博覧会の会場は、閉幕すれば役目を終えます。ただし、会場まで人を運んだ鉄道は、そのまま残ることがあります。1970年の大阪万博では北大阪急行電鉄、1990年の花の万博では大阪メトロ長堀鶴見緑地線、2005年の愛知万博ではリニモが開業しました。2025年の大阪・関西万博では大阪メトロ中央線が夢洲駅まで延伸し、1981年には神戸新交通のポートライナーがポートアイランドで走り始めています。横浜花博が閉幕したあとに何が残るかを考える手がかりに、5つの鉄道の今を鉄道会社の公式発表で確かめました。
1. 早見表
| 路線 | 開業日 | きっかけの博覧会 | 今の主な行き先 | 跡地の最寄駅 |
|---|---|---|---|---|
| 北大阪急行電鉄 | 1970年2月24日 | 日本万国博覧会(大阪万博) | 大阪メトロ御堂筋線と相互直通、なかもず駅〜千里中央駅・箕面萱野駅 | 千里中央駅で大阪モノレールに乗り換え、万博記念公園駅 |
| 大阪メトロ長堀鶴見緑地線 | 1990年3月20日 | 国際花と緑の博覧会(花博) | 大正駅〜門真南駅 | 鶴見緑地駅 |
| 愛知高速交通リニモ | 2005年3月6日 | 2005年日本国際博覧会(愛・地球博) | 藤が丘駅(地下鉄東山線接続)〜八草駅(愛知環状鉄道接続) | 愛・地球博記念公園駅 |
| 大阪メトロ中央線 夢洲駅 | 2025年1月19日 | 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博) | コスモスクエア駅方面からの延伸区間の終点 | 夢洲駅(会場の駅そのもの) |
| 神戸新交通ポートライナー | 1981年(昭和56年) | ポートアイランドの新交通として開業 | 三宮駅〜神戸空港駅 | ― |
2. 大阪の2つの博覧会が残した鉄道
北大阪急行電鉄 ―― 1970年大阪万博の主力輸送
北大阪急行電鉄は1970年2月24日に開業しました。同社の沿革によると、「万国博覧会入場者の主たる輸送機関」として6か月間、無事故で輸送にあたったとしています。2025年3月の発表でも、1970年大阪万博の輸送を担う目的で開業した路線だと説明しています。
当時は会場方面へ向かう区間もありましたが、今は「旧会場線」としてトンネルの分岐部が残るだけで、営業していません。この分岐部は2024年12月に報道向けに公開されました。廃止した正確な日付は、公式サイトでは確認できませんでした。
今の本線は大阪メトロ御堂筋線と相互直通運転をしており、なかもず駅から千里中央駅までを走ります。2024年3月23日には千里中央駅から箕面萱野駅までの延伸区間が開業しましたが、これは万博とは別の計画です。会場跡の万博記念公園へは、千里中央駅で大阪モノレールに乗り換えます。跡地の見どころは「万博の跡地を鉄道でたずねる」にまとめています。
大阪メトロ長堀鶴見緑地線 ―― 1990年花の万博のアクセス路線
大阪メトロの発表によると、長堀鶴見緑地線は1990年3月20日、「花と緑の博覧会」へのアクセス路線として誕生しました。当時の名称は鶴見緑地線で、2025年に開業35周年を迎えています。
会場だった鶴見緑地は、今も鶴見緑地駅を出てすぐの場所です。路線は今、大正駅から門真南駅までを結んでいます。跡地に残る施設は「花博の先輩をたずねる旅」に書いています。
3. 平成と令和、2つの国際博覧会の鉄道
愛知高速交通リニモ ―― 2005年愛・地球博の輸送手段
愛知高速交通の公式サイトによると、リニモは2005年3月6日に開業しました。「2005年日本国際博覧会基本計画」で、会場への鉄道系の輸送手段として位置づけられていた路線です。
区間は藤が丘駅から八草駅までの約8.9キロ、全9駅です。藤が丘駅は名古屋市営地下鉄東山線に、八草駅は愛知環状鉄道に接続しています。会場跡のモリコロパークへは、その名のとおり愛・地球博記念公園駅で降ります。
大阪メトロ中央線 夢洲駅 ―― 2025年大阪・関西万博の延伸区間
Osaka Metroの発表によると、中央線のコスモスクエア駅から夢洲駅までの延伸区間は2025年1月19日に開業しました。同社はこの延伸を「唯一の鉄道アクセスルート」として、大阪・関西万博会場への直接乗り入れと案内しています。
