大阪・関西万博は2025年10月13日に閉幕しました。それから1年の夢洲は、会場の解体が進む一方で、跡地の使い方、鉄道、隣のIRと、次に向けた動きが並行しています。以下は、夢洲の状況を6つの項目に分けて、大阪府・大阪市と各社の公式資料で確かめられる範囲を書いたものです。同じ項目立てで四半期ごとに更新していく連載の1回目にあたります。
会場の解体と敷地の返還、第2期区域の事業者募集と記念公園、鉄道、IR、大屋根リングの保存部、静けさの森の順に見ていきます。
1. 会場の解体と敷地の返還
大阪市の大規模事業リスク管理会議の資料(2025年度第2回)によると、万博会場の解体・撤去は2025年度から2027年度にかけて行われ、敷地は2028年2月末に大阪市へ返還される予定です。順序は、海外や民間のパビリオンの解体、ランドスケープと基盤インフラの撤去、大屋根リングの解体と続きます。
解体の進み具合そのものは、府市の公式資料に定期的な数値は載っていません。共同通信は2026年6月、パビリオンの約9割が解体・返却を終え、大屋根リングも約9割が解体されたと報じています(報道による。当サイトは公式資料で確認できていません)。
2. 第2期区域の事業者募集と、記念公園・記念館
万博会場だった夢洲第2期区域(約50ha)の使い方は、大阪府・大阪市の「夢洲第2期区域マスタープランVer.3.0」で決まっています。2026年4月30日の副首都推進本部(大阪府市)会議で案が示され、パブリックコメントを経て6月19日に策定が公表されました。長期滞在型の街づくりを掲げ、第1期区域のIRと一体で国際観光の拠点にする内容です。
このマスタープランに沿って、大阪市港湾局は2026年7月3日に開発事業者の募集を公告しました。売却する土地は420,062.03平方メートル、貸し付ける土地は4,011.75平方メートルです。参加資格の審査書類は2026年8月5日から2027年1月8日まで受け付け、提案書類は2027年1月12日から15日、計画提案の審査結果の通知は2月中旬、価格提案の審査は2月17日で、事業者の決定は2月中旬以降とされています。
第2期区域の中で別枠になっているのが、大阪ヘルスケアパビリオンの跡地約1.5ha(15,181.67平方メートル)です。府市はパビリオンの建物の一部を残すか敷地内に移して「レガシー建物」とし、そこで先端医療・国際医療・ライフサイエンスの事業を行い、隣にホテルやオフィス、商業施設を置く事業者を2026年1月28日から募集していました。提案書の受付は7月10日から14日、事業者の決定は9月中旬の予定でしたが、提案書の提出はありませんでした。大阪市は9月9日に、民間の意向と市場性を確かめ直すマーケットサウンディング(市場調査)の実施を発表しています。現地見学会が9月16日から18日、提案書の受付が11月2日から5日、提案者との対話が11月中旬の予定で、再募集の時期はまだ書かれていません。パビリオンの建物を残す前提そのものが、この調査の結果で変わる可能性があります。
大屋根リングの北東部を含む約2.9haは、この募集から除かれた「記念公園ゾーン」です。マスタープランの説明資料では、大阪市が整備・管理し、リングの約200mを残して展望台として改修し、万博の記憶と最先端技術を発信する記念館(仮称)を置くとしています。リングの改修費は博覧会協会の試算で約40億円、財源は万博の剰余金です。記念館の規模や開館時期は、2026年9月時点で公表されていません。
3. 鉄道:夢洲駅の今と、2つの延伸
夢洲に鉄道が着いたのは万博の開幕前です。Osaka Metro中央線はコスモスクエアから夢洲まで延び、夢洲駅は2025年1月19日に開業しました。始発は5時2分発で、阿波座管区駅長の合図で発車したとOsaka Metroは伝えています。閉幕後も、夢洲へ鉄道で行く方法はこの中央線だけです。
