大阪・関西万博の会場で試された仕組みのうち、閉幕後も別の場所や別の名前で続いているものがあります。空を飛ぶ乗り物、水素で走る船、来場者のスマートフォンに入っていたアプリ、企業の共創ネットワーク、会場内の来場者支援の5つです。経済産業省の成果検証委員会も、万博で注目された最先端技術の実装化・産業化をレガシー展開の取り組みの1つに挙げています。以下は、2026年9月13日時点で各社と自治体の発表から確かめられる「その後」です。
早見表
| 仕組み | 万博では | その後 | 時期 | 発表元 |
|---|---|---|---|---|
| 空飛ぶクルマ | 会場外の大阪港バーティポートでデモフライト | 6者が商用運航に向けたコンソーシアム設立に合意 | 2026年5月8日合意。SkyDriveは2028年のサービス開始を目標 | SkyDrive、大阪市、丸紅 |
| 水素燃料電池船「まほろば」 | 大阪市内と会場を結ぶ商業運航 | 岩谷産業が東京都へ無償提供。東京港で運航 | 協定2025年10月16日。運航開始は2026年度内の予定 | 東京都 |
| EXPO2025デジタルウォレット | 電子マネー・ポイント・NFT・SBTを1つのアプリで | 「HashPort Wallet」に改名して継続。SBTとEXPOトークンを引き継ぎ | 2025年10月14日移行 | 協会 |
| TEAM EXPO 2025の共創ネットワーク | 企業・団体の共創プログラム | DNPが「TEAM NEXT 2025」として継承 | 2026年5月14日キックオフ | 大日本印刷 |
| LET’S EXPO | 会場内の来場者支援(のべ15万人以上) | GREEN×EXPO 2027へ参画 | 2026年7月28日発表 | 関西イノベーションセンター |
1. 空飛ぶクルマ:大阪港を拠点に2028年の商用運航を目指す
会期中、空飛ぶクルマのデモフライトは会場の中ではなく、会場外の離着陸場「大阪港バーティポート」(大阪市港区海岸通1丁目)で行われました。閉幕後の2026年5月8日、この場所で「大阪港バーティポートを拠点とした空飛ぶクルマ商用運航に向けたキックオフ会議」が開かれ、大阪府知事と大阪市長が出席しました。SkyDriveの発表によると、SkyDrive・大阪府・大阪市・Osaka Metro・Soracle・丸紅の6者が、複数の事業者でバーティポートを共同利用し、全国に先駆けて商用運航を始めるためのコンソーシアムを設立することに合意しました。
目標の時期は各社で書き方が違います。SkyDriveは2028年のサービス開始を目指し、2035年には大阪ベイエリアを中心に100機程度の運航を見込むとしています。丸紅は2028年度以降の商用運航開始を目指すとしています。SkyDriveは大阪市内に146か所ある緊急離着陸場(Hマーク)など既存のインフラの活用も調べる意向です。2026年9月時点で、定期的な商用運航は始まっていません。
2. 水素燃料電池船「まほろば」:大阪湾から東京港へ
「まほろば」は、水素燃料電池と蓄電池のハイブリッドで航行する日本初の旅客船で、会期中は大阪市内と万博会場の間で商業運航をしていました。東京都の2025年10月17日の発表によると、開発と運航にあたった岩谷産業が船を東京都に無償で提供し、10月16日に「水素燃料電池船の活用事業に関する基本協定書」を結びました。
東京都は2026年度内に東京港で運航を始める予定です。目的は、多くの人に乗船の機会を提供し、水素燃料と水素燃料電池船の有用性、東京港の国際物流拠点としての役割を発信することで、環境学習イベントや国際的なイベントで乗船の機会を設けるとしています。定期航路になるのか、乗り場がどこになるのかは、この発表には書かれていません。
3. EXPO2025デジタルウォレット:HashPort Walletへ
来場者が電子マネー「ミャクペ!」、ポイント「ミャクポ!」、NFT「ミャクーン!」、参加証明のSBTをまとめて使っていた「EXPO2025デジタルウォレット」は、協会の2025年9月3日の発表によると、閉幕翌日の10月14日に「HashPort Wallet」へ名前を変えて続いています。SBTとEXPOトークンは新しいアプリにそのまま引き継がれました。
一方で、決済まわりは順に終わりました。「ミャクペ!」(SMBCグループ)は2026年1月13日に終了、「ミャクポ!」(りそな銀行)は2025年12月15日が有効期限、「ミャクーン!」(SBIホールディングス)は2026年1月13日で移行の受け付けを終えています。会場内限定だったミャクミャクリワードプログラムは会期の終了とともに終わりました。残ったのは、来場や体験の記録としてのSBTとEXPOトークンです。
4. TEAM NEXT 2025:企業の共創ネットワークを引き継ぐ
万博の共創プログラム「TEAM EXPO 2025」で築かれた企業・団体のネットワークは、大日本印刷(DNP)が「TEAM NEXT 2025」として引き継ぎました。DNPの2026年5月8日の発表によると、池田泉州銀行、大阪商工会議所、関西イノベーションセンター、大丸松坂屋百貨店、電通、三井住友銀行、Peatix Japanなど9社・団体が参画し、5月14日に東京・九段ハウスでキックオフイベントを開きました。テーマは「事業共創・GREEN×EXPO 2027とその先へ」です。
活動は6つのテーマに分かれます。都市活性化・統合型リゾート・MICEの推進、新産業とテクノロジーの創出・育成、アート・観光・文化資源による地域ブランドの向上、教育・研究機関との人材育成、地域の産業のつながり(発表では「地域エコシステム」)の構築、大阪・関西万博のレガシー継承です。参画する企業・団体は今後増やすとしています。
5. LET’S EXPO:会場の来場者支援が横浜花博へ
会場内で来場者を支援した「LET’S EXPO」は、関西イノベーションセンターの発表によると、万博でのべ15万人以上を支援しました。2026年7月28日、同センターはLET’S EXPOがGREEN×EXPO 2027に参画すると発表しています。横浜花博でどの範囲の支援を行うかは、発表を追って書き足します。5つの仕組みのうち、横浜花博で直接続くと発表されているのはこのLET’S EXPOと、TEAM NEXT 2025のテーマ設定の2つです。空飛ぶクルマや水素船が横浜花博で使われるという発表は、2026年9月時点ではありません。
編集部の考え
5つを並べると、続き方は3つに分かれると思います。場所を変えて続くもの(水素船は東京港へ)、主体を変えて続くもの(共創ネットワークはDNPへ、来場者支援は横浜花博へ)、名前を変えて続くもの(ウォレットはHashPort Walletへ)。空飛ぶクルマだけは、万博では会場外のデモにとどまり、閉幕後にようやく商用運航の枠組みができた段階です。
鉄道で行く読者にとって身近なのは、水素船の東京港での運航開始(2026年度内)だと思います。乗り場と乗り方が発表されたら、この記事に行き方を足します。