夢洲駅は会場そのものの駅で、跡地に代わる存在ではありません。会場跡の活用は2026年9月時点でまだ計画の段階で、詳しくは「万博の跡地を鉄道でたずねる」に書いています。
4. 神戸新交通ポートライナー ―― 島の新交通として開業
神戸市都市局の資料によると、神戸新交通のポートアイランド線(ポートライナー)は昭和56年、1981年に営業運転を開始しました。同じ資料には、平成2年に六甲アイランド線、平成18年にポートアイランド線の延伸区間が開業したことも記されています。
神戸市のよくある質問ページによると、ポートライナーは三宮駅から神戸空港駅までの12駅を約18分で結んでいます。神戸市が公表しているポートアイランドの年表では、1981年の出来事として、島の第1期の竣工、ポートライナーの営業運転開始、神戸ポートアイランド博覧会「ポートピア’81」の開催が並んでいます。開業日と博覧会との関係を文章で説明した公式ページは見つかっていませんが、島の街開きと博覧会と同じ年に開業した路線です。ここまでの4つの鉄道と違い、博覧会の会場線として作られたのではなく、島の足として残りました。
5. 横浜花博の交通と、上瀬谷ラインのゆくえ
GREEN×EXPO 2027(横浜花博)を主催するGREEN×EXPO協会(公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)によると、会場は横浜市瀬谷区・旭区の旧上瀬谷通信施設の一部です。ここまでの5つの鉄道と違い、会場に鉄道の駅はありません。相鉄本線の瀬谷駅・三ツ境駅、JR横浜線の十日市場駅、東急田園都市線の南町田グランベリーパーク駅の4駅から、予約制のシャトルバスに乗ります。駅ごとの選び方は「会場アクセス完全ガイド」に書いています。
横浜市会に2024年2月に出された資料によると、瀬谷駅と旧上瀬谷通信施設の間には、以前は軌道系の新交通の整備が検討されていました(横浜市の環境影響評価の手続では「(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業」)。同じ資料は、この区間の交通を自動運転や隊列走行の技術を使ったバスに切り替える方針を示しています。連節バスが専用のトンネルを走り、瀬谷駅そばに仮称・瀬谷ターミナル、上瀬谷側に仮称・上瀬谷ターミナルを設ける計画です。概算の総事業費は約466億円で、2024年度から基本設計に着手し、供用開始の目標は2030年代前半です。横浜市の環境影響評価の手続一覧には、「(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業」(鉄道及び軌道の建設、事業者は横浜市)について、2024年3月27日に事業廃止等届出書を受理し、4月15日に公告したと記録されています。理由は、修正後の事業が条例の対象事業に当たらなくなったためです。軌道系の計画は、この時点で環境影響評価の手続上も終わっています。
資料に示されたスケジュール表では、インフラ工事は2027年のGREEN×EXPO開催のあとに始まる計画です。花博の会期中は、この新しいバスもまだ走っていません。
6. 編集部の考え
5つの鉄道を並べると、残り方に違いがあります。北大阪急行電鉄と長堀鶴見緑地線は、博覧会の輸送を目的に開業し、会場方面の区間だけがなくなって、本線は通勤路線として今も走っています。リニモと夢洲駅は、会場だった場所へ今も乗り入れる駅を持っています。ポートライナーは、博覧会というより島の新交通として開業した路線だと思います。
横浜花博は、この5つのどれとも違う残り方をすると思います。会場に駅がないまま開幕し、閉幕後は横浜市の「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画」に沿って、農業振興・観光や賑わい・物流・防災や公園の4つの地区に変わります。横浜市会の資料によると、防災・公園の地区にはGREEN×EXPO 2027のレガシーを引き継ぐ公園を整備する計画です。鉄道の駅がそのまま残る博覧会ではなく、公園と防災の拠点として引き継がれる博覧会になると思います。