次の鉄道は「北側から」の延伸です。大阪府・大阪市は2025年8月6日、「夢洲アクセス鉄道に関する検討」の結果を公表しました。従来の答申路線(北港テクノポート線の新桜島〜舞洲〜夢洲、中之島新線延伸の中之島〜西九条〜新桜島)と、検討路線(JR桜島線の桜島〜舞洲〜夢洲への延伸、京阪中之島線の中之島〜九条への延伸)を比べたところ、費用便益分析と収支の試算のどちらでも検討路線が優位でした。検討路線の事業費は合計約3,510億円、輸送人員は121,000人/日、費用便益比は1.1〜1.2で、収支は「概ね良好」です。夢洲から新大阪までの所要時間は約34分から約25分に縮まり、乗り換えは2回から0回になるとしています。
その後の動きは、2026年9月時点では報道が中心です。大阪府・大阪市とJR西日本が2026年3月に検討会を設け、駅の位置やルート、事業の仕組みを約1年かけて協議すると共同通信が報じました。JR西日本の会長は2026年2月に「2030年代後半」を目標に挙げ、京阪ホールディングスの社長は2026年5月に「着工は早くても2030年ごろ、工期は4年ほど」と述べたと日本経済新聞が報じています。これらは経営陣の発言として報じられたもので、事業許可や着工の決定ではありません。4つの案の中身と数字は、別の記事「夢洲の鉄道はこれからどう延びるか」で詳しく書いています。
4. IRの工事
万博会場の北隣、夢洲第1期区域では、IR(統合型リゾート)の工事が続いています。大阪市の報道発表によると、事業者のMGM大阪株式会社(旧 大阪IR株式会社。MGMリゾーツとオリックスの共同事業)は2025年4月24日に本体の建設工事に着工しました。工期は2030年夏ごろまで、開業目標は2030年秋ごろです。初期投資額は税抜で約1兆5,130億円、うち建設関連が約1兆1,950億円とされています。敷地は此花区夢洲中1丁目の約49.2haで、万博の跡地とは道路で区切られた別の区画です。
5. 大屋根リングの保存部
大屋根リングは、北東部の約200mを残し、それ以外は解体して部材をリユースする方針です。残す場所が北東部になった理由は、夢洲駅からの近さと、南西側の第3期区域で今後埋め立て工事があることでした。保存の候補だった南西部約350mは解体し、部材はできる限りリユースするとされています。一般公開の時期は、2026年9月時点で府市の資料に記載がありません。木材の行き先(横浜花博のKAJIMA TREEとかながわ館の花壇、阪神電気鉄道の駅、高知県)は「大屋根リングはどこへ行くか」にまとめてあります。
6. 静けさの森
会場の中央にあった「静けさの森」は、約1,500本の木でつくられた森です。協会の公式サイトによると、木は万博記念公園(吹田)や服部緑地、鶴見緑地、大阪城公園などから移植されたものでした。閉幕後は「静けさの森 共鳴機構(Forest of Resonance)」という団体が、森を現地で維持し、育てていく方針を示しています。ただ、第2期区域の開発が進んだあとに森がそのまま残るのか、別の場所へ再び移植されるのかは、2026年9月時点の資料からは確認できませんでした。
横浜花博の跡地との比べ方
夢洲の跡地は「解体して更地に戻し、事業者を募って新しい街をつくる」型で、公園として残るのは大屋根リング周辺の約2.9haだけです。横浜花博(GREEN×EXPO 2027)の会場になる旧上瀬谷通信施設は、横浜市の土地利用基本計画で会場そのものが公園になる区域と、隣にテーマパークの計画がある区域に分かれています。跡地の残り方が最初から違うので、夢洲の1年後を横浜の1年後にそのまま当てはめることはできません。横浜側の計画は「花博の会場は閉幕後どうなるか」に書いています。
編集部の考え
2026年秋の夢洲で決まっているのは「いつ返す」(2028年2月末)と「誰が使うかをいつ決める」(2027年2月中旬以降)の2つの日付で、「いつ行けるようになるか」はまだどこにも書かれていません。記念公園の公開時期、記念館の開館時期、鉄道の開業時期のどれも未定です。だから、この連載で追うべきなのは工事の様子より、これらの日付が公式資料に書き込まれる瞬間だと思っています。
次の節目は2027年2月の事業者決定と、鉄道の検討会が1年の協議を終える2027年春ごろです。この2つが出たところで、2027年春の号を書きます。
