協会が解散せずに存続する場合も、同じ支援業務でまかなうとしています。つまり2026年9月時点で「2028年3月に解散」は予定であって、法人を残す選択肢がまだ閉じられていません。
2. 収支と剰余金:運営費は約320億〜370億円の黒字
経済産業省は、経済産業大臣と国際博覧会担当大臣の下に「2025年日本国際博覧会成果検証委員会」を2025年12月に立ち上げ、パブリックコメントを経て2026年6月16日に報告書「大阪・関西万博 理念継承とレガシーの発展に向けて」を公表しました。発表によると、万博には158か国・地域と7国際機関が参加し、国内開催では過去最多の参加国数でした。184日間の会期に約2,902万人が来場し、運営費は最大370億円の黒字、経済波及効果は約3.6兆円と整理されています。
ここでいう黒字は、協会の運営費(入場券収入などでまかなう会場運営の費用)の収支です。会場建設費や国・大阪府・大阪市の負担を含めた万博全体の収支ではありません。報告書の別添「レガシー展開」は、運営費の収支を約320億円から370億円の黒字見込みとしたうえで、協会の活動に要する費用を除いた額を最終的な剰余金とし、協会の清算をもって各主体へ配分するのが原則だとしています。剰余金の確定額は、2026年9月時点では公表されていません。
3. 剰余金の3つの使い道
報告書は、万博の成果を一過性にしないための基本方針として、次の3つの取り組みを掲げました。剰余金は3つに均等に配分し、さらにそれぞれの中で「大阪・関西ワイドで取り組むもの」と「大阪・関西に限らずグローバル・ナショナルワイドで取り組むもの」にも均等に分けます。全国・海外向けは経済産業省の関与の下でJETROなどと連携し、基金や信託の仕組みを使って使途を決め、大阪・関西向けは地元自治体・経済界・国が設けた「未来創造会議」で決めるとしています。
(1) 万博で創られた「つながり」の拡大・発展。 万博で注目された最先端技術の実装化・産業化(次世代モビリティ、再生医療、カーボンニュートラル、スタートアップなど)、JETROによる海外展開の支援、海外の若手研究者との交流や留学の支援、市民レベルの国際交流、関西広域の観光促進です。
(2) 万博を契機とした創造活動の深化・展開。 シグネチャーパビリオンやテーマウィークなど、万博で生まれた活動を続け、会場に来られなかった人や子どもたちが体験できる機会をつくること、周年事業や記念事業などの「アフター万博イベント」を全国で支援すること、次の万博へ引き継ぐことが中身です。剰余金は全国・海外向けを中心に、大阪・関西向けにも取り組み全体の3割程度を配分します。
(3) 夢洲の「場の記憶」の継承・展開。 大屋根リングの一部(約200m)を残し、その外側近くに「EXPO2025記念館(仮称)」を整備して記念公園ゾーンにすること、リングの初期改修と20年程度の維持管理に剰余金を使うこと、VRなどで当時の会場を体験できるコンテンツを整備すること、記念公園での文化・芸術イベントです。剰余金は大阪・関西向けを中心に、全国・海外向けにも3割程度です。夢洲側の進み具合は「夢洲のいま 2026年秋」に書いています。
4. 協会が解散するまでにすること、解散後に残るもの
別添2は、協会自身の残りの活動にも触れています。2028年3月末までの活動期間に、協会は周年イベントなどの記念イベントを続け、ほかの主体が開く万博関連のイベントを後援名義やミャクミャクの利用促進で後押しするとしています。閉幕1周年の催し(2026年10月11日〜13日)や、ミャクミャクのライセンスの扱いは「ミャクミャクはどこへ行った」にまとめてあります。
解散後については、協会が持つ運営の記録データ、ノウハウ、知的財産を、維持管理のコストも含めて後継団体(複数にまたがることも想定)に引き継ぎ、透明性の高い形で活用する必要があるとしています。どの団体が引き継ぐか、ミャクミャクの権利がどこへ行くかは、2026年9月時点で決まっていません。
5. 横浜花博とのつながり
別添2の(2)には、2027年の横浜グリーンエクスポ(GREEN×EXPO 2027)とベオグラード博、2030年のリヤド博の出展でも、大阪・関西万博の理念と活動を継承するとあります。ただし注記に、剰余金の活用はリヤド博の関連からと書かれているので、横浜花博の出展に大阪・関西万博の剰余金が使われるわけではありません。横浜で実際に見られる継承の例(大屋根リングの木材、ノモの国のファサード、null²の続き)は、特集「大阪・関西万博からの継承」に集めてあります。
編集部の考え
万博の終わり方でいちばん大きな数字は、約320億〜370億円という運営費の黒字です。ただ、その使い道はまだ「3つの使い道に均等」「地域と全国・海外に均等」という配分の枠組みまでで、個別の事業と金額は未来創造会議や基金の仕組みで決めていく段階です。配分そのものは協会の清算をもって行うのが原則なので、剰余金が実際に動くのは2028年以降です。
つまり、閉幕から1年の今は、記録と権利と資金の「行き先の決め方」が決まった時期であり、「行き先」が決まった時期ではありません。この記事で追うべき次の発表は、未来創造会議での使途の決定、後継団体の名前、そして協会が解散するか存続するかの判断の3つだと思います。
